表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/88

訓練の日々 15 / 23

 もう一つ訓練で大きく変わったのは、担当教官がストラスブルだけではなくなったと言う事だ。ある時は、グレーンが担当教官となり、ロングソード(両手剣)の使い方を指導した。


 経験者のランス、ビルバ、そして怪力のモーラなどはスマートにロングソードを使いこなしていたが、他は皆、その重さや使いにくさに弄ばれてるような感じになっていた。特に小柄なノアは、子供がおもちゃの剣を振り回すがごとく危ない使い方をしていた。


「ウォリャー」


 とノアが剣を振り下ろすが、勢い余って地面に叩きつける結果となった。


「ノア、危ないぞ」


 と言ったものの、レイも主に習得していたのはソード&バックラーの技術だったので、ロングソードの使い方はうまくアドバイスをする事ができなかった。


「ロングソードは剣で防御をし、防御と同時に攻撃も兼ねる」


 ビルバが上段に構えた「火の構え」からロングソードを繰り出し語った。


「だから、常に次の返しを読み、反応しなくてはいけない、そして相手の力を利用した一撃をこちらから返す。レイ、私にちょっと、打ち込んできてくれないか」


 レイは突然のビルバの呼びかけに驚いたが、素直に従う事にした。

 レイがロングソードを上段からビルバに打ち込むと、ビルバは自分のロングソードを巻き込む様な感じで回転させ一撃を受け流し、その回転のままレイに一撃を返した。レイの頭上でロングソードが止まる。その後も、いくつか構えを変えてレイが打ち込んだが、ことごとく攻撃を受け流され、一撃を返された。


「と、まあ。基本はこんな感じだ」

「ふーん。おもしろいね。こうかな?」


 とノアがビルバの剣をまねて振り回しながら答えた。


「負けた私が、教えても仕方ないがな」

 

 ビルバはそう言うと自分の素振りに戻った。レイは、ビルバが入団テストでノアと戦った時にロングソードを使っていた事を思い出した。そして、何か声をかけたいと思ったが、なんと言うべきか思いつかなかった。


 ……トーブだったら、軽く適当な事を言うだろうにな。


「……あ、ありがとうございました」

「いや、礼にはおよばない。何か迷ってるのか? まあ、何かあれば遠慮なく聞いてくれ ……私は古い人間だからな。経験だけは積んでいる」


 ビルバはそう呟くと、再びロングソードを振りかぶった。

 レイはその言葉を不思議に思いながらも嬉しく思った。

 


 数日後、なぜビルバがいきなりレイに声をかけてきたのかが分かった。

 ブルブートキャンプの筋肉強化中、トーブに「何故、お前までやるんだよ」と言われた時に「考え事をしたくないんだ」と漏らした事があった。きっとそれが周りに広まったのだ。


「お前、また余計な事を言ったな?」


 と午前の訓練が終わったところでトーブに詰め寄った。


「ハッ? なんの事だ? 覚えがありすぎて良くわかんねえけど」

「……」

「それに、余計なことかどうかを決めるのは俺だよ。レイじゃない。俺だよ俺。そして、ここ一番重要! 俺の言葉に全て余計なことはない!!」

「……フッ、そう言えるのが凄いな」

「フン!」


 トーブは踵を返すと、スタスタと食堂に歩いて行った。


「でも、ありがとうな。トーブ」


 とレイが声をかけると、トーブは歩みを止めると戻ってきた。


「お礼はノアにいいな。一番心配してるのはノアだよ。さ、飯食おうぜ、飯!」


 




 昼食後、中庭にはどこかで寝ているモーラのいびきが響いていた。

 手前の木陰ではノアが寝転んでいる。その側まで食事を終えたレイがやってきた。


「寝ろ! ほら。そこ空いてる」


 とノアが目を瞑ったまま、横のスペースを指差した。


「トーブに言われたのか?」とレイは立ったまま問いかけた。

「何が?」

「……いや。その」

「なんか思い詰めてるみたいだったからさ」

「やっぱりトーブに言われたのか?」

「見てれば分かるよ」

「……」

「一緒に寝ろ。私にできるのはそれぐらい」

「それに何の意味がある?」

「迷いは、食って、寝て、忘れろ」

「……ノア、らしいな」

「そこ、空いてる。寝たら。ビック&スモール&ミドルってコードネームつくかもよ」

「……いや、それは遠慮しとくよ」


 コードネームって? それはコードネームなのか? とは言わなかった。


「辞めないでよ!」

「……」

「……辞めないで」

「……」

「まだ、借り返してないからね」

「……辞めないよ。やっと、居場所が見つかりそうなのに」

「……そう、よかった」


 ノアはまた、ゴロンと横になった。

 レイは広間に向かった。迷い、ではない何か、グラグラとした不安が、言葉にうまくできない自分の核の揺れが…… レイは頭を大き横に振った。いや、今は忘れよう。ひとまず見習いを卒業する事に集中だ。



 

 そんな日々が更に続いて行った。そして、訓練の最後になるが、レイがもっとも話した相手が寡黙なサンタンであり。持っているスキルで皆を驚かせたのもサンタンであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ