【謎の二次創作】「オレは武士になる!」と息子が言い出したのは、なろう小説『武士がいる』を読んだ影響らしい。
長埜 恵様作品『武士がいる』(https://ncode.syosetu.com/n7541fs/)をパロディした二次創作です。
未読でも読めます。
似た感じでやってみました。
くすっとなっていただければ幸いです。
「武士になる」
進路希望の提出用プリントがリビングに落ちてたから、床に転がってる息子に渡したんだが。
いや、お前、武士になるって。
「それがし、武士になるでござる」
キャラ付け適当だな。
なんで武士?お前、歴史とか全然好きじゃないだろ。
今、手に持ってるのラブコメ漫画だろ?
「ちょんまげになって、リラックマのTシャツを着るでござる」
それ、ただのやべー奴じゃん。
いいから言ってごらん。何を読んだ。
「……これ」
素直にタブレットを差し出してきた。
何これ?小説読めるサイトなの?
無料。へー、こういうの読むんだ、息子よ。
「コミカライズされた漫画の原作がここで読めるから……」
おい、武士の口調はどうした。
「にんにんでござる」
それ、違うから。
まあ、とりあえず読ませてもらうから。進路希望の話はその後な。
「うむ。かたじけない」
なんかカタコトっぽいんだよなぁ。
とりあえず、今日明日と休みだからと普段は使わない和室に座布団を敷いて、ごろごろと読み始めた。
パソコンで目が疲れてるのに、休日にタブレットって……ああ、なんだ。設定で文字が大きくなるんだな。はいはい。
息子が読んだという小説を読み始める。
おいおい。目次から"コメディ"って書いてあるぞ。
歴史関係ないな。これ。
えーと。
つまり、なんだか分からないけど、江戸時代からタイムスリップしてきたちょんまげ結った自称・武士とのドキドキしない男同士の生活が綴られている話だった。
いや、面白いよ。
武士が江戸時代とのギャップにわたわたしたり、案外馴染んだりしていて、面白いよ。
面白いんだけど。
………息子は、ニートになるつもりなのか?
武士、働いてないだろ。
ごろごろしたり、外で筋トレやって不審者扱いされて職質くらってるだけだろ。
え?
体操のお兄さんになりたいのかな?
息子、ちょっと夕飯前に話し合いが必要なようだな。
「父さん、読んでくれた?」
うん。読んだ。読んだけど、お前、これ、ニート……
「その人の書いた別の話が書籍化するんだ!」
は?
「こういう感じの文章なんだけど、父さんでも読めるだろ?すげーよな!」
いや、お前、武士に……
「うん、そんくらいに自由な気持ちで高校を決めようかと思って」
へ?何?行くところ決めてるの?
「単位制で、私服登校するここの学校なんだけどさ」
うん。
「交換留学生とか、やってるんだ」
へー。
「オレも、もしかすると留学行きたいってなるかもしれない」
おー、なんだお前、英語できるの?
「一応は。でもみんな出来るよ。今は話したり聞いたりする方に特化した学習になってるから」
へぇー。
「それで、お金かかるけど、この高校を志望してもいいかな?」
なんだよ。予想以上にしっかりしてたよ。
いーよいーよ。いや、簡単じゃないけど、頑張って働いて、節約するよ。
「ありがとう、父さん。オレ、バイトする」
まぁ、無理すんなよ。出来る範囲でやればいいから。
「うん。あと、この人の本出たら、買っていい?」
いや、まぁ、いいけど。
「父さん用とオレ用と布教用で3冊」
……いや、そんなにいらない。
「紙の本での売り上げって大事なんだ」
何そのキラキラした目。わからないけど、わかったから、買っていいよ。
じゃあ、まぁ、受験勉強頑張れよ。
「うん!父さんありがとう!」
嬉しそうな顔しやがって。
あいつも大きくなってんだなぁ。
なんだか、息子の成長を感じるものなんだなぁ。
はあー。なんだか酒でも飲んで祝いたい気分だ。
最近、疲れていたから酒も何も買ってなかったなぁ。『武士がいる』を読んでたら、体も休めたし、ちょっとコンビニまで歩いてくるか。
あ、息子に何か買うものあるか聞いてみるか。
息子の部屋なんか久しぶりだな。
なんだか照れ臭いな。これが父と息子の感じか。
気恥ずかしいなと思いながら、息子の部屋のドアを開けると、
「やったぜー!これで金髪女子と出会えるぜー!ヒャッハー!」
スマートフォン片手にジャンプしてる息子がいた。
おい、息子。
お前の本当の進路希望は、なんだ。
言ってみろ。
「………金髪美女と付き合って、エッチなことしたい」
息子の成長を実感したので、とりあえず男同士の会話に必要な拳を叩き込むことにした。