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「これは一体、どういうことだ?」


 年も明け、学園入学を残り1年と数カ月を控えた初春、私はアーデンと共に本館へと呼びだされた。

 目の前には現領主のカーティス。傍らには執事長のジョセフさんや侍女長のリンデさんもいた。

 彼とのご対面は何年ぶりだろうか。幼少のアーデンを庇って以来会っていない。

 あの頃より歳を重ねた立派な男性という雰囲気だったが顔色が悪くやつれた様子も窺える。

 ずっと所有する各領地を飛び回っているようで休む時間を作るのが難しいからだろうか。

 確か元々はあまり身体が強い方ではなかったはずだ。領主として無理をしているのかもしれない。

 そんな状況下の中、こうやって呼ばれたのは何か問題があったのだろう。

 アーデンの噂という思い当たる節はあるが昨年のことでもう随分前の話だが。


「申し訳ありません。旦那様」


 ジョセフさんとリンデさんは私たちの目の前でカーティスに頭を下げていた。

 必死な様子で私たちの方にも向き直った。


「私たちの目が行き届かずに申し訳ありませんでした」


 深々と謝罪する姿を目の当たりにし、今の現状が把握できなかった。

 アーデンも無言のまま、じっと見つめている。


「もういい、ともかく直ちに対応してくれ。直ちに!」


「はい。申し訳ありませんでした。失礼いたします」


 慌てた様子で出ていく二人を見送って唖然とする。

 カーティスはアーデンの方に向き直すと諭すように話し始める。

 

「アーデン、何故私に報告しない。思わぬところで耳にして驚いた。醜聞や不満が蔓延していると報告は受けていたが、不在中にまさか随分な行き違いが生じていたとは……」


 頭を抱えながらカーティスが私に気付いたように声をかける。


「……セシリア、君は直ちにアーデンの元に付いてくれ。すぐにでも別棟へ移動だ」


「は、はい。承知しました」


 突然のカーティス命令に私はアーデンを置いて部屋を出ていく。何が何だか分からない。

 というか名前知られてたんだという衝撃もあったが、悪役侍女として伝達されているのかもしれないと思い直した。

 離れとも呼ばれる別棟は本館とは繋がっているものの多少建物が異なっている。

 来客があった際、重要でないゲストやお付たちが宿泊できるように位置付けられている。

 飛行機の座席でいえばビジネスクラスというランクでそこそこな感じだが公爵令息であるアーデンの扱いとしては些かどうなのだろうかと思える。

 言われた通り離れへと移動すると数人の侍女たちが項垂れていた。

 そこにはリンデさんもいて厳しい顔で何かを伝えているようだった。

 失礼しますと声をかけると皆強張った顔になる。一応、悪人面はしてないと思うけど噂になってるのか?

 

「その方々から引継ぎを。遠慮はいりません。人手が必要なら必ず私に直接申し出るように」


 リンデさんはしっかりとその旨を伝えると慌ただしそうに立ち去る。

 青ざめて落ち込んだ様子の侍女たちは私に目を合わせることなく離れに関する引継ぎを宛がった。

 結局はほとんど王都にいる時と同じ内容に近く、アーデンの身の回りの世話が主流で必要のない時は本館に立ち入らないようにとの事だった。

 少し引っ掛かったのは本館に行くな入るなというような強要する感じでは無かった点だけ。

 王都時代に受けてた軟禁状態とは遠い気がしたが触らぬ神になんとやらで近づこうとも思わないのも事実だ。

 それからアーデンの部屋にも案内されたが別棟でも端の端という文字通り何処かで感が拭えない。

 でもこんな端だからこそひと気が無くなる夜に抜け出せるのが安易だったとは思えた。

 私は新たにお仕着せを受け取り、エコノミー以下の小屋を脱出することになった。

 本来なら使用人棟に住むべきだろうに優遇措置によりアーデンの隣室へ。

 これはこれで洗脳騒動で位置付けられた悪役侍女として更に問題になりそうでどうかと思うけどそう片付いたらしい。

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