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 それからはあっという間だった。

 学園入学の審査があり、書類提出と面談試験が行われた。

 書類は下手に改変されないよう、私が直接届けて提出し、事なきを得たつもりだ。

 面談試験も当日無事に赴くこともできたし、不正されないようしっかり見守った。

 かなり警戒していたおかげもあって見事に入学証を手に入れることができたのだった!

 これで学園入学が果たされるとやっと肩の荷が下りた気がした。

 もちろん入学することは小説では明らかとなっている。

 だけどどうしても不穏な流れを目の当たりにしてきた経緯があるからとハラハラしてしまう。

 判っていても常に違う思考が働き、思いがけず勝手に身体が動いてしまっている。

 この世界で生きているからこそ文章で読んでることよりも体感の方が強い。

 いつブランディンが妨害してくるのかと不安に襲われる。

 それだけ何を仕掛けてくるのか分からない存在として恐怖を感じているのは確か。

 だからこそ、本当に入学を迎えられることになったのが奇跡のように嬉しく感じるのだ。

 それにアーデンの努力のたまものということも忘れてはいけない。

 何よりこうして身近で実感できているのが一番の喜びだといえる。

 平民のまま関わることがなければここまで肌で感じることがなかったのだろうから。

 だがこれで終わりという訳ではない。

 むしろここからがある意味スタートラインに立ったようなもの。

 これから顕著に学園でのアーデンとマーデリンの交流が始まっていく。

 その光景に嫌悪したブランディンが暴走を始めるのだ。

 できれば呪術を使わせずにすむ方法はないのだろうか?

 最近ではそのことばかりを考えてしまう。


「セシリア、もう結論はだせただろうか?」


 不意にカーティスから声を掛けられた時、すっかり大事なことを忘れていた。

 

「あ、あの……、も、申し訳ありません」


 入学が決まってからもバタバタとしていて今だってタウンハウスへと戻る準備の真っ最中だ。

 王都から学園へと通うために決まっていたことだが無理だった場合はどうなっていたのだろう。

 大した荷物は無いものの、入学に携わるものは用意しておかなければならない。

 制服の採寸だとか教科書だとか事前に入手していなければあちらではどうなるかわからないから。

 そんな風に呪術のことを含め、他のことばかりを考えていた。 


「判っている。アーデンの入学に関して掛かりきりだったのだろう」


 すっかり体調を取り戻したと思われるカーティスだったけどやっぱり顔色は良くない。

 気苦労も含めてのことかもしれないと申し訳なく思う。


「……もう少しお時間をいただいても宜しいでしょうか?」


 すると解っていたかのように見つめられ、


「では恒例の休暇前に訊かせてくれ。いい返事を期待している」


 不敵に微笑みながら颯爽と立ち去るカーティスを見送ることしかできなかった。

 この件に関してはじっくりと熟考しなければならない。安易に決断できないから。

 今はとにかくタウンハウスへの移動準備と入学準備に明け暮れることにした。

 入学ギリギリまではグリフィス領に滞在となっているがこれから先が大変なのも確か。

 アーデンがタウンハウスに移動することによってエリオットがグリフィス領へと入れ替わる形で戻ってくる。

 ブランディンのことを考慮してそうなったらしい。

 もしエリオットが王都に残ったならアーデンとの接触があった場合、ごねるのは目に見えてるからだろう。

 それにまたブランディンに忖度した生活が待っていることだろうし。

 今まで以上に気を張っていないとどこで蹴落とされるか予想もつかない。

 きっと無事入学が決まったことで憤慨しているに違いないから。

 絶対にアーデンの学園生活は私が守ってみせる!

 新たな決意を胸にカーティスの防衛があるここでの用意できるもの全てを準備した。

 以前のような軟禁状態での閉じこもった生活を想定したから完璧だと思う。

 そしてついに明日からタウンハウスへと戻ることになった。

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