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8話 魔王城へ

――魔王城 内


 魔王城……とは言うが城がボロボロに壊れており、城跡と言う方が正解に近い状態だ。

 魔王が死ぬ瞬間、どうせなら貴様も巻き込んで! という感じで大爆発したそうで……。

 その時に城がほぼ全壊してしまったようだ。

 よく生きていたなお父さんよ……。


――スッ


 お父さんは半壊した玉座の横に花を添え、手を合わせた。


「お父さん、何してるの?」

「丁度今日……魔王を倒してから5年が経つんだ」


 私は敵だった魔王なんかに、花何て添えなくていいのに……って思ったけど、それを言うのは野暮な気がして黙っていた。

 戦って、倒した当人にしか分からない事なのだろう……。

 しばらく黙祷した後、お父さんは静かに立ち上がった。


「さ、待たせたね。折角だし少し周囲を見て回ろうか」

「うん!」



・・・

・・


「そのまま大人しくしていろ!」


 こんな静かな場所で、怒号の様な叫び声が聞こえた。


「こっちだな……」


 お父さんと私はそれが気になり、駆け足で声のする方へと向かった。


・・・

 

「あれは……」


 玉座のあった場所から少し離れた場所、保管庫の跡地に人が複数名居る。


 よく見ると、兵士が3人いて、何かに対して槍を突き付けている。

 お父さんはそれを見た瞬間、一瞬で兵士の元へと駆け寄り槍を抑止させた。


「お父さん……はや……!」


 少し遅れてみなももその場に到着。

 兵士が槍を突き付けていたのは、何と小さな子供だったのだ。


「勇者様! 退いてください。危ないです!」

「落ち着いて。何をしているんだ? 子供に槍を向けるなんてとても放っては置けない」


 子供が小さくなって震えている。


「勇者様よく見てください。頭の角を!」

「……」


 お父さんは再度子供の様子を見た。

 兵士の言う通り、確かに綺麗な紫色の髪の間から小さな牛の角が右後頭部に生えている。


「これは……」


「頭に魔物の角がある! こいつは魔物です! 今のうちに殺さなければ大変な事に!」


 兵士は大声を上げた。


「そんな! 小さな子供なのに駄目だよ!!」


 みなもも兵士と子供の間に入り込み、守る体勢になった。

 すると、小さな子供は立ち上がり、みなもの後ろに抱きついて隠れた。


「大丈夫だよ。お姉ちゃんが守ってあげるからね!」

「何を言ってるんですか! くそ……仕方がない!」


 横側に居た一人の兵士は、意を決したように槍を構え、思いっきりみなもの後ろに隠れている子供に向けて放った。


――バシュッ!!


「な! 勇者様!?」

「こんな子供一人で何かを出来る訳がないだろう」


 お父さんは素手で槍を掴み、手で粉々にした。


「君……一人なのかい?」


 お父さんは子供にやさしく話しかけた。

 子供はみなもの足の陰から小さな声を出した。


「ずっと一人……」


「成程……こんなところで一人は大変だろう。うちにおいで」

「勇者様!?」

「……」


 子供はその問いかけに無言だ。

 そして、みなもの顔をじーっと見ていた。


「来なよ! 一人じゃ寂しいでしょ?」


 みなもがそう言うと、子供はお父さんに向かって小さく頷いた。


「これなら問題ないだろう? 何かあっても私が責任を持つ」

「ゆ……勇者様がそばで見てくれているのであれば……」


 兵士たちは動揺しながらも顔を見合わせ、武器をしまった。


「じゃぁそう言う事だ! 一緒に帰ろう!」

「うん! おいで!」


 子供はみなもと手を繋いでその場を後にした。

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