18話 テイマーライセンス
「よーしよしよし……」
「キュゥゥ……」
私の日課はナブートを愛でて餌をやる事だ。
「ナブート! ほら、これ食べたいでしょ?」
私はナブートに大きな肉の塊を見せた。
「キュゥー♪」
「じゃぁお座り!」
「ガウ!」
「いい子ね! じゃぁこれは出来るかな? お手!」
「ガウ!」
――チュドン!
「……」
ナブートのお手はみなもの手を外し、地面に当たった。
その地面はびっくりする程に抉れていた……。
「キュウ♪」
「い……いい子いい子!」
(お手はやめよう……死ぬ……)
「じー……」
その様子をシアは影から見ていた。
「どうしたのシア?」
「お姉ちゃん!」
シアは大声で私を呼んだ。
「シアもペット欲しい!!」
「ペット!?」
シアはどうやら、毎朝ナブートとじゃれている私を見て、お世話欲が沸いたらしい……。
・・・
「と言う訳なんだけど、お父さん! ペットって何がいるの?」
「わくわく」
「ペット……か……」
お父さんは少し頭を悩ませている。
その時、ガウレスが口を開いた。
「シア様! ペットのお世話はとても大変ですぞ? ナブートは大人しいけど、買うペットによってはずっと見てなければなりませんぞ」
「でも欲しい!」
ガウレスの説得は続くがシアは一向に納得する気配がない……。
・・・
「では……お昼から見に行きますか……」
「わーい!」
「ゆ、勇者殿……」
「まぁきっとお世話は頑張ってくれるよ。シア! 大きいペットはダメだよ? 小さい子にするんだよ!」
「小さい子? ナブートより?」
「そうだね……ナブートの100分の1くらいの……」
「うーん分かった!」
「みなもちゃんも一緒にどうじゃ?」
「そうだね! 私もペットってどんなのがいるか興味あるかも……」
「なら3人で行っておいで。みなもも買いたいなんて言わないでくれよ?」
「大丈夫だよお父さん! 私にはナブートがいるわ!」
「いや、みなもちゃん、ナブートは吾輩が飼っておるんじゃが……」
そうして支度を済ませ私達はおなじみの商業特区へとやってきたのだ。
「……え? ペットショップってこの広場全部なの……?」
「わーい! ぺっとしょっぷー!」
一見、ペットショップというよりかは動物園だ。
入場ゲートがあって、そこに人が立っている。
入場料でもとられるのだろうか?
「いらっしゃいませ。テイマーライセンスをご提示ください」
「テイマーライセンス?」
「テイマーライセンスとはこれの事じゃ!」
ガウレスはそう言って免許証程のカードを私に見せた。
「ペットを飼うにはこのテイマーライセンスが必須なんじゃ。吾輩はナブートと出会った時に取得したぞ」
そう言いながら店員さんにカードを掲示したが……。
「えっと、ガウレスさん? 有効期限が切れてますねこのカード」
「え!? 有効期限じゃと!」
「ええ。5年前には切れてます。更新されなかったのですか?」
「更新……更新しないといけないのかこのカード!?」
「ええ。こちらで手配出来ますが最短で1週間はかかります」
「1週間だと! てことは……」
「更新が完了してからお越しください♪」
店員さんは笑顔で言った。
ガウレスはとても困った顔をしている……。
「ガウレス、入らないの?」
「えっとですね……シア様……」
ガウレスはしゃがんでシアの目を見た。
「今日はちょっと入れないようで……」
「嫌だ! 入る!」
「とはいってもですね……」
「入るんだー!」
ガウレスの説得は一切響いていない……。
「シア、来週絶対来るから! ね?」
「お姉ちゃん……シア、今日入りたいよ……ここまで来たのになんで……?」
シアは涙目になっている。もう強行突破するか……?
そんな事を考えている内に、受付の人が話しかけてきた。
「あの……可能性があるとすればどちらかの子がライセンスを発行する事ですね」
「え?」
「あちら右手の方にライセンス取得の為の試験場があります。ホワイトであれば試験に合格さえすれば即日取得が可能です!」
「そんな手があるのね! シア!」
私はシアの手を取った。
「お姉ちゃんが入る為のカードを手に入れてくるからね!」
「本当!?」
「みなもちゃん!? ホワイトとは言え、ライセンス取得は実技だし難易度が高いぞ……?」
「ガウレス、何とかやってみるよ。この辺で待ってて!」
そうして私はその試験場へと向かった。