①
場所は特定されたくないのでぼかすがこれはオレが小学生の頃に出会った不思議な話だ。
引っ越しちまったから今もその公園があるかはわからん。
忘れず湖の龍神様、という都市伝説が当時子供の間で流行っていたんだ。
なんでも市が管理している森林公園に雨の日に龍が出るって話なんだけど、話すと嘘っぽくなるから
嘘だと思うやつはそういうフィクションとして聞いてくれ。
小学生の頃、近所にはしょぼいアスレチックと雑木林の広さだけはある市民公園みたいなやつがあったんだけど
その時、俺らの間で龍を見たって噂が流行り始めて
俺は友達に誘われてその当時仲が良かった4人組で雨の日にその日親がいない友人…仮にM彦としておく、こいつの家で遊ぶ事にしてみんなで傘さして森林公園に行ったんだけど
そこって景気が悪くなると自殺者が出るくらい雑木林が鬱蒼としてて、しかもあんまり街灯とかもなくて
まだ明るいはずの時間なんだけど天気の悪さも相まってちょっと不気味な雰囲気を醸し出しててちょっとした肝試しのような感じでさ、
俺ら……面倒だから俺、M彦、G太、A美とするの4人でちょっと怖くて固まって歩いてたんだ。
先頭が俺、その隣にG太、ビビりのM彦は自分より怯えてしがみついてくるA美にかっこいい所を見せようと上擦った声で慰めているのを俺とG太でからかいながらどんどん奥に歩いて行ったわけ。
クラスのヤツらが龍を見たって言う広場……つっても雑木林がちょっと開けて芝生があるくらいのなんも無い場所なんだけどそこについて暫くみんなで空を見てたんだよ。
どんよりした雲と鬱陶しい雨が降ってるだけで鳥も飛んでないし、ましてや龍なんて待てど暮らせど出てきやしなかった。
龍を待つのに飽きた俺らは雨も降ってるしもう帰るかーと話し合ってやっぱり龍なんて嘘かなにかの見間違いだったんだって言い合いながらその日は家に帰ったんだ。
それで学校で龍は嘘だった。ってその日行ったメンバーとクラスのヤツらに言ったんだけどさ
ある時にクラスのやつに聞かれたんだ。
「その広場、ちゃんと水没していたか?」って。
どういう事かちゃんと詳しく話を聞いたらどうも龍が出るには条件があるらしくて
広場が水没して地面が見えない状態になってないといけないらしい。
ちょっと地面が湿ってるくらいじゃ龍は出ないんだと。
そういう話はもっと早く教えてくれよ、と思いつつ今度大雨が降ったら見に行こうと心に決める。
そこからオレは大雨を待つ日が続いた。