訓練の日々 12 / 23
ノアが寝そべったまま、手を振って、
「私、先に食べたよ。今日はフワフワのオムレツだったぞ」
トーブは「フン」と言ってレイの手を払い除けると食堂に向かった。
レイが全力で走りノアの元に駆けつけた。
「お前、大丈夫なのか? 隔離は?」
「ああ、確認取れたってさ」
「そ、そうか良かった」
レイは一息つくと、大きく息を吸い込み「トーブの奴、殴って来る」と言って食堂に歩みを進めた。
「やめときな」とノアが呼び止める。
「あいつ、お前をスパイ扱いしたんだぞ」
「つまんないよ。私は気にしない」
そう言うとノアはゴロリと木陰に寝転がった。
「いや、俺は気にする」
そう言って、向こうへ行こうとするレイに向かってノアが
「やめな! ……レイだってそうだろ。そうやって息を切る程走って来るなんて、私を疑ってたんだろ」
「それは、そんなんじゃない! あの証明書をみたらそりゃ……」
「悪かったね。ガサツで」
「……あの汚れは血だろ」
「……」
「それに何で魔法を使える奴がノアには分かるんだ?」
「……」
「ノアには不思議な所が多すぎるんだよ。……だから、」
ノアが体を起こし、レイの話を遮る様に言った。
「ほら。なーんだ、結局レイも私の事、疑ってたんじゃないか」
レイは、鼻息荒くノアに近づくと、胸ぐらをつかんで強引に立たせた。
「ちょ、な」と驚いたノアは、「何だ、やるのか!」と身構えファイティングポーズを取った。
しかし、レイは何も喋らなかった。無言の間が続く。そして視線はずっとノアを見据えていた。
「何だよ離せよ」とノアが身じろいだ。
レイは腕に力を込めノアを引き寄せた。
「同志だろ」
「……」
「俺は、何かあったら。ノア、お前に背中を預ける」
「……」
「……そう言う事だ」
レイは、そう言うとノアを離した。
「つまんねえ事じゃねえ。俺にとってはな」
レイはそう言ってトーブのいる食堂に向かった。