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 次の日の同じ時刻に同じ場所。事態の豹変に驚いている。

 確か昨日はもっといたはずだよね? 

 説明のあったホールの人数は明らかに減っていた。記憶の限り、半分近くいなくなってる気がする。

 封書を配る際に私の名前が呼ばれるまでも結構時間かかってたし、あれだけぞろぞろといたはず。

 もしかしたら何らかの理由で辞退したのかもしれないけど目減りしてるのは間違いない気がする。

 変な感じはしたけれど、働く気満々の私は寧ろライバルが減ってラッキーと思うことにした。

 そうこうするうちに昨日と同じように執事長と侍女長さんが現れた。

 配られた封書を握りしめ、昨晩を思い返す。

 何故だか無性に緊張し、手の震えが止まらず、破れないようペーパーナイフで慎重に開封した。

 高級な材質のカードには達筆な文字で一文が綴られる。


〝セシリア・フェルトン嬢

 グリフィス公爵家 フロンテ領 別荘″


 ただそれだけ。読んでから、安堵の息を吐く。

 ああそういうこと、具体的に何をするとかじゃなくて場所なんだと。

 まあ、公爵家の所有する領地は多岐にわたって多いと語ってた。

 王都にあるタウンハウスはないだろうと思ったけど、今いるこの領地じゃなくて残念だなぁってぐらいで。

 とにかく今の段階では雇ってくれるだけでもありがたいことだし。

 崖っぷちの私にとって働き口がどこであれ、収入が保証できるのであれば問題ない。

 ただ、明らかに自宅からの通いではなくて住み込みになるってことは予想外だった。

 フロンテ領は王都近辺にはない。両親とは別離決定だけどそれはそれで仕方ない。

 ジョセフさんの呼びかけで指示通りホール内を移動をする私たち。

 いざ振り分けられてフロンテ領配属のご令嬢たちが多いのなんのって。

 この場にいた半分以上がその地に赴くことになるとは驚愕っ。

 全くどんだけでかいんだって、その別荘地は!

 私にとってフロンテ領は名前を耳にしたことがある程度の領地。

 アレクシスラント王国と隣国の近くにある、ある意味、辺境の地とも呼ばれる一帯。

 自然豊かで空気と景色が綺麗な地域で上級貴族なら別荘を所持するといわれてるお土地柄。

 初夏の行楽を過ごす地としては最適で素敵な場所であると有名らしい。

 学園時代、どこぞの侯爵家のご令嬢様が友人とともに過ごしたと自慢話を耳にしたことがある。

 辺境の地でも所有しているだけで価値のある行楽地らしく、遠出になるけどわざわざ赴いて過ごしたと自慢話のタネになるところ、つまりは財力に余裕がないと行けない場所でもある、と。

 全く縁のなかった私にとっては憧憬したくなるのも無理はない。

 だからこそ、そんな名所で働けるなんてちょっと嬉しいかもと思ったのは秘密。

 本日は1時間もしないうちにこの用件だけで終了。一旦、自宅に戻って準備をしてくるようにとお達しがあった。

 明日はフロンテ領に向けて出発するらしい。

 急な流れで憤慨するご令嬢もいたけど、必要なもの一式は支給されるので、個人的に準備したいものだけ用意すればいいとのこと。

 端的に言えば身一つでも十分な準備してるので大丈夫だから、家族にご挨拶をどうぞって意味だよね?

 ホント、至れり尽くせりの公爵家さまさまで財力の違いを思い知った。 

 はっきり言って自宅で過ごすよりかなり優遇された時間を過ごしたのだから。

 部屋といい食事といい使用人の所作といい、ギリギリでやり繰りしている我が家とは環境が違いすぎる。

 筆頭公爵家の侍女として勤めるってことは確かに箔になりそう。

 とりあえずは名ばかりの準備をするため、自宅に戻り、両親には1泊した公爵家の様子やこれから働く場所の説明をした。

 さすが公爵家だねぇと感慨しつつ、逆に今まで不憫な生活をさせてしまったことを詫びられ、安心して送り出してもらえることになった。

 衣食住付き保証の高給金。神の御導きと思える運命的な就職先。

 転落一途だった私のこれから先の明るい未来に希望しかなかった。

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