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第10章 蛇の巣

ティンタゲルの壮麗な街の門のすぐ外に、堅固な石壁に囲まれた豪華な邸宅がそびえ立っており、まるでその中に贅沢と秘密を隠しているかのようだった。しかし、貴族の私邸であるどころか、そこは人けが絶えることのない賭博場だった。粗末な服を着た庶民から、疲れた顔の小さな商人まで、多くの人々が厳重に警備された門を出入りしていた。彼らの目には、燃えるような希望と深い絶望が混じり合って輝き、そこで賭けられた運命を映し出していた。そこは、ティンタゲルの地下世界を支配する闇の男爵セネン個人のカジノだった。


薄暗い豪華な部屋の一つには、壁には生きているかのような金色の龍の彫刻が施され、床には厚い深紅の絨毯が敷かれていた。アブートとロックは、男爵セネンの前で震えながらひざまずき、頭を下げていた。豊かな体格に、高価な香油を塗った濃い髭を持つ男は、ビロード張りの椅子にゆったりと身を預け、赤ワインのボトルを手にゆっくりと揺らしていた。彼の冷たい目、二つの暗い水晶のような目は、二人組のチンピラを鋭く見つめ、まるで彼らのあらゆる恐怖を暴いているかのようだった。


「もう一度言ってみろ。」セネンは、低くも突き刺すような脅威に満ちた声で囁いた。「お前たちの預かり金はどこだ?」

アブートはさらに深く頭を下げ、頭は冷たい床にほとんど触れていた。汗がこめかみを濡らしていた。「預かり金は…幼児に…奪われました、旦那様…」彼の声は詰まり、ほとんど聞こえなかった。


セネンは凍りついた。静寂。息をのむような数秒の沈黙が流れ、空気が薄くなったように感じられた後、彼の喉から乾いた笑いが漏れた。その笑いにはユーモアのかけらもなく、ただ純粋で息苦しい皮肉だけがあった。「ふざけるな。」

ドスン!


警告もなく、セネンの手からワインボトルが弾丸のように飛び出し、アブートの頭に強くぶつかった。鈍い骨の衝突音に続いて、抑えられた叫び声が聞こえた。アブートの割れた額から新鮮な血が即座に流れ出し、下にある高価な絨毯を汚した。


「作り話をするなら、もう少しマシなものにしろ!」セネンは怒りに燃える目で唸った。「お前は俺がそんなでたらめを信じると思うのか? 幼児に奪われただと?! 俺を馬鹿にしているのか、ああ?!」


「で、で、でも本当です、旦那様! ロックに聞いてみてください!」アブートはどもりながら、隣で顔色を真っ青にしているロックを指差した。ロックは風に吹かれる葉のように震えていた。


「誰がこの石頭に聞くか?!」セネンは拳を大理石のテーブルに叩きつけ、その上のワインボトルを震わせ、グラスを鋭く鳴らした。「とにかく、3日以内に預かり金を返せなければ、その時は…」セネンはにやりと笑い、自分の首に人差し指を動かした。それは説明の必要のないジェスチャーだった。冷たい死の約束だった。


「わ、わかりました、旦那様!」アブートとロックは同時に言い、声は息詰まるほどの恐怖で震えていた。


「さっさとここから失せろ! お前たち負け犬の顔など見たくない!」セネンは嫌悪感を込めて彼らを追い払った。アブートとロックはすぐに部屋から走り出し、足を引きずりながら、アブートのかすかな血痕を床に残して去っていった。


隅にずっと影のように立っていたずる賢い目をした痩せた男、アセムがセネンに近づいた。「旦那様、事業の進捗はいかがですか? 借りている人は増えましたか?」


「事業は順調だ、アセム。金を借りる者も増えている。」セネンは満足げに微笑み、アセムに新しいワインを注がせた。セネンの目には、他人の苦しみから得られる満足感が輝いていた。


「よし。」セネンはワインを一口飲み、その一滴一滴を味わった。「彼らを骨の髄まで絞り取ってやる。」


「旦那様、アブートはどうなさいますか?」アセムが尋ねた。その声には探るような響きがあった。「なぜ彼をそう簡単に許すのですか?」


セネンは鼻を鳴らした。「許してはいない。役立たずは排除するべきだ。だが、あいつが金を返すのを待つ。あんなばかげた言い訳で俺の金を奪うとは、ずいぶん大胆な奴だ!」アブートとロックは実際にはギャンブラーから借金を取り立てる任務を与えられていたが、彼らが預けるべき金はレオンに奪われていたのだ。これがバロン・セネンが激怒した理由だった。


他の債権者は期日通りに預かり金を納めており、アブートの「事故」はセネンの目にはさらに際立って許しがたいものとなっていた。

「ああ、旦那様。」アセムは何かを思い出した。「先ほど、奴隷商人のオスマンが盗賊に襲われたという知らせを受けました。」

セネンは白い歯を見せてにやりと笑った。「本当か? ならば、すぐに彼らは戦利品を我々に売りに来るだろう。」彼の心には、すでにずる賢い計画が浮かんでいた。


「それはどうかと、旦那様。どうやら今回奪ったのは我々の仲間ではないようです。」アセムは疑わしげな口調で言い、嫌な予感が彼を包んでいた。


「何だと?!」セネンの声が部屋中に響き渡り、ワインボトルが彼の指から落ちそうになった。彼の顔は怒りで真っ赤になった。「またあの正体不明の盗賊団か?! よくも俺の商売を邪魔したな! 根こそぎ捕まえてやる!」セネンの怒りは今や、目に見えない新たな敵に向けられていた。それは彼の権力に対する挑戦だった。


一方、リリアンと一緒に家に帰ったレオンは、すっかり眠気が消えていた。彼の頭の中にはただ一つのことしかなかった。エリオに隠され、それからチンピラから奪った金貨の袋。それは彼のものであり、彼の「苦労して稼いだもの」だったのだ!


「叔母さん、僕の金貨の袋、見た?」レオンは、部屋の隅々まで注意深く見回しながら尋ねた。


リリアンはハッとした。彼女の顔は少し青ざめ、急に居心地の悪さを感じた。「あ…ごめんね、レオン。叔母さん、あなたに言うのを忘れてたわ。あの袋は…持ち主に返したのよ。」


「何だと?!」レオンは猫が驚いたような大きな目を見開いて叫んだ。「あれは僕のお金だ! どうして叔母さんは僕に先に聞かなかったんだ?!」彼の眠気はたちまち消え去り、その小さな体から激しい怒りが爆発した。

「あの金貨の袋は明らかにペンドラゴン家のもよ、レオン。」リリアンは、突然怒り出した幼児を落ち着かせようと説明した。「もし他の人がそれを使えば、泥棒だと思われてしまうわ。叔母さんは、あなたが泥棒だと非難されるのは嫌なのよ。」リリアンは忍耐強く説明しようとした。レオンの評判を心配していたのだ。


「でも、叔母さん! 袋だけ返せばよかったじゃないか! あのお金は僕のものなんだ!」レオンは、苛立ちで甲高い声を出してぐずった。足を踏み鳴らし、その怒った表情は可愛らしいが真剣だった。


「お金があなたのもだとは知らなかったわ。」リリアンは、この幼児の感情の爆発に忍耐強く対処しようとした。「でも…どうやってあの金貨の袋を手に入れたの?」

レオンは鼻を鳴らし、小さな胸の前で腕を組んだ。それは、いら立っている大人の典型的なポーズだった。「僕が倒した子からもらったんだ! 彼が負けたから、それは僕のものだ!」


リリアンは信じられないという目でレオンを見つめ、眉を上げた。「本当のことを言いなさい、レオン。叔母さんはその話を信じられないわ。」


「僕のこと信じてないんだね?!」レオンの怒りは頂点に達した。「分かった! ここから出て行く! お金を取り戻しに行くんだ!」レオンは躊躇なく振り返り、その年齢の子供にしては信じられないほどの燃えるような決意を込めて家から出て行った。彼は本気で出て行くつもりだったのだ。


しかし、レオンがドアにたどり着く前に、リリアンは素早く彼を捕まえ、しっかりと抱きしめて家の中に連れ戻した。「レオン、お利口さんね、そうしないで! 叔母さんがごめんね。」リリアンはレオンの小さな体をしっかりと抱きしめてなだめた。リリアンの抱擁の温かさに加え、小さな体に襲いかかった激しい怒りの後の疲労感が、レオンの目を重くした。彼の感情は怒りから疲労へと劇的に変化した。


レオンの怒りはたちまち消え失せ、耐え難い眠気に取って代わられた。彼は怒らず、代わりにリリアンの腕の中でぐっすり眠り込み、規則正しい呼吸をしていた。レオンが眠ったのを見て、リリアンはすぐに彼を部屋に運び、優しく毛布をかけた。


レオンを寝かしつけた後、リリアンは布の巻きと裁縫道具を取った。彼女は器用にレオンのために新しい服を縫い始めた。そして、目を引かないようにシンプルなデザインの小さな新しい金貨の袋も作った。重い気持ちで、リリアンは4ヶ月分の給料である金貨20枚をその袋に入れた。


ごめんね、レオン、とリリアンはため息をつきながら心の中で思った。これ以上お金はないの。これで足りるといいけど。それはレオンがエリオ(そしてチンピラたち)から奪った合計額よりは少なかったが、それが彼女が持っている唯一の金だった。彼女はレオンにお金を失ったと感じさせたくなかったし、この小さな行動が誤解を解消し、幼児の失望を拭い去ってくれることを願っていた。


突然開いた玄関の音に、リリアンは裁縫に夢中になっていた手を止めた。レオンは部屋でぐっすり眠っており、リリアンはせっせと糸を新しい服に変えていたところだった。しかし、入ってきた人物を見て、リリアンの顔からたちまち笑顔が消えた。


11歳の息子クリスチャンが、肩を落とし、疲労と敗北の象徴のようにドアの敷居に立っていた。彼の普段は明るい顔には、頬には青あざ、腕にはかすり傷がついていた。髪は乱れ、服には少し土がついていた。その光景はすぐにリリアンの心を突き刺した。


「クリスチャン! どうしたの、坊や?! なぜそんなことに?!」リリアンは針と糸を落とし、息子に駆け寄った。彼女の目はクリスチャンの体の隅々まで探し、さらにひどい怪我がないかを探し、不安に支配されていた。


クリスチャンは無理やり笑おうとした。それは、本当の痛みを隠そうとしていることが明らかだった。「僕…僕は大丈夫だよ、お母さん。さっき友達と…練習試合をしたんだ。」彼の声は少ししわがれており、リリアンの耳には届いたかすかな震えがあった。それは痛みを暗示する調子だった。


リリアンは息子をじっと見つめた。彼女の母性本能は何か問題があると叫んでいたが、クリスチャンは自立した子供で、母親に負担をかけないように問題を隠すことが多いことを知っていた。「もういいから、風呂に入ってきなさい。まず体をきれいにしなさい。」リリアンは、心が痛んでいたにもかかわらず、冷静に振る舞おうとした。


クリスチャンは素直に頷き、ゆっくりと裏庭に向かった。井戸のシャワーの下で、冷たい水が彼の体のあざを濡らした。彼は下唇を噛みしめ、湧き上がってくるすすり泣きの声をこらえようとした。彼の肩は震えていた。涙は井戸の水と一緒に流れ落ち、傷ついた顔を洗い流し、リリアンが自分の抑えられた泣き声を聞かないことを願った。それは水の音と混じり合っていた。


練習試合? リリアンは心の中で思った。耐えがたいほどの不安を抱えながら、裁縫台に戻った。それだけだろうか? クリスチャンの目の中に、彼の偽りの笑顔の中に、リリアンの心を沈ませる何かがあった。その疑問は空気中に漂い、しつこく鳴り続けるハエのように彼女の心をかき乱した。外でクリスチャンに一体何が起こったのだろうか? 深い懸念を残す謎だった。


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