54話 順調に
「ふう……やっといい感じのバランスになってきたな」
「ごめんねグート……私、魔力の量を調整したりするの今日が初めてでよく分からなくて……」
「でも最終的にこうやって出来るようになっただろ? 良かったじゃねーか」
(つーか、みなもの魔力量が多すぎるんだよな……どうなってんだよ。最初一緒にやってるのに黒色の葉しかつかねーし、必死だったっての……)
グートは上を向き葉を眺めた。
(俺の葉は水色寄りの青で少し薄いが……みなもの黒は本当に真っ黒だ。濃度が恐ろしく高い……量だけでなく、質も良い証拠だ)
「こうやって2色の葉っぱが散りばめられて……すごく綺麗だね! 私、色の混ざった葉がつくと思ってたよ!」
「俺も初めてやったからどうなるか分からなかったけど。これはまぁ、ありだな」
黒と青色の葉が散りばめられ、幻想的な雰囲気を作り出している。
葉が風に揺られ、月の光が差し込む様はずっと見ていられる。
この間、二人の手は繋がれたままだった。
ハッとグートが気づいてすぐに離したが……。
「とにかく今日はもう遅い! シアたちもとっくに帰ってるし俺達も勇者の家に戻ろうぜ」
「うん!」
そうして二人は家に戻る事にした。
・・・
「皆、今日はお疲れ様」
「いや~久しぶりにあんなに身体使った気がするよ」
「先生もですよ。良い運動になりました」
私達は家に戻り、早速食事をしている。
いっぱい動いた後のご飯はいつもより美味しい!
「このチャーハン……何だか身体が凄く回復する感じだね。凄く美味しいよ!」
「そうだな……こんな美味い飯初めて食うぜ……これ、魔力の葉が入っているのか?」
グートもご飯を凄く食べている。そういえばガウレスの手料理は初めてだったかな?
「グートさん、よく気がつきましたな! その通りですぞ。魔力の葉は微量だが魔力の回復を助けてくれる効果があるんじゃ。まだまだおかわりもある! いっぱい食べてくれ!」
「ガウレス! シアもおかわり!」
「いい食いっぷりですな! シア様のはこっちですぞ!」
そういってガウレスはシア専用甘々チャーハンを山盛りにして渡した。
ガウレスも見る限りはすっかり元に戻ってる。本当に良かった。
「お父さん、明日も作業するの?」
「いや、今日で大体の準備は出来たから、残りの部分は業者さんに頼む予定だよ」
「そうなの?」
「父さん達だけであの作業をしてたら何カ月もかかっちゃうからね。今日やったのは全体のイメージを作る為のモデル作成って所だね」
「なるほど~。私達の作ったイメージで業者さんに広げて行ってもらう感じなのね」
「うんうん」
「グート君もすっかり手伝ってもらって……本当に感謝しているよ」
「良いんだよ勇者様! 出来上がりが楽しみだな!」
グートも文句言わずにずっと手伝ってくれた。
最初会った時はもっと嫌な奴だったのにな。
本当に感謝だね!
「さぁ追加のウッドミートですぞ! どんどん食べてくれい!」
ガウレスが運んできたのは、漫画でしか見ないような大きな肉だ。
「お! 俺、ウッドミート好きなんだ!」
「ウッドミート?」
「血肉樹の幹だよ!」
血肉樹
木の幹に程よい弾力のある樹木。その幹はまるで肉の様な性質を持ち、焼いて食べると美味である。
だが、枝と葉はとても鋭利で危険。触れるとすぐに出血してしまう。
ウッドミートとして販売されている。
「葉と枝は危険だが、ナイフやピックの代用としても使える。遭難した時にはまずは血肉樹を探すくらいだ」
「ほえ~食べられる木があるんだね!」
木を食べるなんて初だよ……
恐る恐る食べて見たが……
「何これ美味しい!! 木とは思えない……!」
表面は木の表皮がパリパリに焼けてて普通の肉よりパリッと感がある。
だけど中身はとても柔らかくてジューシーだ。
こんな肉……木だけど食べたことない!
「やば、これ私も好きになりそう」
「シアもこの木は好きだぞ!」
普段甘い物しか食べないシアもこの木は好物のようだ。
「さ、勇者様、クリウェさん……ウッドミートにはこれが合いますぞ」
「これは……いいワインですね」
「ワインか。久々だね」
「仕事終わりの酒は最高ですぞ! ささ……」
そうしてガウレス、お父さん、先生の晩酌も始まったようだ……。
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