メテオストライク 2/17
「はぁ〜」とレイのついたため息が、図書館の掃除用具の物置に消える。掃除道具をかき分け空いたスペースに座り、扉を閉め、夜が来るのを待っていた。これしか本当に手がなかったのか? 考えても、しょうがあるまい。しかし、やはり…… 何故、こうなった? 暗い図書館内を、用具スペースの隙間から覗き、また、ため息をついた。
× × ×
ノアの提案にはあまり乗り気ではなかった。「レイが休みの日に図書館に隠れ、閉館後に図書館に残る。私が見回りの時に奥の書庫への鍵をこっそり開ける。魔法の書を調べる。どうよ?」乗り気ではなかったが、他に方法がなかった。奥の書庫に入る許可は、よっぽどのツテがないと永遠におりることはなさそうだったし、そこまでしてくれるノアの気持ちは嬉しかった。だからやる気になったのだが……
もう一つ、ノアは気になることを最後に言い残した。
「あそこ、お化け出るらしいよ。気をつけな」
「?」
「小さな子供らしい、静かに近づいてくるって。その子にあったら、静かに立ち去るんだよ。絶対後ろを振り向いちゃダメだからね」
「どういうことだ?」
「連れていかれちゃうらしいよ。振り向くと」
「……」
「レイはそっち系大丈夫?」
「大丈夫もなにも。そういうのをあまり気にしたことはないが……」
「良かった。……じゃ、大丈夫だね」
「……」
「ほんとは私、乗り気じゃないんだ。レイは別に今のままでいいと思う」
ノアがレイに向き合って瞳を見つめた。
しばらく静かな時間が流れた。
「でも、レイが知りたいのなら協力するよ。借りを一つ返す」
「すまない」
「ほんと、子供の幽霊には気をつけて。レイ、単純だから、『大丈夫か?』とか言ってフッと近づいたりしそうだから」
「あ、ああ。気をつけるよ」
まったく、子供の幽霊? ノアは何を言ってるんだか。と半分バカにしながら図書館で隠れるところを探した。大して良さそうな場所はなく、図書館司書のおばさんから見えないところにあった物置にサッと隠れた。掃除道具や補修道具などをかき分け、なんとか人一人座れるほどのスペースを確保した。
暮れなずむ図書館でじっと待っていたら、疲れからかコックリと寝てしまった。ハッと目を覚ましたのは扉の開く音に気づいたからで、目を開けると眩いランプの光が飛び込んできた。
……しまった!!
扉の向こうには、目を見開いて驚き固まっている図書館司書のおばさんがいた。
「出たーーー!!」
とおばさんは叫ぶと。1歩後退り、素早く後ろをむいて後ろ手に扉を閉めた。
「……あ、あの」とレイが出そうとした言葉を遮って、
「近づかないで! ご、ごめんなさいね。幽霊ちゃん。振り返れないの。さようなら。見なかったことにするわ」
と図書館司書のおばさんは言って「子供はいない。子供はいない」と呟きながら振り返らずに去っていった。
× × ×
そして、暗い図書館に一人、レイは取り残された。もう、なるようになれ! という思いでノア達が見回りに来るのをひたすら待った。