メテオストライク 10/17
「大事なもの?」
戸惑っているレイの横からタートゥールが口を挟んだ。
「ほら始まった。いいじゃんそんな意地悪しなくても」
「だまれ小僧! お前が管理者権限を持ってなければ、すぐにでも八つ裂きにしてくれるのに!」
「口も悪いし……」
タートゥールが小石を蹴飛ばす。男は飛んできた小石に指をあて破裂させた。
「フン! 私は紳士だ。約束は守る。さあレイとやら何を差し出す。安心しろ。どんな契約を結ぼうと影響のあるのはお前だけだ。周りの奴らに影響は及ばない」
「……」
レイは何と答えて良いか迷い腕を組んで押し黙った。
「どれ、少し過去を見てやろう」
男はレイに向け片手を上げると目を瞑った。
「なるほど。そこにいる女、ノアとか言うのか。よし、その娘に会うのを禁じる」
「!!」
レイは驚き顔を上げた。
「嫌か? それでは、シエンナ騎士団を抜けてもらおうか」
「……」
「それとも、これまで生きてきた記憶をすべてもらおうか。うん?」
「……」
「どちらにしろ、お前に取って大切なものでなくては契約は成立しない。さあ、どうする? 俺と契約を結ぶんだ。それなりの対価を払ってもらうぞ」
レイが苦渋の表情を浮かべ押し黙った。
「……1週間猶予がほしい」
「いいだろう。だが3日だ。3日後の夜に来い」
「……分かった」
「では3日後の晩に」
「待て。契約が破られたらどうなる?」
「永劫に魔法が使えなくなるだけだ。契約破棄。まあ、その反動でどうなるかは知らんがな」
男はそう言い残すと、もと来た空間の裂け目に帰っていった。
「兄ちゃん、それじゃ3日後に」
タートゥールはそう言うと裂け目を消し、自身も静かに消えた。
少し肌寒い春風が頬をなで通り過ぎっていった。
ノアがレイにゆっくり近づき声をかけた。
「1番選びなよ」
「何でそんなことを言う……」
レイは黙って立っているノアを見つめた。
「そんなこと言うなよ」
「……」
「ノアはいいのか?」
「いいわけないよ。でも。シエンナの騎士を辞めることも、記憶を失うこともできないでしょ。それに……」
「それに?」
「私はトラヴィスに行く」
「な、何をいきなり?」
「トラヴィスのお姫様が護衛の女騎士を欲しがっているらしい。それでシエンナに話がきたんだと。ほら、トラヴィスには女騎士いないから。私と、医療班のシャルル、二人が行く事になった。期間限定の任務じゃない。先日、ヴィベール様、そしてアヌシビ様から通達があった」
「受けるのか?」
「一介のシエンナ騎士に断る選択肢はないよ」
「……」
レイは目をつぶり立ち尽くした。
「そんな顔しない! レイが本当にピンチになった時は助けに行くから。生きよう、互いに。会いにいったらレイの魔法なくなるかも知れないけど、必ず助けに行く!」
ノアがレイの脇にピタリと寄り添った。レイがノアの肩に手を回す。
そのまま二人は煌々と輝くシエンナの要塞都市を静かに眺めていた。




