表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/88

訓練の日々 6 / 23

 医務室のランプの光が揺らめき、静寂の空間を揺らす。

 ベットには腹を出してラクフが寝ていた、クレテイスが腹をゆっくり押していく。


「どの辺だ痛いのは?」


 クレテイスの声が乾いた石壁に反射する。


「そ、その辺が」

「ラクフとか言ったか? 張りはないようだ、脂汗もかいておらんし、吐き気もないのだろう。なら、これを飲んで寝ていろ。それでも、治らぬ時は、もう一度来い」


 クレテイスが瓶から丸薬を取り出し、ラクフの手に乗せた。

  

「はい、分かりました、へへ」

「それと、もう一つ、ここには武器を持ってくるな」

「へっ?」

「護身用か何か知らんが、ここは私が守っている。武器は不要だ」

「……」

「それとも何か? 他の理由があってここに来たのか? 靴の仕込み、ベルトの変形ナイフ、他にもチュニックの下に何か隠し持ってるな。 私を甘くみない方がいいぞ」

「いやいや、そんなそんな、ハハ、失礼しました」


 ラクフはそう言うと慌てて医務室を後にした。

 フーと溜息をついた後「まったく大したもんだ」と呟やくと、数歩あるいて「やっぱり俺か」と言って立ち止まった。


「出てこい、いるのは分かってるんだ」


 木の影から、スッと人影が現れた。


「コソコソ動いてたのは分かってたんだ、誰をつけてるのか分からなかったから、一人になる時間を作ったんだが、やっぱり俺か」

「……」

「ディックとか言ったか?」


 人影が動く、そこにはレイと初戦に戦った男ディックがいた。


「何か俺に恨みでもあんのか?」

「……」

「どこの者だお前? どうせ復讐だろ」


 ディックは何も答えず、ただラクフを凝視していた。


「フッ、恨まれる覚えがありすぎて、お前が誰か分からねえが、俺の素性を知っちまっちゃんじゃ生かしておけねえな。まったく、面倒くさい事になったもんだ、お前ぐらい殺すのは訳ないが、さて死体をどうするか?」


 ラクフは腰のベルトから蛇腹状の刃物を抜き出すと、ヒュッと素早く振って1本のナイフにした。

 ディックも背中、腰の鞘からダガーナイフを抜いて身構えた。


「やるきかい? 入団試験の時の太刀筋を見たが、まるでなってねえ。良くそれで復讐しに来れたもんだな」


 ラクフは浮くような足捌きでふわりと間合いを詰めたかと思うと、今度は一転鋭い刺突を繰り出した。ディックのチュニックが裂け、突き刺さったかと思われた一撃だったが、ディックはすんでの所で身を躱し、逆にダガーナイフの刺突を繰り出して来た。


 ラクフは身を逸らして避けると同時に、今度はナイフを振ってディックの首筋を狙った。しかし、またすんでの所で躱され腕を巻き取られ関節を極められた。


 痛みに「クッ」と声が漏れたが、そのまま関節を人とは思えぬ方向に方向に曲げ、拘束を逃れると、離れぎわにナイフの一撃を放った。掠ったディックの頬から血が滲み出ていた。


 相手の力量、動きに驚いたのは互いにだった。牽制し合うように間合いを取る。


「お前に恨みはない」とディックが言った。

「なに?」

「予定外だがしょうがない、ラクフ、今お前を拘束する」

「な、何だお前!?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ