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舞台装置は闇の中  作者: 彼方灯火
第4章
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第37話 再度外出

 一日に何度も外出するのは、月夜にとっては珍しい。外出というのがどこまでを対象にするのか分からないが、少なくとも、玄関のドアを何度も潜ることは、月夜の私生活の中ではそうないことだった。


 フィルが向かおうとした先は、彼女の家に隣接する公園だった。隣接といっても、本当に隣にあるわけではない。隣にあるくらい近く感じられるという意味だ。


 その公園は先ほど真昼と向かったものほど広くはないが、子どもが遊ぶには充分な広さで、この辺りのものでは中規模だといえる。遊具の類も色々設置されていて、中でも目を引くのは、恐竜の形をした一際大きい遊具だった。吊橋とうんていと滑り台が一つに纏まった構造をしており、それら三つの要素を組み合わせることで、上手く恐竜の形を表現している。


 形は、やはり、それを作る要素がなければ成り立たない。


 しかし、形を見るときには、それを作る要素は無視される。


 どういうメカニズムなのだろう?


 時間帯のせいか、今は誰もいなかった。休日だからもう少し人がいても良いような気もするが、もともと辺鄙な場所なので、人口もあまり多くなく、子どもの割合も大きくない。自分と同い年の人間がこの辺りにどれくらいいるのか、月夜は知らなかった。


 グラウンドの先には小規模な山がある。そこだけ土地が隆起して山のような形になっている。明確な道はないが、斜面を登れば頂上まで向かうことができる。フィルの脚が泥で汚れていたのは、ここを歩いたからみたいだった。


 フィルは一人でひょいひょいと斜面を上っていく。月夜はそう簡単にはいかなかった。フィルみたいに、四つん這いになればもっと簡単に上れるようになるかもしれない。体重は四つに分けられて、それぞれの手脚が負担することになるから、全体的に負担は分散されるようになるだろうか。


「神社に何か用事?」


 先を行くフィルに向かって、月夜は質問した。彼女は少し息が上がっている。運動を始めて暫くは呼吸が乱れるのが常だった。そういうところを見ると、やはり彼女にも人間らしい性質が備わっているといえる。


「何も用事がなければ、こんな所に来ないさ」フィルが答える。


「散歩なら、どこにでも行くんじゃないの?」


「今日は散歩じゃないんだ」フィルは少し笑ったみたいだった。「三歩以上歩いているからな」


 山の頂上には神社がある。月夜も以前行ったことがあった。


 そして、そこには、その場所を統治する、管理者が棲んでいる。

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