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 カーティスは自嘲気に微笑んだ。


「だが知らないうちにブランディンの手のひらで転がっていたようだ」


 もちろんブランディンだけの仕業じゃないと思う。

 ヴァネッセが十分に種を蒔いていて、それを引き継いで見事に咲かせたのだ。

 エリオットやカーティスは水面下の醜聞を払拭するよう公爵家のために働き続けていただけ。

 子どもだからとそこまでの影響を想像していなかっただけなのだ。

 私だっていろいろと目の当たりにしたから亡きヴァネッサに忖度した大人たちとの影響力が判ったのだ。


「現在、公爵家では私が全てを収める権利を持っている。表向きではそうなっているが、実際のところ水面下でブランディンの影響があるといえる。公爵の資質としては相応しいがそれが全てアーデン排除に特化している。今はまだどうにか防いではいるが時間の問題だ。このままではいつかアーデンを消すつもりでいるのだろう。だから私は彼を守りたいと思っている」


 確かに今までの状況を傍目から見れば表向きではアーデンは傍若無人の嫌われ者。

 ところが裏ではブランディンに味方した者たちからの嫌がらせを受けていただけ。

 悪評が広まって嫌悪感が増すように仕向けられた偽りの存在に仕立て上げられたのだ。

 これらを全て払しょくするには無理がある。現状でもその印象が先回りしているから。

 しかも同時進行で嫌がらせも続いているから打ち消すのにも限度があるのだろう。

 カーティスが手を回していてもこの状況を回避できずにいるのだから。

 でも私は知っている。この先アーデンがどうなるのかを。

 今はまだ試練の時、数年以内には幸せになれます、絶対に!

 ブランディンの企みによって後々マーデリンと真実の愛を築いていくのですよ!!

 ハッピーエンドで明るい未来があるんです!!! と、そう声を出して叫びたい。

 そして彼がこの状態に憂いを持つのも判る。

 かつて私が余りにも酷いアーデンの扱い方を目の当たりにし、つい手を出してしまったから。

 きっと同じ思いを抱いていると思えた。人として見過ごせないという、気持ち。


「もちろん私もアーデン様の幸せを願ってますからそのお言葉は心強いばかりです」


「だが結局私だけではどうにもならないことも痛感した。情けないことにブランディンが爵位を継いだ後は私は何もできず恐ろしいことが待ち受けているだけではないかと危惧しているのだ。だからこそ、今のうちに手を打っておかなければならないと考えている」


 深く息を吐いたカーティスは顔を上げ、しっかりと私を見つめた。


「……そこで提案があるのだが、セシリア、私と婚姻を結んでくれないか」


 は? 今なんて仰いましたか、この御方?!


「あ、あの、カーティス、さ、ま……?」


「君は本来なら既に結婚していてもおかしくない歳だ。婚期を見送ってまで爵位を手放すことになったのはアーデンを思いやってのことだろう。私もいずれ公爵を退くのは決まっていたから元々静養を兼ねて国外で隠居生活を送ろうと考えていた。だが今の現状を鑑みてその際にアーデンを連れ出し共に暮らそうと考え直した。しかし、アーデンにとって君は必要な人間と判った。それに君はこれからもアーデンに仕えるつもりでいるだろう。それならば私の妻となり、息子としてアーデンを迎え、親子としてひっそりと公爵家を出る。もし希望であればフェルトン家を取り戻し継いでも構わない。ブランディンの手が届かなければ害を成すこともないだろうし、それで慎ましく暮らしていければいいと」


 わ、私がカーティスと、結婚?! 

 しかもこれまでいろいろと初見的な内容がてんこ盛りで予想もしない言動にパニックになる。

 これは確実に裏の流れであっても小説にない話、だよね?


「今すぐ結論を、というつもりはないがアーデンの学園入学決定後には君の返事を訊かせてくれないか」


 カーティスはそう言いきると倒れてしまった。


次章で終章となります。

次回更新は例のごとく、完結次第の掲載となりますのでご了承ください。<(_ _)>

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