訓練の日々 7 / 23
ディックが半身の体勢でダガーナイフを構える。
「まさか、シエンナの隠密か?」
「……」
「チッ、もうそこまでバレてたのか、クソっ」
ラクフがサッとしゃがんだと思った次の瞬間、砂をつかんでディックの顔に投げつけた。そのまま低い姿勢で刺突を放ち、そして切り裂くようなを連撃を繰り出した。ディックは後退しながら、何とかその攻撃を躱した。
「靴に仕込みがあるぞ、気をつけろ!!」
クレテイスがディックの後ろにやって来ていた。
「クソッ、ここまでか!」
ラクフはそう吠えると、背を翻して宿舎の方へ駆けて行った。
「追え!!」クレテイスの声と共にディックが風の様に走りその後を追う。
ラクフの後ろ姿を見ながら、ディックは「最初に仕留め損ねるとは、とんだ失態だ」と思っていた。
宿舎に駆け入って来たラクフが、自分のベットから鞄を引っつかんだ。皆、何事かと騒めきだち、ベットで横になっていたレイも驚いた。
「な、どうした? ラクフ」
「レイ、お前とは本当にもう一度やりたかったぜ。本当の殺し合いをな」
すぐに駆け入って来たディックが大声で叫ぶ。「そいつに近づくな!!」
ラクフはレイに向かってフッと笑うと、窓の木扉を蹴破って外に出て行った。その後をディックがすごい勢いで追っていく。




