24話 中心へ
「もうシールドを解除しても大丈夫そうだね」
「そのようですな!」
お父さんはそう言ってシールドを解除した。
荒れ狂っていた風は嘘のように無くなっており、森へ入る前の快適な気候へと戻っていた。
「みなも、前を見てごらん」
お父さんは目の前を指差した。
「うわぁ……綺麗!」
「この風切りの森でしか見られない光景なんだ。[夜光綿のカーテン]って呼ばれているよ」
沢山の夜光綿がふわふわと規則正しくゆっくりと右回りに飛んでいる。遠目で見たら真っ白のカーテンにしか見えない。名前の通りだ……。
「風切りの森の中心部を守るように、円状にずっと飛び続けているんだ」
「竜巻みたいに飛んでるって事……? ここは通り抜けられるの?」
「大丈夫だよ。さぁ触れて見て」
「う、うん……!」
私は恐る恐るそのカーテンに触れた。
すると、その触れた部分から夜光綿は光始め、連鎖するように次々と光始めた。
「凄い……何これ! 幻想的だぁ……」
「シアも!」
そういってシアもぼふっとカーテンに突っ込んでいった。
「シア様! 一人で先に言っては危ないですぞ!」
続けてガウレスもシアを追って入った。
「さ、父さん達も行こう」
「うん!」
そうして全員がそのカーテンを通り抜けた。
・・・
「え……何あいつ……」
「皆! 下がって!」
父さんは全員の前に立った。
その表情は険しい。
何故なら……
「ウゥー!!」
「レッドラインウルフ……何故こんな所に……!」
目の前には全長5m程の大型狼が居た。背中に1本の真っ赤なラインが頭から尻尾まで通っているのが特徴的だ。
周囲を軽く見渡すと、スライムの残骸らしきものが散らばっている。
どうやらスライムを主に食しているようだ……。
「みなもちゃん、シア、たこやきは吾輩達の後ろへ!」
「う、うん!」
お父さんが先頭で、ガウレス、先生が私達の前に出た。
「こいつは魔法耐性が高い……クソ、剣を持って来るべきだった」
お父さんはそう呟きながら何かを詠唱し始めた。
「皆、結構な衝撃が行くから伏せて!!」
「分かりましたぞ! さぁ皆腰を低くするんじゃ!」
言われるがままに私達は小さくなった。初めてあんなに狂暴で怖い魔物を見た。
震えが止まらない……。
その時、シアがすっと私の手に触れた。
「お姉ちゃん。大丈夫だよ!」
「シア……!」
そこで私はハッとした。
シアに心配されてどうするんだっ!
私がシアを守らなきゃなのに!
「ありがとう! 大丈夫だよ! 皆がいるもんね!」
その時、お父さんの詠唱が終わった。
「ウインドブロー」
その瞬間、物凄い風圧が私達の方に来た。
だが、それとは比べ物にならない程の風圧を受けた、レッドラインウルフの巨体は大きく浮き上がりそのまますごい勢いで前方へと吹き飛んでいった。
「グォォォアアア!」
そのままカーテンを突き破り、かまいたちによってき斬り刻まれ、断末魔が聞こえた。
「おわったよ。皆」
お父さんは笑顔でそう言った。