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メテオストライク 1/17

 テト地区小村マノでのトゥーバル兵との戦いのあと、レイたちはシエンナへの帰還を命じられた。トゥーバルの残党を追って南に向かった、ランス、ビルバ、モーラ、そして小村マノや、トゥーバルに占拠されていた村で、復興作業をしているルッカ、ロッカ。そんな皆と別れ、アルマーマ班長、レイ、ノア、トーブは、テト川を渡り、ゆっくりシエンナへ馬を走らせていた。


 アルマーマが亜麻色の髪を靡かせながらレイの横に馬をつける。


「レイ。あなた魔法使えるの?」

「!?」


 あまりに意表をついた一言にビックリしたレイは、馬の上でバランスを崩してしまった。トーブが「何? 何? 魔法がどうした?」と興味本位で近づいてくる。レイはそっと後ろのノアを見ると、ノアは小さく手を振って『知らない』とジェスチャーしていた。


「私が風の魔法を使った時、何度かフッと体が軽くなって魔法の力が(みなぎ)ったのよ」


 レイは、先の戦場でアルマーマを支えていたノアが、自分の魔力をアルマーマに注ぎ込んでいたの思い出した。


「本当は自分の力だって思いたいけど、……自分で言うのもなんだけど、さすがにありえない。レイ、なんかやったでしょ」

「いえ、俺は何も……」

「そうだよ。こいつが魔法使えるわけねえじゃん。ブル隊長仕込みの筋肉バカだぜ」


 レイは「バカは余計だ」と返しながらも、トーブの言葉に助けられたと思った。


「俺たち、筋肉ブラザーズ。ハハハハ」と笑うトーブ。

「私もそう思ってたわ」

「だろ、筋肉バカ」

「でも、私の推理がレイは魔法を使ったって言ってるのよ」


 レイが固唾を飲む。


「推理1、レイとノア。そう言えば、ここにくる前、図書館で魔法の書を見たいって言ってたわよね。許可がどうとかこうとか。魔法のこと調べたかったんでしょ?」

「あ、あれは、……俺は、ノースレオウィル出身で、どうしても魔法使いウィルの事が知りたくて」

「推理2、私の体に魔力が漲ったっとき、レイ、こっち見てたでしょ。真剣な眼差しで。あの時、なにかやったんでしょ。そう、魔力が(みなぎ)った時、必ずレイの視線があった。私も、ノアも、それに当てられたのよ、きっと。だから、あのあと2日間も憔悴して寝込んだんだわ」

「いや、え、それは……」

「推理3、これが決めてね。……レイは《《ド》》単純! この狼狽え方で確信したわ」

「……」


 レイが後ろをチラ見すると、ノアが残念そうに目を瞑って頭を振った。


「どう? 私の推理間違ってないでしょ」

「いや、え、えっと」


 狼狽えるレイに向かって、トーブが「許せねえな」と詰め寄った。


「あの戦いの最中に、アルマーマ班長が死力を尽くしていた最中に、そんな班長をガン見していたなんて許せねえ」

「トーブ、誤解だ。俺は何も」

「見てたわ。なんか心配そうな顔して、相当見てたわ」

「いや」と怯むレイ。

「なに〜!」怒るトーブ。

「ねえ、どうなの? 何か使ったんでしょ?」

「いや、何も」

「じゃ、なにか、何もないのに見てたのか?」

「トーブ、そうじゃない」

「じゃ、なんだよ!」

「……」


 ノアは、アルマーマとトーブに詰め寄られているレイを気の毒そうに思いながら、少し離れて馬を走らせた。


「いいわ、別に、言いたくないんなら。何か理由があるんでしょ。でもね、私の眼はごまかせなくてよ」


 アルマーマが馬の歩速を早め、引きつるレイから距離を取った。

 結局、レイの魔法も、ノアの魔法もバレることはなかったが、その後レイはトーブにネチネチと攻められた。

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