15~16話
15
シルバは以後もずっと、ジュリアの蘇生を試みていた。しばらくすると、白色の衣服で四肢を覆った三人の救護隊が現れた。一人がシルバに事情を聞きつつ、残りがジュリアを担架に乗せる。
その場を後にしようとする救護隊に、シルバは早口で同行を申し出た。
が、「君が来たって何もできない。私たちが誇りに懸けても命を繋ぎ止めるから、あいつらをやっつけてくれ」と最年長の隊員に諭されて、シルバは呻くように返事をした。
救護隊は向き直り、きびきびと走り去っていった。
呆然とするシルバの耳に、殴り合う音や荒々しい命令の声が届き始めた。我に返ると目の前で、ジュリアを襲った者だろうか、一人の黒服が仰向けで伸びていた。
シルバは視線を遠くに遣った。黄組のスタート地点に至る大通りでは、二人の黒服が背中合わせに立っていた。びしりとした上下の手刀の構えは、見事なまでに左右対称である。
二人の付近には、自警団を含めた八人がいた。ただそのうちの三人は倒れており、苦しげに身を捩っていた。
ゆっくりと回って、シルバは周りを確認した。一人、二人、三人、四人……。
至る所に黒服がおり、人々が取り囲んでいた。だが最初に見た戦場が最も手薄に感じられた。
意を決したシルバは走り出した。だがジュリアがやられた光景が脳裏に焼き付いており、思考に霧が掛かったような心境だった。
視線の先、二人の黒服は同時に動き、瞬く間に同数の自警団が地面に叩きつけられた。
16
戦闘は、苛烈を極めた。阿鼻叫喚の地獄の中で、黒服たちは無尽蔵に突き、殴り、跳ね、走り、去なし、打ち、避け、押さえ、回り、投げ、蹴り続けた。
何の格闘技も感じさせない動きに、人々は次々と倒れていく。だが黒服たちは、ほぼ全員が健在だった。
シルバはずっと、ジュリアの昏倒後に乱入した場所で戦った。二人の仲間との共闘だったが終始、押されがちで、意識は朦朧としていった。
どれほど経っただろうか、爆速ダッシュの後に黒服は右足で跳んだ。左脚を直角に上げてぐるぐると回りながら、シルバの仲間の青年に向かっていく。
疲労困憊の青年は、一歩も動けずキックを食らった。受け身も全く取れずに、ごろごろと真横へすっ飛んでいく。
(……! 何だ、そりゃあ! でたらめにもほどがあんだろ!)
シルバが戦慄していると、すたっと着地した黒服たちの胸の球が赤く明滅を始めた。ピコン、ピコンと、規則的な高音までしていた。
点滅開始からも、交戦は続いた。黒服たちの戦法はいよいよ滅茶苦茶で、スキップのような動きまで交えてきていた。
一分ほどが経ち、黒服たちはすっと構えを解いた。
両手を後ろに振って膝を曲げると、大きく跳躍。流星のような勢いで、バシュウ! 遥か空へと飛び去って行った。
四方八方で、黒服たちの飛翔が続いていた。辺りは一瞬で静かになった。
しかし誰一人として歓声を、上げる者はいなかった。果てしない疲弊感と唐突な大襲撃の混乱とが、国中を包んでいた。




