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意気消沈のくるみちゃん

 ショッピングモールでの惨敗道中、電車内にてくるみは憔悴した様子だった。

 「信じられないよ春男……」


 「ど、どうしたんだ?」


 「だって……あの女の言う事全て当たるんだもん……」


 「たまたまだ。気にするな」


 「春男……未来予知とかって本当にあるのかな……あと、超能力とかも……」


 「…………」


 俺はくるみと出会い、はや半年。

 初めて、年相応の姿を見た気がした。少しホッとしていた。このまま、転んだ子供の頭を撫でて慰めてあげたい――謎の父性本能が開花。

 と、同時に『このまま帰してはいけない』そんな危機感……くるみがくるみでなくなってしまう……そんな背筋が凍る様な恐怖に襲われた。


 「くるみ」


 「……なあに?」


 「くるみ!」


 「え? どうしたの春男? 顔怖いよ?」


 「くるみ! しっかりするんだ!」


 「え?」


 「超能力、未来予知なんか存在しない! 信じられるのは自分だけだろ! お前は国家最重要機密事項の一つでもある、ネゴシエーターだろ! メソメソするな!」


 「春男……ありがとね。うん。わかった。メソメソしない」


 くるみは俺の会心の父性本能爆撃でなんとか踏みとどまった様だ。


 「そうだ。一つ気になった事あるんだよ」

 

 「なんだ?」


 「二回目に私達が占いブースに行った時の事覚えてる?」


 「……あ、ああ。確かおかえりなさい――あ……」


 「気付いた? あの時はふざけて言ってるかと思ったんだけど、あの女は私達が来る事を知ってたんだよ」


 「え? と言う事は……」


 「ホットリーディングだね。多分誰か第三者が私達を尾行して、あの女に伝えた――メダルゲームの場所もそう――」


「…………」


 「私、占いについて少し調べてみる」


 「そうだな。それがいい――ところで今日電話するんだろ? 友達になるんだから色々聞いてみたらいいんじゃないか?」


 「そうだった……嫌な事思い出させないでよ春男」


 ここはくるみの探究心をくすぐるのが吉だろう。


 こうして、多額の出費をしただけのお出かけは終わりを迎えた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 そもそも占いとは、目に見えない物――運命や未来などを予知・予言すると言う事である。


 ここで占いにはどんな物があるか記載しよう。

 東洋占星術、風水、四柱推命、トランプ、紫微斗数、花占い、動物占い、0学占い、姓名判断、タロットカード、九星気学、おみくじ、西洋占星術

、数秘術、ルーン占い、誕生日、血液型、手相、夢、星座――誰でも年始におみくじを引く事もあるかと思います。このように私達の現在の生活に占いと言う物は定着している物なのです。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 ショッピングモールから帰宅した。

 色々あった。

 俺は改めて財布を覗いて、今日の出費が何かの間違えではない事を再確認していた。そして入浴。


 プルルル――

 脱衣所で全裸になった瞬間、電話が鳴った。

 くるみ? 

 今まで俺からは鬼電する事があったが、くるみからの着信は初めてだ。

 まさか、改めて今日のお礼を言いたくて電話してきたのか?

 かわいいところもあるじゃないか。

 だが、今は駄目だ。

 これから入浴――

 携帯をリビングに置きに行った際、間違って応答を押してしまう。無論、全裸続行中だ。

 

 「春男、わかったよ。育美の占いのからくりが」


 「く、くるみ――わかっただと?」


 リビング全裸で会話開始。

 ちなみに今は11月。


 「やっぱりあの女は私を調べてたんだって」


 どう言う事だ?

 ちなみに全裸である事は、この時点ではくるみには伝えていない。


 ホットリーディング

 あらかじめ相手の事を調査しておき、その事を明かさず、さもその場で知ったかの様な話をする。

 決してインチキな意味ではなく、相手からの信頼を勝ち取る会話テクニックとして、占い以外にも利用されている。

 調査に関しては、著名な霊能者や占い師にはチームが存在し、給与を払って専門職として確立してるケースもある。


 「ショッピングモールでも尾行していたのか?」

 

 「そだよ。ほら、一度終わって休憩していた時あったでしょ? その時調査員の人が後ろにいて、私達の会話聞いてたんだって」


 寒い……


 「文学フリマはどうなんだ?」


 「あれも、私を尾行してたらしいよ」


 無論全裸な俺、徳川春男。


 「は? ストーカーか?」


 「まあ、ある意味そうかもね……でも、本当に私と友達になりたかったらしいよ」


 今更、全裸だとはくるみには言えないな。

 セクハラ発言扱いされるかもしれん。なんですぐ言わなかったの? と変態扱いされるかもしれん。


 「そうか……だからと言って、尾行は良くないな」


 「そだね。でもいいよ。詳しくは明日話すよ」


 ①くるみが落ち着いた。そして少し嬉しそうだ。

 ②今日のお出かけが意味がある物となった。

 ③入浴可能全裸解消。


 上記の理由により、俺は安堵した。


 「わかった。じゃあくるみは本庁に来るのか?」


 「うん。明日は新人ネゴシエーター向けの授業の講師をするから」


 「え? くるみ、お前そんな事もしてるのか?」


 駄目だ。自業自得だ。思わず寒さを――いや、全裸状態を忘れ食いついてしまった。

 おかしい。しかも、スリルを感じているぞ? 俺は変態なのか?

 この後も、今しなくていいだろ?  と言う会話を20分続行した。


 俺は今日と言う日を忘れないだろう。

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