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25

 マーデリンはブランディンと婚約破棄をした後、騎士として守れなかったと落ち込むボルト様を支えたらしい。

 侯爵家の三男であるボルト様は呪い解除に貢献(聖水を入手)したという功績もあり、アーデンの後押しもあって国王よりフェルトン子爵を授与された。

 これによりマーデリンとの婚姻が進められ、今に至る様子。


「お父さまたちは私を国外に手放すぐらいならって許していただけたのよ」


 そう言って笑うマーデリンは二人の子供を抱え、かなり幸せそうに見えた。

 ボルト様は領主として奮闘し、今では以前より栄えた領地として盛り上がっているそうだ。

 両親は元領主として安心して子爵家と領地の行く末を委ねられたと喜び、フロンテ領へと踏み切れたらしい。

 貴族の責任を果たしたとはいえ、長年収めてきた場所だったから愛着はあっただろう。

 領置状態ではなく、王家管轄ともいえる状況になったことで安心できたようだし。

 王家もマーデリンの意思を尊重したという名目で国内に留めて見守ることができ、都合が良かったのかもしれない。

 小説でもかなり溺愛された王女だったからそれは今も続いているようだ。

 太陽姫と謳われたヒロインはハッピーエンドの象徴のように周囲を明るく照らしている。

 ……だったらアーデンは今、どういう状態なのだろう?



「晩餐の準備が整ったようだ。案内する」


 皆と一先ず話しを終え、念のためにとお医者様にも異常なしと診断され、身支度を整えたところだった。

 侍女服でない着なれない豪華そうなドレスを身に纏い戸惑う私をアーデンは慣れたように手を取り、スムーズにエスコートする。

 晩餐の席では両親とボルト様、マーデリンとルイ様が席に付き、ソフィア様がゆりかごで眠っていた。

 何故か席次がアーデンの隣でお父さまに挟まれ、向かい側にはマーデリンたちが座っている。

 あの日を彷彿とさせる華やかな食卓が整えられ、ホールケーキもあった。

 そういえば今日はアーデンの誕生日だと告げていたことを思い出す。だから特別なのかもしれない。

 けれど祝杯をあげても特にはっきりと言語化するわけでもなく、豪華な食事に舌鼓を打つだけ。

 結局、マーデリンが主体となって会話を弾ませ、他愛のない話なのにあの時よりも盛り上がっていた。

 その後はさらりと終了し、誕生会という雰囲気ではなかった。あとでもういい歳の大人だからと気が付く。

 今更ながら何も用意することができてなかったためせめて祝いの言葉を伝えたかったのだが。

 ついマーデリンの子息たちに気を取られている内に男性陣は退室していたという。

 二組の家族は公爵家に宿泊し、明日には帰路に発つらしい。私はもうしばらくここで療養するようだ。

 就寝準備を整えた後、帰ってしまうからと両親と話し込んでしまい、夜も深まるはめに。

 が、眠り続けたせいか睡眠が浅く、早朝から散歩して過ごし、時間を迎えた。

 両親の管轄になってからフロンテ領はハーパーさん一家もいないらしくかなり変わっている様子。

 近いうちに来訪することを約束し、名残惜しく別れを告げた。

 そのあとはマーデリン一家とのお別れ。ルイ様は人見知りがちだったが最後は小さく手を振ってくれた。

 4歳になったばかりというが出会った頃のアーデンと変わらないくらいの体型だとほろ苦い懐かしさを感じた。

 見送りに出たアーデンと共に残された私は何となく居心地が悪くなる。

 ルイ様と接したせいもあり、横に並べばもうすっかり高くなってしまった身長やがっちりとした体格を意識せざるを得ない。

 何だか取り残されたような気持ちになり、いろいろとモヤモヤしたものが増していく。

 眠っていた10年間の変化についていけないのは当たり前なのだろうけども。


「セシリア、慌ただしくて疲れただろう。少し休むといい」


 気遣うようなその素振りにまた動揺してしまう。元々優しい性格だとは分かっているものの慣れない。

 目覚めてからの何とも言えない焦りだけが身体を支配していた。

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