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3話 神の加護!

「で! 何でその姿なの?」


 私は広げられた焼き菓子を頬張りながら話を戻した。


「ああ、父さん死んだだろ? んで魂みたいな状態になって目の前には神様が居たんだ」


 お父さんは真剣な顔で説明を始めた。


「いきなり非現実的な話だけど……ここに私が居る時点でそうでもないのか……」

「で、神様に聞かれたんだ……」


 神様は元の姿をしたお父さんの両耳を手で優しく防ぐように触れながら、

「どうせなら君の思うカッコいい姿で転生しよう。さぁ、その顔を思い浮かべて」

 と静かに言った。


「それでお父さん……咄嗟に思いついたイケメンがあのポスターのキャラしかなくてね……それがそのまま反映されてしまった訳なんだ」

「よりによってだね……」

「まぁもう慣れたけどね。その時に一緒に神の加護を授かって……あ!」


 お父さんは飲もうとした紅茶のカップをカチャリと置き、立ち上がった。


「どうしたの?」

「神の加護! みなももそれ受けないと三日以内には死んじゃうんだ。こっちきたらすぐ神様の所へ連れて来いって言われてたんだ」


 お父さんは焦った様子で話した。


「ちょっと! そんな大事なこと忘れないでよ! お菓子食べてる場合じゃないよ!」


 と言いながらも、出されたお菓子は全部口に頬り込んだ。このクッキーとか凄い美味しいんだもの!


「そうだね。少し下がって、開くから」

「開く……?」


 お父さんはそう言うと、何もない空間を指でなぞった。

 すると、空間が裂ける様に開いた。


「さぁ入って!」

「何これ……こわっ」


 お父さんが先にそこへ入り、私は手を引かれ続けて入った。


――シュゥゥ……


 一瞬、全面銀色の景色が広がりその遠く先から別の景色が速い速度で近づいてきた。

 その時点で酔いそうになったので、私は目を閉じた。


・・・


「ついたよ。神の間だ!」


 目を開けると、全く別の場所へと移動していた。

 大きな銀色の噴水が中央に構えており、見た事もない程の真っ白な床で出来た空間だった。

 壁らしいものは無く、白い空間が果てしなく続いている。


「うわー……すっごい綺麗な所……」


 私は思わず床の端の方へと移動しそうになったが、すぐさまお父さんに抑止された。


「あまり端の方へ行かないで。見た目通り、壁が無くて……万が一落ちたらもう二度とこちらへ戻れない」

「え……危ないね……!」


 私はさっとお父さんの方へと戻った。


「こっちに神の間があるよ。ここも足元十分に気を付けてね」


 お父さんの指す方向には、どうみても宙に浮きながら固定されている階段があり、その先には大きな真っ白の門扉が構えている。


「いくよ」

「あ、ちょっとお父さん! 心の準備が……」


 今から神様に会う。そう思うと少し緊張してきた……。


「大丈夫だよ、みなも! 神様はとっても良い人なんだ。神様が居なければ父さんはここまで実現できなかったよ。みなもをここに呼ぶことだってね」


 そんな私に対して、お父さんは緊張をほぐそうと。肩をぽんと叩きながら言った。


「そ、そうなんだね……!」


 そんな会話をしながら階段を上り、門扉の前へとやってきた。


「よし、入るよ!」


――キィィ……


 お父さんがそう言うと、門扉は触れる前にゆっくりと開いた。

 その瞬間、男性ががこちらへと走ってきているのが見えた。


「シンセ! 会いたかったよ!」


 扉が開ききると同時に、ツンツンヘアーで綺麗な銀色髪の青年がお父さんに飛びついた。


(何この人イケメン……!)


 お父さんは驚いた様子で、

「ちょ、神様! この前会ったばかりでしょう」

 と言いながら、男性をゆっくりと降ろした。どうやらこの人が神様らしい。


「え、この人が神様!?」


 私の想像していた神様のイメージとかけ離れていた為、思わず言葉が漏れてしまった。


 見た目はお父さん(変身後)と同い年位……大学の同級生二人って感じに見える。


 にしても……綺麗な銀髪……。

 神様って髪が長ーいイメージだけど、ツンツンヘアーの神様も居るんだね。


「そうだよ。この方が神のアラキファ様だ」


 お父さんは神様を、まるで大学生が自分の友人を紹介する感じで私に伝えた。

 その紹介に神様は少し不貞腐れた顔をし、お父さんに顔を近づけた。


「シンセー! 呼び捨てで良いって言ってるだろ?」


 神様はその近さのままお父さんに言った。

 まるで彼女みたいな言い方だ……!

 しかし、お父さんは少し離れて両手を前に軽く突き出した。


「いやしかし、神様を呼び捨てだなんて……」

「いいんだって! シンセは特別なんだよ!」


 神様は大きな声でお父さんに言った後、不満げな顔をしながら腕を組んだ。


「むしろ、様なんか次つけたら神の加護の話は……」


 そう言った瞬間、お父さんは慌てて神様に近づいた。


「いやそれは困る! わかったよアラキファ! 慣れないけど頑張るよ……」

「分かればいいんだよ? シンセっ!」


 神様は嬉しそうな笑顔を浮かべ、お父さんと肩を組んだ。

 私はそのやり取りを静かにじーっと眺めていた。


(あぁ~目の保養だぁ~……)


 しかし、そう思った瞬間我に返った。


(でもこれ、お父さんと神様なんだよなぁー……)


 そう思うと、何とも言えない気持ちになった。


・・・

・・


 神の加護とは!


 こちらの世界へ新たに来た場合に受けられる加護である。

 というより、その加護を受けなければこの世界では生きて行く事ができない。

 このタイミングで身体の組織が完全にこちら側に適した身体になる。(この影響で基本的に元の世界に帰れない)


 本来なら変換されるだけなのだが、神様の力で一つだけチート能力的な物をつけてくれるみたい!


「じゃぁその紙に、君の欲しい能力を一つ書いてね」


 七夕の短冊の様な紙と羽ペンを受け取った。

 私は欲しい能力は既に決まっていたので、ささっと願い事を書くように書いた。


「よし、書いたよ! そういえば、お父さんは何を書いたの?」


 そういえばお父さんも新たにこちらへ来ている。能力は何を授かったんだろう?


「お父さんは……人を護る為の力が欲しいって頼んだよ。護っても自分だけ死なないようにね」


 お父さんは少しだけ表情が曇り、拳をぐっと握った。


「そう! それで僕は授けたんだ。勇者の能力を……! 素晴らしい澄んだ心の持ち主……たった一つしかないこの能力はシンセにこそ相応しいと思ったわけだ」


 神様はまた前に出て来て、お父さんのべた褒めした。

 その表情には敬意のような物も感じ取れた。


「あはは。そんな大げさな……」

「お父さん……」


 お父さんの表情を見るに、きっと私を守って死んだことを悔いているのだろう。

 勇者の能力……想像もつかないが素晴らしい能力なのだろう。

 お父さん、やっぱりすごい人だな……。


「でも、能力を貰っても、完全に開花できるかどうかは自分次第みたいだよ。むちゃな願いは辞めておくんだよ。父さんも凄く苦労したからね」

「う、うん!」


 お父さんは私がどんな事を書いたと思っているのだろうか。今からでも書き直そうかな……?


「じゃぁ預かるね」

「あっ……!」


 そう思った瞬間、用紙を神様に取られてしまった。


「なになに……イケメンからちやほやされて、モテモテになりたい」


 神様は淡々と読み上げた。

 その顔が、完全な無表情である


「きゃー!! ちょっと読み上げないでー!」


 私は思わず顔を伏せた。こんな事ならお父さんの能力を聞かなければ良かった!


「あはは。みなもらしいね」


 でもこれは私の願望! ここで遠慮してどうするんだ! 自分に正直になるぞ!

 しかし、この能力はダメとか……あるのかな。

 私は恐る恐る神様を見た。


「わかった。完全に意向に添えられるか分からないけど」


 神様は無表情のままだ。さっきまで喜怒哀楽が激しかった人とは思えない……。


「本当!? やったぁ!」

「じゃぁシンセ、儀式を始めるから噴水あたりで待っていてねっ!」


 神様は先ほどの無邪気な人に戻った。とりあえず一安心かな……。


「分かったよアラキファ。じゃぁみなも、頑張るんだよ」

「うん!」


 そういってお父さんは先に門扉から出て行った。

 それを見送り神様の方へ顔を戻すと、先程までには考えられないような不機嫌な顔になっていた。


「あの……アラキファ?」


 私は恐る恐る話しかけた。


「何を呼び捨てしている。アラキファ様と呼べメス豚が」


 すると神様は冷たい目で私を指差し言い放った。


「!?」


 低いトーンで冷たい声だったが、突拍子がなさ過ぎてよく聞き取れなかった。悪口だった気がするけど……。

 とにかく、様を付けろと言う部分は理解できた、改めて私は話しかける。


「あの、すいません。アラキファ様」


 神様はこちらを見ず、紙を凝視していた。


「気安く僕の名を呼ぶな。頭が高いぞ」


 そのままの姿勢で、神様は言った。


(えー!)


「くそ……こいつが居るせいでシンセは……」


 神様は私の書いた紙を力ずよく握り、

 ぶつぶつと何かを言っている……。


 何なのこの変わりよう……さっきの人とは別人……? 別神なの……?


「あの……アラキファ様、加護をお願い出来ますでしょうか……」


 とは言え、加護を受けさせてもらわないと、私も死んでしまう。何とかお願いするしかない。


「断る。さっさと視界から消えろ」


 神様は私の書いた紙を手から捨てながら言った。


「そんな! だって加護が無いと私死んじゃうよ……」


 私は急いでその紙を拾った。破れる気配は無いが、しわくちゃになっている……。


「シンセ以外が死のうとどうでも良い。むしろ貴様が居なくなれば……フフフ」


 神様は不気味な笑みを浮かべた。

 あまりにも自分勝手に思えた神様に対して、私は少し怒りを覚えた。


「さっきまでしてくれるって言ってたじゃない!」


 負けじと声を上げるも、神様は冷酷な目で私の方へ向いた。


「気が変わった。僕にメリットが無さすぎるんだよ。貴様の心は見た事にない程に煩悩に溢れている……真っ直ぐに澄んだシンセの心を見習ってほしいものだね」


 ……そんなの恋する乙女なんだから多少は仕方ないじゃない!

 とは流石に言えない。しかし、言われっぱなしもむかつく……何とか神様の気分を変える事は出来ないだろうか。

 何か……そうだ!


「メリット……あるわよ!」

「は? これ以上僕を怒らせる気か?」


 神様は明らかにイライラしている……。


「お父さんの事、色々知ってるよ! 例えば一番好きな食べ物とか……」


 私がそう言った瞬間神様の険しい表情は少し和らいだ。


――ガタッ!!


「何だと……?」


(近い! いや凄い前のめり……食らいつき方が半端ないよ!)


「ちゃんと神の加護をしてくれたら色々教えてあげるよ? 好きな色とか好きなタイプとかなんでも……」


 そう言うと、近い顔がよりぐいっと寄ってきた。その表情は険しいというよりかは、真剣な表情である。


「なん……でも?」

「う……うん」


 あまりの近さに少し圧倒されたが、なんとか神様の気持ちを変える事が出来た気がする!

 というより、あんな最低な性格だけど、顔がイケメン……こんなに近づかれたらドキドキしちゃうって!


「おい、こっちへ来い」

「え? うん……」


 アラキファ様にそう言われ、私はその後をついて行った。

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