くるみVS占い少女 第一ラウンド
「はい――書いたよ。明日の運勢だよ? 手相じゃないよ。安い方で手短に占ってね、育美」
くるみは差し出された、わら半紙に『青森くるみ』と書いた。直筆初めてみたが、丸文字だった。
「あすたはすげぎ的なごどが起ぎる」
「春男、通訳」
「あ、ああ。明日は刺激的な事が起きると言ったんだ」
「そんなの当たり前じゃんか。普通に生活してても、イラッとしたり笑ったり、驚いたり、刺激的な事は必ず起きるよ。要は当たり前の事を言ってるんだよ。インチキだよ」
くるみは、初対面の自称占い師の育美を睨みつけている。
「ぐるみざん」
「濁点はいらない!」
「なっきゃちっちぇころ、どうぶづ飼ったごどがありますね?」
「春男!」
「あ、ああ……あなたは小さい頃動物を飼った事がありますね? だ」
「残念でした。私はアリ一匹飼った事がありません。春男、育美はバーナム効果やコールドリーディングを使って情報を引き出そうとしてるんだよ」
「バーナム効果? コールドリーディング?」
「うるさい! 後で説明――」
「なの部屋には、そこのおずさんといっしょにさづえぇすたしゃすんがある。たげだいずにすてら。」
「え?」
「今のは――」
「通訳いらないっ!」
「はい……」
一応通訳する。
今のは「あなたの部屋には、そのおじさんと一緒に撮影した写真がある。とても大事にしてる」
はい?
「そんなのないよ!」
これはある。
くるみ、明らかに図星をつかれて動揺してるぞ?
「あがぇいろのずでんしゃ」
「え?」
赤い色の自転車……
「えぎまでのっでぎた」
「…………」
「ぶんがぐふりまでbuzugaと言うざっがざんの、ほんがった」
「…………」
くるみが絶句している。
完全敗北らしい。
部屋に俺と撮影した写真が飾ってある。
赤い自転車を駅まで乗って来た。
文学フリマでpusugaとか言う輩の本を買った。
「帰る!」
「おだいさ」
「春男!」
「お、おう」
くるみは俺の財布を奪い取り、一万円札を二枚強奪し、テーブルに叩き付けた。
「お釣りいらない!」
俺の金……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
占いブースを後にしたくるみは、ツカツカとやりきれない怒りを大地に踏み鳴らして歩いていた。
「く、くるみ……さん?」
「なんなの? あの占い師の女、絶対許さないよ!」
「ぐ、偶然だ。偶然あてづっぽが当たっただけだろ?」
「ゴリラは黙ってろ!」
「あ、はい……」
しかしどう言う事だ?
自転車の色、部屋の写真、しかも文学フリマと言う具体的な場所と、作家名。
津軽弁の育美とか言う占い師は驚く事に、これらをズバリ言い当てた事はくるみの態度からして明白だ。
「春男!」
「は、はい?」
「ちょっとコーラ飲んだら、もっかい行くよ!」
「どこにだ?」
「あの女のとこだよ! 今度は手相! わかりきった事聞くなゴリラ!」
「……あ、ああ」