先生の本音は意外と怖くない
俺、松原空は普通の高校生だったのだか、高校入学と同時に、人の言葉の本意がわかるようになってしまった。
最初は、この能力で人生バラ色だと思っていた。
だけど、人生ってそんなに甘くないよね。
人の本心が分かると、逆に損になることが多かった。
だって、女の子の本心がわかっちゃうんだよ?
ウザイ、キモい、死ね、消えろ、ect...
毎日、そんな言葉を聞いてしまったら、好きな人なんて出来るわけないし、友達すら出来ない。
果たして俺は、まともな学園生活を送れるのだろうか?
「おはよう、空くん」
(本心:朝からこいつと会うとか最悪だわ)
「お、おはよう。相良さん」
学校に来ると、毎日のように暴言を言われる。
いや、周りからはただの挨拶に聞こえるのだろうけど。
さっき、俺に挨拶してきた奴は、相良美保というかなりモテる女子。
クラス全員に毎日挨拶を交わしていて、人当たりがよく、顔も可愛いので男子からの人気が超高いらしい。
だけど、そんな彼女の本心を俺だけは知っている。
本当は俺のことが好き!...とかはなく、多分だけど、クラスメイト全員嫌い。
こんな本心、知らない方が絶対お得だろ?
さらに、友達が居なくなった。
だって本心知っちゃったら人ってみんな怖いじゃん?
誰しも、裏表はあると思うけどさ。
友達なんか出来ないから、今日も休み時間は寝たふりで過ごす。
...こんな能力、マジで早く無くなって欲しい。
放課後、一人で帰ろうとしてると、担任先生の篠原咲希先生に、職員室に呼び出された。
めんどくさいなと思いながら職員室に向かうと、先生は椅子に座っていた。
俺が来たことに気づくと、手招きでこっちに来てと合図してくれた。先生のところに着くと、いきなり心配そうな顔をしながら、
「そろそろ友達でも出来ましたか?」
(本心:いつも1人で居ますが、大丈夫ですか?)
と、俺を殺そうとするような発言をしてきた。
小さい割にやるな。クラスでアリの子とか言われてるくせに。
けど、俺を殺そうとしているのではなく、本心で俺の事を心配してくれているようだ。
この先生は、本心と発言に裏表が少ないので、学校の中では一番信用できると思っている。
優しい本心に傷つくことも多いけど。
先生の心配はありがたいけれど、この能力を持った時点で、友達なんて作るのは辞めようと固く決意してしまったので、面倒になる前に誤魔化して帰ろう。
「いや、もう少し時間かかりそうです」
「なんで、そんなにクラスメイトと距離をおこうとするんですか?人間不信にでもなっちゃったの?」
(本心:話しかけるのが、苦手なのは分かりますけど頑張って下さい)
「人間不信というか、生物不信なんです」
この能力は、犬や猫などにも適応されるから、ペットの本心なども知れるという、マジでいらんおまけが着いているので、人間だけでなく、全ての動物に不信感を抱くようになってしまった。
「生物不信とか、くだらない嘘はやめて下さい」
(本心:そこまで、心に傷を負ってるとは思いませんでした。可哀想に。)
「嘘じゃないんですけど...」
...マジでこれ以上、心にダメージを負いたくないので、早めに帰るこにした。
「僕、用事を思い出したので帰ります」
俺が、職員室から出て行こうと先生に背を向けると、後ろから、篠原先生に肩を掴まれた。
「その身長で、よく肩掴めましたね」
「なんの、用事があるの?」
(本心:友達居ないのに用事でもあるの?)
「...帰ってアニメ見ないといけないんです」
この先生怖い!俺の渾身のイシリを無視してきた!
しかも無自覚で、俺の心に重傷を負わせてくる。なろう系の無自覚最強系じゃん。
「私に着いてきて下さい」
(本心:友達でも作る手伝いをしてあげましょう)
篠原先生は、そう言うと、椅子から立ち上がった。
「...早めに済ませてくださいね」
素の本音で俺を殺そうとしてくる先生だが、根は普通にいい先生なのだろう。頑張って、俺に友達を作ろうとしてくれる、先生の気持ちを無駄にしたくなかったので、素直に着いていく事にした。
別に友達出来るといいな、とか思ってないからね!
1mも期待なんかしてないからね!