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前世を思い出した侍女は呪公子を幸せにする  作者: おりのめぐむ
子爵侍女、前世を思い出す
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15

 あっという間に季節は廻り、雪解けを終え、寒さも和らぎつつあり、春めいてくる。

 新年を迎えてからもくっつき合ってアーデンと暖を取っていた時期も終わりを迎えそうだ。

 天井から吊るしてあった布も取っ払ってもらって少しはすっきりした。

 アーデンが居なかったらこの冬を乗り切れたかどうか自信がない。

 助けるつもりが助けられている現状に自分の未熟さを感じてしまう。

 でも去年の今頃はちょうど学園を辞めようと決意した時期でもあるし、それが今ではここで働いている。

 その現状だけでもすごい進歩だといえる。不安を抱えつつもあの決意の末の行動は間違ってない。

 だからこそこの経験を生かして次に励むしかない。私にできることは限られているのだから。

 突如、別館の小部屋掃除を行うという通達があり、いよいよ貴族侍女雇用の時期が近付いているのだと感じた。

 閉鎖された部屋を毎日ひと部屋ずつ解放し、使用できるように仕上げていく。

 下準備ができたところで支給品の補充が始まり、完璧な出来栄えとなる。

 これを毎年行なって手を抜かないハーパーさんの手腕はただ凄いと思った。

 元々こなせる人だったからきっと公爵夫人に気に入られたんだろうし。

 あくまで上辺はって話で手を抜いたりすることも誤魔化したりすることも得意なんだろう。

 娘である二人の侍女たちはハーパーさんのようには完璧とはいかず、指示されたことを出来ず怒られていたけど。

 その分、私がフォローに入ることになり、おお事にはならなかったのは言うまでもない。

 ここで気づいたのが支給品についてのリサイクル。

 あの頃、全てが真新しいものと思っていた支給品がそうでなかったと知る。

 お仕着せは伯爵令嬢に配給するものは1着は新しく誂えたもの。もう1着は完璧にクリーニングしたもの。

 それ以下の令嬢のものは完璧にクリーニングしたもの2着だった。

 新品と変わらないように仕上げられた黒いワンピース。全く気付かずに、これ、リサイクルだったのかと驚く。

 公爵家御用達のひと品で令嬢が着用するから綺麗なまま保てるし、基本はエプロンをつけるから汚れにくい。

 よくよく考えてみれば早くて1か月に満たない範囲での着用期間のものだしね。

 だったら全部を使い回せばいいのにわざわざ新しく誂えるのも不思議。

 そういった感じで支給品は消耗品以外は新品と中古が入り混じった状態でリサイクルされていた。

 そして綺麗だけれど貴族令嬢には使えないものや中途半端に余ったものはハーパーさんたちが再利用するらしく、そのおこぼれの一つが私にも回ってきた。

 さすがに1年間、過酷な労働で多少は草臥れた感が否めないお仕着せのワンピースとエプロン。

 上質だから丈夫でまだまだ着れるけど、他と比べたらよれているのが一目瞭然。

 買い出しやら草むしりやら雪掻きやらで着続けていたから当たり前だよね。

 引っかけて繕っている部分もあったし、さすがに公爵家侍女として他の人に見られたらアウト。

 そのせいかお仕着せが4着、エプロンも10枚と珍しくも好待遇な扱いを受けた。

 もちろんありがたく受け取ったし、お古となったお仕着せも再利用するつもり。

 だってここでは次はいつ貰えるかなんてわからないのだから。

 それに新しいものを提供したということは辞めさせるつもりはないと判断されたと思える。

 文句も言わずただ黙々と仕事をこなし、アーデンの影を隠すように過ごしたからかもしれない。

 少なくともステラさんやデリアさんよりは仕事ができる方と自負しているしね。

 もしかするとハーパーさんから見て使えると思われたのかもしれないし。

 それはそれで評価されたようで嬉しいけど油断はできない。何せアーデンをあんな扱いできる人たちだからね。

 ともあれ抜かりなくいつでもいいように受け入れ態勢も整い、採用された貴族侍女を待つのみとなった。

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