表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と神に切り捨てられた俺ですが、唯一授かった“影潜り”スキルで全てを飲み込み、気づけば勇者も王も凌駕してました  作者: 妙原奇天


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/41

第2話「最下層の街、影潜りの力」

 翌朝。

 目を覚ますと、石畳の冷たさが背中に残っていた。

 夜の路地裏で眠り、何度も蹴飛ばされそうになりながらも、どうにか追い出されずに済んだ。


 腹は空っぽ。

 食い物を探すしかない。だが金もない。


「……やるしかないな」


 俺は試しに近くの屋台に近づいた。香ばしいパンの匂いが腹を刺激する。

 手を伸ばしたい衝動をこらえ、影に意識を沈めた。


 ――ズブリ。


 自分の影と、屋台の下に落ちる影とが繋がる。

 そこから手を伸ばすと、まるで闇のトンネルを通るように、パンの底に触れた。


「……マジか」


 取り出したのは小さなパン。手の中に温かさが残っている。

 罪悪感が胸を刺したが、背後で小さな声がした。


「……おなか、すいた」


 振り返ると、昨日助けたあの少女が立っていた。

 髪はぼさぼさで、服は擦り切れ、足は裸足。年は十歳にも満たないだろう。


「お前……昨日の……」

「わたし、ルナ。助けてくれて……ありがとう」


 彼女はぺこりと頭を下げた。

 その動作で、骨ばった背中が見えてしまう。痩せすぎだ。


 俺は迷わずパンを差し出した。

 ルナは目を輝かせ、一口かじると涙をこぼした。


「……あったかい……」


 胸の奥に熱いものが広がる。

 盗んだパンでも、彼女にとっては生きる糧になる。


 それから俺とルナは一緒に過ごすようになった。

 路地裏の隅に、廃材を積んだだけの寝床を作る。

 俺が影を使って食料を調達し、ルナが洗濯や片付けをしてくれる。


「おじさん、すごいね」

「……おじさん、って歳か? まあ、否定はしないけど」


 笑い合う。

 だが現実は厳しい。路地裏の最下層には盗賊崩れや乞食が溢れていて、弱者はすぐに食い物を奪われる。


 俺は考えた。

 影潜りの応用を――。


 ある夜。


 盗賊がルナの持っていた食料を狙ってきた。

 俺は咄嗟に影に潜り、そいつの背後に現れ、拳で沈める。


 さらに影に引きずり込み、足を縛るように絡め取った。


「うわっ!? なんだこれ! 足が抜けねぇ!」


 盗賊はパニックになり、仲間が助けようとしたが、影の中に手を入れた瞬間、腕ごと沈みかけて悲鳴を上げた。


 俺は言った。


「影は俺の領域だ。ここで俺に敵うと思うな」


 盗賊たちは青ざめ、食料を放り投げて逃げ出した。


 ルナは怯えながらも俺を見上げた。


「……こわかった。でも……守ってくれて、ありがとう」


 俺は拳を握りしめた。

 あの時、神は俺を無能と断じた。

 だが――。


「この力で……生き抜いてやる」


 自分のためだけじゃない。

 目の前の小さな命を守るために。


 影は俺を包み込み、背中を押すように揺らめいた。


第2話ここまで

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ