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そんなこんなで週明けになった。
別館班の組み合わせは私を含めた子爵令嬢3人と男爵令嬢2人。伯爵令嬢様方の交代劇によりこうなる。
いつもと違うメンバーでの別館仕事だったけど、結論からいうとこの1週間も忙しかった。
別荘であるお屋敷には直接関わらないものの、それに付随すること全てを手伝わされたから。
屋敷内の掃除や食事運搬などは別荘担当の面々がこなしてるものの、間接的に関わることはこちらに回される。
失敗は許されないと完璧さが優先され、常駐使用人の方々全員がピリピリしていた。
しかも公爵家に相応しい最高級のものを使用するからいつもより気を使わなければいけない状態。
不手際があってはならぬと大量の予備も用意し、些細なミスも見逃さないと言わんばかり。
2週連続別館の仕事もしつつ、滞在による補助的手伝いも賜るという過酷な日々を送るはめになる。
まあ、今までが余りにも緩すぎたのかもしれない。これをこなしてこそ、給金に見合うのかも。
手を抜いたつもりはないけど、我が家にいた時ほど働いていなかったのは間違いないし。
強制交代させられて伯爵令嬢様方の思惑に乗らされたかと思いきや、そうは問屋が卸さなかったらしい。
どうやら都合よく公爵家の面々に会えるわけではなかったご様子で。
蓋を開けてみればちらりと見かける程度の接近しかなかったとか。
これでは話すどころではなく、会うことすらままならなかったということ。
所用はほぼ侍女長が請け負うらしく、それをステラさんとデリアさんに割り当てているようだった。
結局は常駐使用人の面々が直接お世話している形となり、別荘班はおまけみたいなものらしい。
当ての外れた伯爵令嬢様方はものすごく憤慨していたのは無理もない。
でも別館班である私たちは公爵家様方の姿すら拝むことがなかった。
忙しくはしていたけど、本当に滞在している? と思えるぐらいに皆無。
徹底的に屋敷に近づかないようにと管理され、全く出くわすことなく過ごしたのだから。
いつの間にか来て帰ったというのが印象づく。
とにかく無事に休暇を過ごせたとのことでほっとしたのだった。
あれ、人減ってない?
ちょうど公爵家の面々がご帰還された翌日の朝食時。
昨日の夕食時にはいたはずの伯爵令嬢様方の姿が忽然と消えていた。
侍女長からのお話では昨日付けで5人とも退職したとのこと。
男爵令嬢のお姉さまたち二人は顔を見合わせてフフッと笑ったが何も言わなかった。
残っているのは今週別荘班の面々たち。
とりあえずはお屋敷の片づけということで全員で行うことになった。
先週設置した美術品が外され、全て綺麗にした後、慎重に元の場所へと保管される。
丸一日美術品などの撤去作業に追われ、掃除などする暇がなかった。
翌日から各部屋の片づけとなり、殺風景になった場所を徹底的に磨いた後、家具という家具に布をかぶせる。
どうやら来年まで使われることがないからお役目終了なのだと悟った。
全ての部屋の片づけが終わった頃、今週も終わりとなった。
翌週になると突如、配置換えが行われた。
別荘がアネットさんともう一人の子爵令嬢の二人、別館が私と男爵令嬢の二人合わせての3人で。
屋敷は大体片付いているからそれ以外の残った場所ぐらいで負担は少ないから当然か。
別館の方は1週間ほどほったらかしにしてたからこっちの方が汚れている可能性がある。
とはいえ、ご令嬢の皆様しか使用していないからたかだか知れてるかな。
共用の場所は四隅に埃が溜まってる程度でサッと掃いて床を磨けばあっという間に終了。
日々、積み重ねてきた掃除の賜物だと思うし、普段から気を使っているおかげでもある。
先週に比べれば楽勝ともいえ、3人でも余裕があるくらいで思ったより早く午前中で終えてしまう。
午後は何するのかと思ってたら、どうやら退出した伯爵令嬢様方の個室掃除が待っていた。