43話 扉の先
――深淵のダンジョン 最下層 手前
「さぁ、ここから何が起きるか分かりません。先生から離れないで下さい」
「ここが最下層……」
先生は目の前の岩壁に触れた。
すると、岩壁は音を立ててゆっくりとずり落ちて行った。
その部屋から出ると、一本道の通路に出てきた。
左には上に向かう階段があり、右を見ると奥の方に大きな扉がある。
順当に行くと左の階段からこの場所へと来るのだろう。
私達は先生を先頭に、扉の方へと向かって行った。
・・・
「この扉の先が異色の門がある部屋です……」
全員に緊張感が走る。しかし、あまりにも静かなこの場所で、本当にお父さん達はいるのだろうか……。
「では開きますよ」
そうして先生が扉に手を触れた時だった。
「う! なんだ、眩しいっ……!」
扉から目を開けてられない程の光が発生し。
光が収まり目を開けると、先ほどの場所とは全く違う所に移動していた。
「え……先生! グート、たこやきは?」
私は混乱した。
皆は無事なのだろうか? ここは何処なのか?
そんな事を考える間もなく、目の前に突如何かが降ってきた。
――ズゥゥン……
それは大きな音を立て地面に着地し、ゆっくりと立ち上がった。
「こんな子供一人に……この、マグマゴーレムを連れてくる必要は無かったな」
「――ッ! だれなの!」
マグマゴーレム……真っ赤な岩で包まれた魔物の後ろからゆっくりと法衣を纏った男性が現れた。
そのマグマゴーレムは身体に鎖が巻かれており、なんだか異様な感じである。
「……その着ている法衣……貴方、神徒ね!」
神様から神徒が必ず着用している法衣の存在を私は聞いていたのだ。
そして、目の前の男はその聞いていた法衣を着用している。
先にお父さん達を探しに来てくれた神徒に違いない!
「ねぇ私もお父さん達を探しに来たの! 一緒に行こう!」
「お父さん……? つまり貴方はシンセの娘か?」
「え? うん、そうだよ!」
そう言った瞬間、神徒の目つきが変わり、突然マグマゴーレムは私に向かって右手を繰り出した。
「え! ちょ!」
――ズドン!!
辛うじて右へ飛び出し、その拳を避けた。
我ながらよく避けたな……。
「なんで! やめてよ!!」
「くく……」
神徒は不気味な笑みを浮かべながら話し始めた。
「お前はここで殺す。神の命令なのだ」
神徒の法衣は突如暗黒に染まっていった。
神の命令? どういう事なの!!
「マグマゴーレム。奴を破壊するぞ」
「神様がそんな事言う訳ないじゃない」
「神様……言い方が悪かったな。私が言うのは魔神様の事よ!!」
「魔……魔神?!」
「応援が来ると面倒だ。マグマゴーレム! さぁ動け!」
神徒はマグマゴーレムを繋ぐチェーンを持ち魔力を込めた。
するとマグマゴーレムに巻き付く鎖に電流が走った。
――グォォォ!!
マグマゴーレムはその後、私に向かって前進し始めた。
「まったく、電流を流さないと命令を聞かぬポンコツよ」
私はその言葉を聞いて、マグマゴーレムを凝視した。
「この子……苦しんでるよ! その鎖を外してあげてよ!」
「は! それでいう事を聞くなら苦労はせぬ! さぁこいつを黙らせるんだ!」
電流は再びマグマゴーレムを襲う。
(可哀そう、なんでこの子がこんな目に会わないといけないの……!)
みなもは拳に力を入れて決意した。
(私がその鎖を外してあげるからね!)




