15
ハニーブロンドの髪を靡かせ、頬を上気させた眩しいほどの美少女。
数年ぶりに目の前に現れた太陽姫は以前よりも大人びていてもっと美しく輝いていた。
ブランディンにエスコートされ、マーデリンが着座する。
私は対面しながら丁寧にカーテシーを行う。アーデンも横に立って頭を下げている。
「この度はお祝いの席を設けていただき、ありがとうございます」
遜色の無いようしっかりと挨拶をし、睨んでいるブランディンに対してもにこやかに微笑んだ。
座るように促され、マーデリンと向き合う。こんな近くでご尊顔を拝めるとは思いもしない。
「私の我儘で来てしまったようなものなのよ。畏まらないで、ね、お義姉さま!」
「マーデリン!」
屈託のない笑顔で答えたマーデリンにブランディンが声を上げた。私もその発言に驚く。
「今、この場にいるのは家族みたいなものでしょう。私は皆と仲良くなりたいの。だからお義姉さまと呼ばせていただきたいわ。いいでしょう?」
私やアーデンに対しても親しみやすい態度で語り掛ける太陽姫の横で怖いぐらいに顔を歪ませるブランディン。
「マーデリン、境地を超え過ぎている。そこまでやる必要はない」
「そんなことないわ。カーティス公爵はお義兄さまになるお方。だからセシリアお義姉さまよ。それにアーデンは義弟になるのですし、今からでも遅い方だと思えるわ」
「……いい加減にしてくれないか、そんなはずないだろう!」
ブランディンは語気を抑えつつも窘めているがマーデリンはそれを否定する。最後にはブランディンの方が立ち上がった。
「気分が悪い。退席する」
「……もう、すぐにヘソを曲げてしまわれるのだから」
苦笑気味に濁し、退室するブランディンを見送った後は私たちに申し訳ないわと軽く謝った。
「私が甘やかされ過ぎて育ったものだから譲れないところは譲れないと我を張ってしまうの。だからよく怒らせてしまうのよ」
ため息交じりに呟きながらも太陽姫は人を卑下しない。人格的にも素晴らしいヒロインそのものだ。
一国の王女という地位に奢ることなく、対等の立場で見ることのできる方。
そして侮ることなく自然と正しく判断し、弱いものに手を差し伸べる正義の人。
清い心根を保ち続け、それをひけらかそうともしないから惹かれてしまう魅力がある。
このような存在だからこそヒーローに相応しいといえるのだ。
思わずアーデンが運命の相手だと気づいているのかとチラリと見てしまう。
だけど変わらない表情を保ったままマーデリンを見つめていた。
「そうだわ! このような時、どうなさってるの? お義姉さまはお義兄さまと仲違いはなさったことないのかしら? 聞かせてくださらない?」
突然話題を振られ、戸惑っているとアーデンがすっと立ち上がった。
「……お話を中断させて申し訳ないのですが用事を思い出しましたので私も失礼させていただきます」
退室するアーデンを見て失敗しちゃったという感じでマーデリンが呟く。
「いけない、殿方の前でお話する内容ではなかったわ。お義姉さま、お尋ねして申し訳ないですわ」
可愛らしい。本当にこの方はどんな表情でも輝いて見えるのは仕方がない。
「王女殿下」
ドアの外で控えていたボルト様がノックし、中へ入ってきた。
「そうだったわ! お義姉さまにお譲りしたいものがありますの」
思い出したように控えていたボルト様に合図を送る。
気付けば目の前のテーブルの上に書類が置かれていた。
「これは……」
よく見ればリストのような文字の羅列が並んでいる。
「こちらは私の婚礼準備で候補内となったものをリストアップしたものですの。参考になればと思い、お持ちしましたの。それに必要があればすぐにでも手配できますわ」
「あ……、ありがとうございます。王女殿下」
「嫌だわ。名前で呼んでいただきたいわ。お義姉さま」
マーデリンがにっこりと微笑みながら首を傾げる。
おそらく婚礼準備の進んでいない私の手助けをしてくれているのだと把握した。




