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2話 引っ越し完了!

「本当かい! 嬉しいよ!」


 もう一度来たお父さんは、最初は不安な表情を浮かべていた。

 だけど、私の一緒に行くと言う言葉を聞いた瞬間、今までに見た事がない笑顔を浮かべ抱きついてきた。


「ちょっと抱きつかないで! 父さんも荷物持つの手伝ってよ!」


 お父さんは私の荷物に視線を送り、少し困り顔だ。


「結構な量だね……しかも殆どお菓子とフライドポテト……?」


 私の荷物の中身を少し物色しならが言った。


「だって向こうにはこんなお菓子無いんでしょ? これでも少ないくらいだよ!」

「まぁお菓子は良いけど、冷凍のフライドポテトはチンする機械ないよ……? てか溶けてしまうね」

「……じゃぁその分お菓子詰めるから待ってて!」

「はいはい」


 そういって最後の荷物整理を終えて、異世界に行く準備は整った。


「じゃぁ……本当に行くよ? 友達には言ったのかい?」

「もちろん! 手続きなどは全部済ませたはずだよ! 友達にはイタリアらへんに引っ越すって言っといた」


 私はドヤ顔でお父さんに答えた。


「凄いね。手続きまでしっかり……えらいよ!」

「えへへ! さ、いつでもいいよ! 心の準備は出来てる」

「分かった。じゃぁその場から動かないでね……」


 お父さんは私を抱きしめた。

 すると、私達の身体は光始め、視界は真っ白になっていった。

 眩しすぎた為、私は思わず目を瞑った。


・・・

・・


「もう目を開けても大丈夫だよ」

「うん……」


 あれ、お父さんの声じゃない……?

 違和感を感じながらもゆっくりと目を開けると、超美形の青年が私を抱きしめていた。


「――ッええ! ちょ、あれ? え? お父さんは?!」


 何これ、いきなり超美形男子が目の前……と言うか抱きしめられている!!

 っていうかブラウンヘアーで短めのポニーテール……髪全体にウェーブがかかってる感じ……そして何より顔! この人は私の推しの……!


「レン様ッッ!!」


――ビターン!


「ちょ! みなも!?」


 私はあまりに突然の出来事に思わず卒倒してしまった。


・・・

・・


「うう……」

「あ、みなも、目が覚めたかい?」


 意識を取り戻すと、先程の美形男子が私の顔を覗き込んだ。


「うわあああ! レン様! なんで!」


 私はベッドから飛び起き、後退した。


「待って! 落ち着いて!」


 後退した勢いでベッドから落ちそうになると、レン様はさっと私の背後に移動し、背中を支えてくれた。


「な……何でレン様が私の所に……」


 レン様のその移動する速度があまりにも早くてびっくりしつつも、動揺はまだ隠せない。


「みなも……ごめん、姿は変わったけどね、父さんだよ」


 父さんと名乗る男性は優しい笑顔で話した。


「……え? いやいや何を言ってるの! そんなの信じられ……」


 でも確かに、レン様はこんなおっとりした性格じゃない。もっと毒のある感じなのに……。

 それに、あの優しい笑顔はお父さんを思い出させる。


「ちょっとは落ち着いた?」

「あ、ちょっとだけ……」


 じっと顔を考えながら見つめている内に、私は少し落ち着いて来ていたようだ。

 おっとりとした感じと話し方はお父さんと似ているっちゃ似ている……。


「いやでも、信じられないよ……」

「ここまで姿が違うとそうなるよね……あ! ならみなもと父さんしか知らない秘密を知っていたら信じる?」

「うーん、じゃぁ試しに言ってみてよ」


 すると、お父さん(仮)はうーんと頭をひねり、その後はっと閃いた。


「小学校の5年生の時! お友達が家に来て泊まったよね。 その時みなもテンションが上がりすぎたせいか、おねし――」


 その瞬間、何を話しようとしたかを瞬時に理解した私は、お父さんの口を遮った。


「あーわかった! お父さんだね! てか何でそれをチョイスするの!」


 私はそう言いながらもチョイスした理由は何となく分かっていた。


 あの時私は、「お父さん! 絶対に言わないで! 一生ね! 一生二人だけの約束だから!」と、むりやりお父さんの小指を掴み、指切りをしたのだ。

 他人が知らない、二人だけの秘密だ。


「ごめんよ、でも信じてくれてよかった!」

「……」


 私はこの人をお父さんと理解しようとしつつも、どこかでそれを信じ切れていない。


「ご、ごめんね? こうなる事は言ってなかったね、てか見過ぎだよ」

「う……」


 そりゃ見ちゃうでしょう! 私の一番の推しの姿をした男性が目の前に……声も姿も一緒……!

 誰が見てもレン様なのに……その中身はお父さんとか……!


「なんかモヤるわっっ!」

「まぁ、とりあえずこっちに来てみて」


 お父さんは私の手を引き、その部屋を出た。

 扉からでて右側には玄関の様な造りをしている扉があり、開くと外に出る事が出来た。

 どうやらここはバルコニーになっているようだ。テーブルと椅子がいくつも設置されており、まるでカフェのような造りとなっている。

 お父さんはそのまま私を引っ張り、岩で出来た柵の方まで誘導した。


「ほらみて、この景色。地球では見られなかっただろ?」


 そういって、お父さんは目の前の景色を指した。

 広大な自然が広がっており、時より飛んでいる鳥は見た事も無い形状をしている。

 木も色々な形が生えている。大きな黄色のヤシの木みたいな奴とか……氷で出来たように見えるサンゴ礁の様な……木?

 とにかく、お父さんが指す森と呼ぶそこは、パステルカラーで煌びやかな雰囲気だ。


「確かに……綺麗な景色だね。てかここは……?」


 景色には圧倒されたが、今いる立っている場所もどこなのか非常に気になる。

 お父さんは私の質問を聞いて、ゆっくりと椅子に腰かけた。


「バルコニーだよ。ここで紅茶を飲むのが最近の日課だね」


 お父さんはいつ間にか用意した紅茶セットを広げ、二人分の紅茶を注いだ。


「……貴族かよッ! てかこれがバルコニー?! 広すぎでしょ!」

「そう……だね、言った通り前の家よりは広いでしょ?」


 お父さんは軽く周囲を見渡しながら言った。


「ええ、予想を遥かに越える広さだよ!」


 私がそう言うと、お父さんは静かにティーカップを置き、軽く頭を抱えた。


「考えない様にしてたけど、それはうすうす父さんも思っていたよ。一人暮らしなのに広すぎるなって……。部屋だってさっきの部屋しか使ってないし、使わない部屋が沢山あるよ……」

「もう少し、普通規模の家は無かったの? 掃除とか大変だよ!」

「そうなんだけど、ここは頂いた物件だからね。そんな文句は言えないよ……」

「そうだったんだね。でもここは家というか……城とか砦じゃん……」


 この家は岩で出来た頑丈そうな外壁で出来ており、柵から下を覗くと、この城の敷地が広がっている。そして、その敷地を囲うように城壁が建っている。

 これを城や砦と言わず、何と言うのか……。

 いや、それよりもこの規模の土地と物件を貰った!? どういうことなの……。


「そうだ! お菓子を用意してたんだ。座って待っててよ。こっちのお菓子も食べてみて欲しいんだ」


 そういってお父さんは城……いや、家の中へと戻っていった。

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