53話 苗木植え
「たこやき。いっぱいたべろ」
シアはたこやきに魔力の葉をもりもり食べさせている。
「ある程度食べさせたら、その辺たこやきをうろうろさせてくれ!」
「わかった! いくぞたこやき!」
「ぷるんっ」
そういってシアとグートはその辺を散歩し始めた。
「強いスライムが通った場所は、魔力の木が育ちやすい土壌になるんだ。更に魔力の葉をいっぱい食べさせることで、通った場所周囲に魔力の木の元を植えてくれる」
「ほ~」
たしかに、たこやきが通った場所はかすかに光の粒子を帯びて綺麗な土に変貌している。
「魔力の木は、スイショクの木程早く育たない。でもたこやきの土壌が合わさると2~3日で生えてくるだろうな」
「どちらにしてもすごく早い成長なんだね……!」
「たこやきが居てくれたからな! 本来なら数年かかるぜ?」
「たこやきさまさまね!!」
「さ、とりあえず俺達はスイショクの木を植えよう」
「はーい!」
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―― 一方勇者たち……
「勇者様……岩場を設置した後に気温を変化させればよかったのでは……?」
勇者とクリウェは汗だくで土を掘っている。
「ああ……失敗したよ……しかもこの球変更効かないし……」
「その……神様にもう一つ貰えないのですか?」
「多分言ったら用意してくれると思う。でも……」
勇者は目を瞑り、何かを思い出して身震いした。
「いや、これで頑張ろう……」
「勇者様がそう仰るのであれば……」
「……もうあんな恰好になるのは御免だ……!」
(勇者様……一体神様に何をされたのでしょうか……)
「二人とも! 吾輩に任せて休んでくれてもいいんじゃよ!」
ガウレスは上半身裸になり、活き活きと整地している。
以前より元気というか……活気を取り戻しているようだ。
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――スイショクの苗木植え中のみなもとグート
――バサァ!
「うわ~思ってた以上に漆黒色の葉だ……」
「凄いな……まるで木炭の色だな」
二人は1枚の葉を採り、眺めていた。
「この葉の色ばっかりになると森が暗くなっちゃいそうだね……」
「まぁ仕方ねーよ! それはそれで綺麗かもしれないぜ?」
「……そうだ!」
私はある事を閃いた!
「何だよ? いきなり大きな声を……」
「グートと私、二人で一つの苗木に魔力を込めてみようよ!」
「……なるほど」
「青と黒色……どんな葉っぱになるかなっ!」
グートは腕を組み少し頭を悩ませた。
「二人でやると込めすぎちまうかな? 込める量も合わせないと偏っておかしくなるかもしれないな……」
「ん~。なら、こうすれば良いでしょ?」
私はそう言って左手でグートの右手を握った。
「な……ッ! お前何して……!」
「これで両手に魔力を込める! で、繋いだ方でお互い何となく魔力の量を感じるでしょ? それでバランスをとるの!」
「た、たしかにそれが合理的だろうけどよ……!」
グートの頬は赤くなり、手も何だか暖かくなっている。
「合理的なら、これでやってみようよ!」
「あ……ああ、わかったよ! (くそ、人の気も知らないで……)」
そうして早速目の前の苗木に二人で魔力を込め始めた。
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