22話 魔力の葉
――翌朝
「と言う訳でこの子を飼うよ!」
「名前はたこやき!」
昨日、お父さんは出掛けていたのでたこやきの紹介は翌朝のいま行っている。
――ぷるん!
「このスライム……"チューイースライム"じゃないか! お金は足りたかい? こんなレアスライム滅多にお目にかかれないよ」
「勇者殿……実はいろいろあって無料で引き取ったんですぞ」
「無料!? 一体何があったらそんな事に……」
「それよりお父さん! チューイースライムってそんなにレアなの?」
「お父さんがみたスライムの中で一位二位を争う激レアだね……」
・チューイースライム(スライム種)
弾力が半端ない小麦色のスライム。
まるでゴムボールのような感触で、あらゆる打撃を無効化・魔法も殆ど効かない。
とてつもなく切れ味の良い斬撃攻撃のみ有効。
触れた敵を思いっきり吹き飛ばす。
入り口が霧のように消え、同じ場所からは二度と入れないと言われる霧の洞窟でごく稀に見かけるスライムである。
「そんなスライムを捕まえたあのショップめちゃすごいね!」
「本当にね……どうやって手に入れたのか気になる所ではあるけど……」
そんな会話をしている時、シアはスライム(たこやき)をトランポリンの様にして遊んでいる……。
「しかし……」
「どうしたの? お父さん」
「チューイースライムは何を食べるのか……」
「そう言えばそうだね……ガウレスさんは知ってたりする?」
「申し訳ない……スライムの餌は分からないですな……」
「上位のスライムは魔力の葉を食べますよ」
「あ! 先生!」
「興味深い事を話していますね」
先生はそのまま一緒に席へ着いた。
「そうなの! 実はスライムを飼う事になってね!」
「よく見る下位スライムの餌やりは簡単です。魔力を少し含んだ葉を1日1回サイズに合わせた枚数与えれば元気ですからね! その辺に生えている葉には基本的に微量の魔力が帯びてます」
「そうなんだね!」
「ですが、上位スライムは魔力の葉しか食べません……その葉の生息地に難ありです……」
「霧の洞窟か、フィールの風切りの森だね」
「その通りです勇者様。霧の洞窟はいつどこに現れるか分かりません。採取するとすれば風切りの森でしょう」
「風切りの森?」
フィールはエルフの国だけど、風切りの森は聞いた事無いな……。
「ええ、風切りの森とは一見、普通の森なのですが……激しい風が吹き荒れ、それはかまいたちの様に皮膚を裂くのです」
「こ、怖い場所だね……」
「中心まで行くと無風の場所へとたどり着きます。そこに魔力の葉は生息しています」
「上位のスライムは餌を食べるのも大変だね……」
「まぁ魔力の葉を必要とするスライムはかまいたちなどへっちゃらですし、霧の洞窟へもすっと入れるそうですよ」
「へ~」
「たこやき……お腹空いてると思う。元気がない」
「よし、なら皆で取りに行こうか!」
「いいですね勇者様! 課外学習ですね!」
「え!? かまいたちが吹き荒れると場所なんて私死んじゃうよ!」
「そこはお父さんに任せて! 大丈夫だよ!」
そういって早速、外出の準備を始めた。
・・・
「よし、じゃぁゲートを開くよ!」
そう言ってお父さんは大きめのゲートを開いた。
そういえば、皆で一緒に出掛けるなんてこれが初めてだ! 楽しみだな……。
――エルフの国 フィール 郊外
「ここから真っ直ぐ歩いて行くと森に着く。それまでは安全な道だから安心してね」
「はーい!」
そうして私達は歩き始めた。
・・・
「お姉ちゃんみて!」
「うん? 何これ綺麗だね!」
シアは光る綿毛の様な物を渡しに見せてきた。
「あっちにいっぱい生えてるよ!」
「うわー本当だね! 夜になると綺麗だろうな~」
すると先生が顔を覗き込ませてきた。
「これは夜光綿ですね」
「先生!」
「みなも様の言う通り、この綿は夜になると優しい光を発します。とても綺麗ですよ」
「へ~見てみたいな~」
「そうですね。ですが、この辺りは夜になると光に誘われ狂暴な昆虫が現れます。危険な場所ですよ?」
「見るのは諦めよう……」
優しい風が木々をなびかせ、その風に乗って飛んでくる木の葉の色は赤、黄色、青色などカラフルで幻想的な雰囲気を作り出している。
少し寒いくらいだったが、歩いている内に丁度いい具合になってきた。
シアは気が付けばたこやきの上に乗って寝ている。
とても気持ちがよさそうだ……。
そんな事を思いながら、景色を楽しみつつのんびりと歩き続けた。
・・・
・・
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