ある村にて その1
一人腰まである緑の髪に白いワンピースを着た十六前後の少女が岩に鎖で繋がれていた。彼女はいわゆる生け贄だ。それは、この辺りを荒らしている魔龍ガミアスが生け贄を要求したので、村の司祭がクジを行い、彼女になったのだ。
彼女は静かに涙を飲んでいた。家族の誰もソレが当たり前のようにしていたからだ。その時、何故か、それが他の家族だったら、自分は止めただろうかと思う。
暫くすると、一匹の龍が現れて、彼女を一飲みしようと、その大きな口を多くき開こうとすると、それを防ぐように、その上に一人の若者が立っていた。
(誰なの、あの人は)
その龍は手を廻して、その若者を払おうとすると、彼はそこから飛び降りて、龍の眼の前に降り立つ。
すると、龍が彼を睨みつけて、唸った。
「お前は誰だって、オレはブラストって名がある」
その若者はそう名乗り、腰に差していた剣を抜いて構えて、その龍の姿を刀身に写して呟く。
「なるほど、コレが、お前の本当の姿か」
その言葉が聞こえたのか、その龍は唸り声を上げて、ブラストを睨んだ。
「覚悟しろだって、それはコチラのゼリフだよ」
ブラストは笑って、剣を構える。
すると、その龍は彼に襲いかかるが、ブラストはそれを避けて、剣でその龍の首を断ち切った。
「すごい」
彼女はその様子を呆然と眺める。
「大丈夫かい」
ブラストはその少女に声をかけて、ベルトの一部から小さなナイフを取り出して、彼女を縛りつけている鎖を切る、その様子を彼女は漠然と見た。
「あの、龍の血を浴びなくてもよろしいのでしょうか」
「龍の血だって、そんなのは噂話だよ。不死にはなれないし、逆に酷い火傷をしてしまうから」
ブラストの言葉に少女は驚いてしまう。
「どうゆうことですか、確か伝説では、龍の血を浴びた者は不死になれると聞きていますけど」
「眉唾ものだな、それは、龍の血はマグマ並みの熱量を持っているからね、大火傷をして死ぬから」
ブラストが笑っていると、一人の神官が慌てて現れた。
「なんてことをしてくれたのだ。あんたは」
その言葉を聞いたブラストは首を捻る。
「どうゆうことですか」
「魔龍ガミアス様を倒してしまうなんて」
それを聞いたブラストは顔をガミアスと呼ばれていた龍の方を見た。
「あれがガミアスに見えるのかい」
神官と少女はブラストの示した方を見ると、そこにはガミアスとは似つかない首を切られた飛龍の死体があった。
「どうゆうことですか、これが魔龍ガミアス様ですか」
「そのとおりだよ。幻覚魔法でそう見える様になっていたのだよ」
ブラストが言っていると、一人の老人が現れる。
「なんてことをするのだ。魔龍ガミラス様の化身をたおしてしまうなんて、カリス君、この者を捕らえなさい、それと、エルニア、君はこっちに来なさい」
その老人は二人に命じる。
「はい、わかりました。アビク様」
カリスと呼ばれた神官はブライトに近づいた。
「悪いが、アビク様の命令だ」
カリスは若者が抵抗すると思っていたが、彼は抵抗することなく、カリスに捕らえられた。
一方のエルニアは少し抵抗しようとしたが、アビクに睨まれると、何故か抵抗できなくなり、彼の手によって、アビクの屋敷へ連れて行かれる。
「やっぱり、言魂か」
捕らえられたブラストは小さく呟く。
「なにを言っている。こっちに来い」
カリスと呼ばれた神官はブラストを牢屋へ連れて行った。
アビクの屋敷にて、カリスが持ってきたブラストの所有物を長机の上に並べた。
「コレが、あの者の所有物ですか」
「はい、アビク様、コレがあの男、ブラストが持っていた物です」
カリスがそう言うと、アビクはその名前を聞いて、少し驚いたが、それよりも所有物のことが気になる。
「剣に腕輪に、何ですか、これらは」
アビクは驚く、円形のパズルと何かが入っているボックスと印がある地図などであった。
「あの若者は何者なのでしょう」
アビクはカリスの言葉を無視する様に、彼はその剣を持ち、鞘から抜こうとしたが、剣は鞘と一体化したかの様に抜くことができなかった。
「やはりな、この剣は、ガミアス様に呪われた様だ」
アビクはその剣を置き直して、次は腕輪を手にする。
(これは確かに、あの伝説の腕輪だ。だが、何故、あんな若造が)
「ともかく、あの男を死刑にしなさい、それと、もう一度エルニアをガミアス様の元に連れて行く」
「あ、はい」
カリスは返事をして、そこから離れて、ブラストを捕らえている牢屋へ向かった。
「そうか、あの老人は、 この二、三年前から、この村にいるのか」
ブラストが呟いていると、カリスがやって来る。
「おい、お前なにを独り言を言っている」
カリスがブラストを睨みつけた。
「オレの名前は、ブラスト・クライヤですよ」
ブラストは苦笑する。