メテオストライク 5/17
「これあったらいつでもこれるでしょ」
ノアがレイの横まできて合鍵を見せた。
「やっぱり盗賊だなお前。いや泥棒か」
「何も盗まない。だから泥棒じゃない」
ちょっと膨れたノアをみて、顔が緩んだ。
「まあ、そうだな」
「また来たいでしょ?」
「ああ」
「これがあればいつでも来れるよ。ヒヒヒ」
「あきれた奴。その笑い方はやっぱり泥棒だ」
「それに…… わ、私も来れるし……」
「なんだお前も、何か探したいものがあったのか?」
「……」
ノアは黙って書庫の壁を眺めていった。
「これを片付けたら一緒に探してやるよ」
「え、うん。いいよ、私は別に探してるわけじゃないから」
「俺のは期待はずれかもしれん、最後の方のページなんて白紙だし」
とレイがメテオストライクの書を掲げる。
ノアが近づいて来てレイの隣で書物を覗き込む。
「メテオストライクのこと書いてあるの?」
「いや。書いてあるような、ないような。いや、あると言えばあるし、ないと言えばないな」
「どっちよ!」
「これ見てくれ。ある日のウィルの日記だ。寒い日が続き温泉に入りたくなったので、小さなメテオ(隕石)を山の麓に落としたと書いてある。しかし、ただ地面にクレーターができ、地震が起きただけだった。皆に怒られる。温泉に入ろうとメテオ(隕石)を落とすべからずって書いてある」
「なによそれ。フフ」
「こんなんばっかだよ。大丈夫かウィル?」
ノアが笑って、こっちも嬉しくなった。
「なんかいいね」
「フッ、いいんだろうか。でも、ちょっと安心したのは間違いない。ウィルは殺戮者ではないようだ」
「ねえ、いつもより光ってる」
ノアが輝星石のペンダントを指差して言った。
「ああ、そうなんだ。気持ちの昂りに反応するというか。おばあちゃんは、『この輝星石が導いてくれるから大事にしなさい』って言ってたよ」
「……ねえ」
ノアが身を近づけてレイのペンダントに軽く手を触れた。
「おい、外すからちょっと待て」
「いいよ」
「良かない近い近い」
「……」
ノアが輝星石のペンダントを放すと、コトリと書物の上に落ちた。
そのまましばらく時間が止まり、薄く伸びる二人の影が書庫の上で重なり合った。
輝星石の輝きが激しく揺らめく。
「私、このままがいい」
「……」
「だけどレイは、力のことを知りたいだろうし、手に入れたいだろうし……」
「……」
「それを私は邪魔したくない、手伝ってあげたい。……でも、でも……このままが、いい」
「変わらないよ。俺は俺のままだし。ノアもノアのままだ」
「……うーん。ちょっと、言いたいことと違う気がする」
「いや。ノアの言いたいことは分かってる。俺が、うまく言えてないだけだ。すまん」
再び、二人の影が静かに長い時間、重なった。
そして静かに影が離れた時、レイが書物の異変に気がついた。
輝星石の触れた白紙のページ、輝星石の触れた部分に古の文字が浮かび出す。
「これは!」