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メテオストライク 6/15

 レイは輝星石でなぞるようにしてウィルの書物を読んでいった。白紙のページにこそ、核心の言葉がつづられていたのだ。熱心に読み込むレイをよそ目に、ノアはランプを持って静かに立ち上がり壁面の本を眺めて行った。


「どう? 魔法に関してちゃんと書いてある?」

「待ってくれ難しい……」


 そのまま興味なく本棚の本を眺めていたノアの歩みが止まる。


「えっ?」


 と一冊の本を引き抜くと、急いでレイの隣に戻った。

 ページをめくる。


「なんだ?」とレイが尋ねる。

「これ見て」


 とページをめくっていくノア。


「私の魔法も禁術の一種だったみたい」

「……」

「まあ、でもそうよね。火・空気()・水・土の四元素に基づいてないし。でも禁術に入れるには大袈裟な気がするけど」


 とページをめくっていくノア。あるページで動きが止まる。


「……え? そんな……」

「どうした?」

「ううん。何でもない」


 ノアは静かに本を閉じた。

 静かに見つめ合った二人の影が書庫の上で再び重なり合う。

 

  × × ×


 まだ半分も読めてなかったが、かなりの時間が経った。ウィルの書物には、メテオストライクの魔法はその力の強大さゆえに、力の封印が施されていることが書かれていた。


「これだ!」


 その後ろには封印の解き方や、魔法の使い方に関して、事細かに書かれていたが、とても朝までに読めるような分量ではなかった。そして、地下の書庫にいると時間の間隔がわからなくなる。


「レイ、お腹すいたし。そろそろ行かないと」

「ああ、そうだな」


 それを思うと、ノアの作ってくれた合鍵は嬉しいものだった。また、来ることができる。


 レイとノアは本や椅子を片付け書庫を後にした。ギィーという音と共に書庫の扉をゆっくり閉める。閉めるとき、レイの動きが一瞬固まった。ランプの微かな光で見ただけだったが、書庫のなかの片隅に青白い顔、青白い姿の小さな子供、男の子がこっちを見つめているのに気がついた。顔は笑っていたが、その場に不釣り合いな笑顔がレイの心を凍り付かせた。


「お、おまえ? だれだ」

「レイ! ダメ。振り返らずに静かに行こう」


 ノアがレイの手を取って引っ張っていく。階段を素早く歩き1階の廊下にでた時、後ろで微かにギィーと扉の開く音が聞こえたきた。


「あそこに、男の子が……」

「分かってる。私も見た」


 鉄製の頑丈な格子扉を開け館内に素早く移動した。館内はまだ暗く、冷たく固まったような空気が滞留していた。


「あ、鍵」


 ノアが振り返りそうになるのをレイは手で止めた。慌てたノアが鍵を落とし、カツンと館内に冷たい音が響いた。鍵が格子扉の中に滑り込んだようだった。


「あっ!」

「大丈夫だ。俺がやる」


 レイは格子の隙間に手を突っ込もうとしていたノアの手をつかみ止めると、自ら手を突っ込んだ。幸い、すぐに鍵は見つかったので、そのまま後ろ手で南京錠をかけた。その時、スッと一瞬手に冷たいものが触れたような気がして寒気がした。


「どうしたの?」

「な、なんでもない」

 

 ぐっと気持ちを強く持ち南京錠がかかったのを確認すると、ノアと二人、足早にその場を後にした。


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