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7話 私の能力

――翌朝


「おはようみなも」

「あ、お父さん帰ってたのね! お帰り!」

「ああ、ただいま」


 お父さんは先に朝食を食べていた。

 いつ帰ってきたんだろうか……見る限りは元気そうである。

 そのまま私も朝食を頂いた。


・・・

・・


「じゃぁそろそろ行こうか」

「勇者様どうかお気を付けて」


 朝食を頂いた後、私達はすぐに出かける支度をした。


「ありがとう。さ、みなも行くよ!」

「はーい」


 そうして私は、お父さんと一緒にエルフの国を後にした……。


「ところでお父さん。何処へ行くの?」


 私達は来た門とは正反対にあった門から出て、真っ直ぐに歩いている。


「魔王城だよ」

「魔王城!? まさか魔王が復活したとか……!」


 私は割と真面目にそう思った。

 そんな私はお父さんは笑った。


「あはは、そんな訳ないよ」


――ガサガサッ


 突然茂みが大きく揺れて、何かが飛び出してきた。


「ミー!」

「な! 魔物!? でも……」


 バレーボールほどのサイズで、見た目がふわっふわの毛玉が現れた。

 毛の奥には二つの黒い目が見えている。


「か……可愛いッ!!」


 私はそのもふもふに引き寄せられるように近づいた。


「みなも、近づかないで! 見た目は凄く可愛いけど、狂暴なんだ。人が近づくとすぐにタックルを……」

「え?」


 お父さんがそう言った時点で、私は既にこの毛玉も目の前に居た。


「めっちゃおとなしいよこの子!」

「ミー ミー ミー♪」


 すると、毛玉はまるで歌うかのように鳴きはじめ、フリフリとダンスを始めた。


「あはは可愛いー! お父さんなにしてるの? この子」

「えっと……初めて見るけど、求愛ダンスだね……」

「求愛ダンス!? すごくキュート!」


 みなもは毛玉をぎゅっと掴んだ。


「ミー!」


 毛玉はとても嬉しそうにしている……。


「こんな事……異常だね。魔物が人に求愛行動をとるなんて……」


 毛玉はみなもから飛び出し、もう一度ダンスをし始めた。

 が、その時……


「ガァァ!!」


――バクッ


「いやああああ! 毛玉が大ガラスに食べられたぁぁぁ!!」


 みなもはそのカラスと目が合った。

 ギラリと光る黒い瞳に、私は恐怖した。


「怖い……お父さん……」


 そう呟いた瞬間、大ガラスはみなもに襲い掛かろうとした。


――ザシュッ!!


「え……?」

「大丈夫か? みなも」


 一瞬目を閉じた瞬間、大ガラスはバラバラになって消えていった。


「もう大丈夫だよ。毛玉が懐いたからもしかしてカラスも……って思ったけど襲ってきたね……ごめんなみなも」

「ううん! 全く怪我もしてないし助かったよ! ありがとう!」


 お父さんは心配そうに私が怪我をしていないか確認していた。


「良かった。もう失敗はしないからな。安心してくれ」

「うん……!」


 剣を構えたお父さんの姿……めちゃくちゃかっこよかった……。


「にしても、魔物が急に、人に懐くなんて初の出来事だよ」


 私はその事象には心当たりがあった。


「あー……多分これのせいだよお父さん」


 そういって私は1枚の紙を渡した。


「これは、貰う能力を書いた紙だね」

「うん……」


 お父さんは手渡された紙の文字を見た。


「あれ……イケメンからちやほやされモテモテになりたい(魔物)……?」


 お父さんは魔物という字に違和感を感じているようだ。何故こんな願いを? と。


「神様に文字を追加されたの……」

「あら……これもう一度決まったら変えられないからね……父さんも勇者の能力なんていらないって言ったけど変更できなかったし……」


 お父さんはそんな申し訳なさそうな表情で話した。


「がく……」

「まぁでもそのおかげで魔物に襲われなくて済むね!」


 お父さんは精一杯のフォローをしてくれたが、私の気持ちは少しブルーだ。でもカラスには襲われたよね……?


「でも、大ガラスには襲われそうになったよ?」


 大ガラスは間違いなく魔物だ。


「あ……確かに。何でだろう……イケメンじゃなかったからかな?」

「そう言ったら毛玉もイケメンとは……可愛かったけどさ~」


 お父さんは少しだけ考えこんだ後、私に質問した。


「ふむふむ。みなも、大ガラスをみてどう思った?」

「その時は怖い! って思ったよ!」

「成程……」


 お父さんはさらに考えこんだ。

 そして、はっと閃いたように口を開いた。


「もしかしたら、可愛いとか良い印象を持った魔物は懐いて、怖いとか嫌いっていう様な感情を持った場合は、効果が無いのかもしれないな……」

「えー! まぁでも嫌って思った奴にはモテたくないもんね……あながち間違ってないかも……?」


 そんな会話をしながら、二人は魔王城へと到着した。

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