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前世を思い出した侍女は呪公子を幸せにする  作者: おりのめぐむ
子爵侍女、前世を思い出す
25/92

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 段々と気温が下がっていく季節、肌寒い冬の始めになっていた。

 アーデンのおかげで屋根裏部屋が随分と快適だ。

 埃はすっかり無くなり、今までどことなく陰鬱だった空気が綺麗に感じる。

 当初はぎこちなかった針仕事もスイスイとこなし、自分用のシャツを縫えるようにまでなった。

 信じられないがあの心得本の内容を本当に習得している。

 本は文字と図解で解説された専門的なものにも拘らず、読みこなして実践しているのだ。

 侍女対象の内容は別にしてもアーデンの学習能力は優れているといえる。

 さすが主人公。確かに学園入学までに太陽姫がフォローして追いつける能力を持っていた。

 若干、間違った方向に能力が生かされてる気がするけど、貴族教育を受けさせてあげられない今は仕方がない。

 いずれはがっちりと指導されるのだからこのままでも問題ないはず。

 貴族からかけ離れている点では小説と同じといえるかもしれない。

 でもまだマシな方だと思う。公爵家の一員の扱いとしては当て嵌まらないだろうけど、そう思いたい。

 技術取得の向上もそうだけど、身体の成長も僅かながら大きくなっている。

 夏の食糧事情から割と蓄積したらしく、背丈も6歳児に近づくべくようやく伸びている様子。

 前に比べて食欲が増してきたけど、相変わらず細いのは仕方がない。

 提供する量が限られて昼食以外は多めには奪い取っているもののやはり一人前としては程遠い。

 まだ今のところは分けた量でどうにかなっているものの、1年もすれば足りなくなるに違いない。

 男の子だしね。弟もそうだったけど、成長するにつれて量が増えてくる。

 でもアーデンに関しては頑なに決まった量しか作らない、与えないを徹底されている。

 勝手に作ろうにも料理人がそれを許さないからどうしようもない。

 下手なことをして荒立てたくない事情があるから強行はできないでいる。

 本当に自分のふがいなさに嫌気がしてくる。気持ち多めに分け与えることしかできないのだ。

 一緒に食事をするようになって失敗したと思ったのは量を誤魔化すことができないでいること。

 座ってカトラリーを使って食べるというマナーを身に付けさせたかったが為にしたことが裏目に出た。

 3食ともにすることで提供される総量がバレているので今更私の分をすべて差し出しても拒否されるのが見えている。

 魚や肉の一品を切り分けていても明らかに大きさが異なれば気が付いて戻されてしまう。

 6歳児とは思えない観察力で目分量でも不平等さを理解してしまう恐ろしい子!

 配分に関してはあくまで半分ずつが原則となっている状況。

 つまりは食料の確保だけはどうにもならないのが現状。かといってどうすることもできない。

 ハーブなら庭に植わっていたものがあったから夏の間にこっそりと拝借して干したものはある。

 お茶には不自由することなく、水出しならばいつでも飲めるけども。

 これから寒くなりそうな季節、どう過ごしていいのやら見当がつかない。

 何しろフロンテ領は初めての場所。冬の訪れは初めての経験となる。

 アーデンにとっても未開の地だし、お互いに知らなさすぎて未然に対処する方法を知らない。

 かといってハーパーさんたちが教えてくれるわけはないだろうし。

 これで雪国のように大雪とか降るような地域だったら本当にヤバい。

 そうでないことを願いたいと思っていたら案の定、大雪が降るような地域だった。

 本格的に寒くなりだしたと感じれば雪が降りだす始末。

 そしてあっという間に辺りは真っ白に降り積もるという状態に変化した。

 風景の綺麗な地域はもちろん雪景色も綺麗だった。

 小窓から覗いた光景にアーデンと共に感動はしたものの、寒さも痛感した。

 さすがに寒さに耐えきれず毎晩アーデンと抱き合って寝ることになったのはいうまでもない。

 申し訳ないけど、そうやって冬の間は過ごすことになった。

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