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 アーデンの専属侍女。

 突如、就職先をゲットしてしまった私は正式に明日から勤めることになった。

 訊けば雇用契約の手続等も全て済んでいるらしく、すぐに働けるとのこと。

 そのため、日雇いの仕事をすべて断り、斡旋所にはキャンセルを申し出た。

 雇用条件も平民落ちした肩書きは大丈夫なようで給金もフロンテ領時代と変わりなく貰えるらしい。

 ただ朝から夕方までの通いとなり、その辺についてはアーデンはとても残念がったけど。

 両親にそのことを話すと驚きながらも喜び、お父さまとは終業時は一緒に帰ろうと約束した。

 とりあえずは仕事探しに奔走する必要がなくなり、安定した収入を得ることになったという。


 翌朝、まだ早い時間にタウンハウスを訪ねた。早朝に慣れていた私にとっては少し遅い時間になる。

 昨日、案内されたルートから顔を出すと新品のお仕着せを渡され、簡単に屋敷内を案内された。

 基本的に調理場とアーデンの部屋の往復のみで他の場所へは近づくなという圧力である。

 この場所はブランディン配下の伏魔殿ともいえる屋敷だもんね、了解しましたよ。

 フロンテ領でも影を落として生活してきたからこういうのは慣れているし。

 早速、調理場から食事を運ぶこととなり、朝食がある!とその普通さに感激したぐらいだ。

 内容に関しては公爵家仕様とは異なるみたいだけどフロンテ領よりマシかな。

 部屋を訪ねるとアーデンは身支度を整えていた。

 当然、ここに来てからも身の回りのことは自分でしていたとか。

 簡単な掃除すら行ってたらしく、なるほど部屋が綺麗なわけだ。

 心得本を習得した侍女見習い?にとってはお手の物だよね。

 それに屋根裏部屋と違って調度品も備えてあり、きちんと整えられた部屋ではある。

 ただ広いせいもあるのかガランとした感じですっきりとしていて殺風景にも見える。

 窓からは木々しか見えず、ちょっと寂しい気がする。

 人の気配がほとんどないこんな隅っこに追いやられている環境。

 室内に誰一人として入る者はなく、食事などは廊下に置かれているような扱いだったみたいだ。

 今後はその運搬関係を私が行なうことでますますここに近づく人はいないだろうな。

 アーデンを孤立させている状況はどこへ行っても変わらない様子。


「それでアーデンはいつも何してますか?」


 食事を終え、片した後、部屋に戻ってきた私はソファに腰掛けている主に問う。

 ここでは本当に運搬係のようだ。洗い物はしなくていいらしい。


「別に特には決めてないよ」


 首を傾げながらそれが当たり前のように答えられた。決められてない、の間違いじゃなくて? 


「……えっと、貴族教育はどうなってるのでしょうか?」


「判らない。受けたことがないから」

 

 学園に入学するまで約3年。

 この調子だと貴族教育なんて教わっているわけなどないだろう。

 でもカーティスが調整教育のため強引にタウンハウスに連れ戻したはずなのに受けさせていないのはおかしい。

 つまりは裏でブランディンの思惑通りにことが運ばれているんだと思われる。

 けど小説ではこれから太陽姫の活躍が期待される展開に向かっていくはず。

 だからきっと大丈夫。こんな寂しい環境が変わっていくはずだ。

 といってもそもそも本当に彼女と出会ってるのかなんて私には判らない。

 マーデリンは婚約者であるブランディンに会うために月に数回しか訪れない。

 隠れるように過ごしているアーデンの現状をどうやって知るというのだろう?

 これはアーデンに訊くしかないとは思うけど、私が知る由もない人物を知っているかと聞くのは不自然ともいえる。

 いや、彼女は王女だし、市井ではちょっとした有名人のはず。しかもブランディンとは婚約中だと公に発表されてるよね、多分。

 遠方地にいた私が耳にしていないだけで輝かしい王女の噂は広がってるはずだよね、ヒロインだし。

 怪しまれないようにちょっと自信がないから両親に訊いてからにしようと決めた。

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