61話 家捜し
――グートの自宅
「お邪魔しまーって汚いっ!」
「うるせーよ。だから明日にしろって言ったんだ」
グートの家……と言うか第一神国学園の寮になるのだが……。
寮というには広すぎる……庭付きの家である。
同じような家が綺麗に並んでいる事から、第一学園の生徒は皆この寮に住んでいるのだろう。
早速私は扉を開け、中に入ると同時に第一声は汚いだったのだけど……。
「でも汚いって言ったけど、ゴミとかじゃなく……これ全部本とかよね?」
「そうだな。飯は外で食べるし、家でやる事と言えば本を読むくらいだ」
この家はあまり生活感を感じない。どちらかと言うと本が多すぎる図書館というか……古本屋さんみたい。
にしても、グートはこんなに読書をするんだね……。
「なんかイメージと違うよ……」
「は? どんなイメージだよ。とにかくここから探さないとダメなんだ。多分こっちサイドにあるとは思うけどな」
グートはそう言って、東側の本の山を指した。
「うへぇ。この中から探すのね……!」
「……買った方が早いかもな」
「ダメだよ! グートの本を借りたいの!」
「それってどういう……」
「グートは思いの外真面目だから重要な所にマーカーとかしてそうだし!」
「……そういう事かよ」
「うん? どうしたの?」
「なんでもねえよ! さっさと探すぞ!」
二人は熱心に本を探す……
「え! ねぇこれって家族写真?」
「そうだよ! てか探せよ!」
・・・
「あ、これ懐かしいな……そういえば途中で読むのをやめていたな……」
「グートぉ……! まだ半分じゃない! それ読むのに数日かかるよ!」
こんなやり取りもしつつ……。
「あったぁー!」
二人はようやく目当ての本を探し出した!
時刻は既に夕方である……。
「グート! 本当にありがとう! これで私も頑張るよ!」
「ああ、一応応援してやる。自主勉強で受かったら大したものだぞ」
「うん!」
――グゥ……
すると、私のお腹が小さく鳴った。
「もう夕食の時間だもんな。学園の食堂がまだ空いてる。食っていくか?」
「え! 部外者も入れるの?」
「ああ、一般人にも開放してるな。代金はもちろん掛かるけどな」
「行ってみたい―! 私、学食とか憧れてたの!」
「そうなのか? ただの飯屋と変わらないぞ」
「ん-ん! そんな事無いよ!」
私は結局ほぼ高校に行っていない!
学食は未経験なのである!
「早速行こうよ! お礼に私が奢るよ!」
「ああ……まぁ第一生徒は無料だけどな……」
「ええ!? 羨ましいなぁ」
そんな会話をしながら学食へと到着した。
この寮からは徒歩15分くらいの場所である。
「結構混んでるんだねーというより、思ってた学食と違うな……!」
「そうなのか? ここしか知らないから他はわからねーな」
私が想像していた学食より遥かに綺麗で豪華な場所だった。
席が設置されている場所ははカタカナのロの字になっており、中央部分には綺麗に手入れされた池付きの庭園が広がっている。
照明も優しいオレンジ色で水晶が散りばめられた物を使用している。
「この時間はやっぱ混んでんなぁ。お、あっちが空いてる。行こうぜ」
グートに連れられて、開いている席に腰を下ろした。
「ふー。今日初めてまともに座ったよ」
「そうだな……結構疲れたな。てか俺腹減った! みなも、何食べるか早く決めてくれ!」
そういってグートは私にメニュー表を渡してきた。
「え! グートはもう決まってるの?」
「おう。いつも食う奴があるんだ」
「どれどれ?」
私はグートに近寄りメニュー表を開けて見せた。
「みなも……近いっての。これだよ、凄く美味しいんだ」
そういってグートが指したのは、
"グリーンスネークのから揚げ定食"
だった。
「グリーンスネーク……!」
「みなもも食ってみるか?」
「あ、うーん……とりあえず私、焼きウッドミール定食にするよ!」
グリーンスネーク……先生が美味しいって言ってた蛇だね……!
「よし、早速注文してくる! ここで待っていてくれ」
そういってグートは足早にカウンターへと向かった。
・・・
「ほら、持ってきたぜ!」
「わぁ有難う! ってお金はいつ払うの?」
「ん? もう払ってきた」
「ええ! いくらだったの!」
「いや、いいって。俺いつも無料だし!」
「そんな……本まで貰ったのに悪いよ……」
「まぁお前が合格した時、お礼は貰うよ。さぁ食おうぜ!」
「有難うグート……!」
そうして二人で食事を楽しんだ。
(これ……なんだかデートみたいだね……!)
何だか照れくさくなったみなもであった。




