16話 たこ焼き作り
神様は全てを聞いた後、少し待てと言いその場から姿を消した。
そして5分もしない内に……
「さぁすべて用意したぞ! お前も来い」
「え、何処へ行くの……?」
「ここじゃ人目につく。 神の間へと行く」
そういって神様はお父さんの様にゲートを開き、私の手を引っ張って中へと入った。
「うわぁ凄い、全部揃ってる!」
神の間についた瞬間、目の前には大量の材料が置かれていた。こんなに要らないんだけどね……。
「ふん。この程度造作もない。このボコボコの鉄板が一番意味不明で面倒だったがな」
そういって神様が指さしたのは、たこ焼きを焼く為の鉄板だ。
神様は知らないだろうけど、これが無いとたこ焼きは始まらないからね!
「さて、じゃぁ早速作ってみるよ! よく見ててね!」
「……ああ。見せてもらおう」
そういって私は乾燥した魚で出汁をとったり、小麦粉で生地を作り、たこ焼きの元を手際よく作っていった。
思えば、小学生くらいの時によく一緒に作ったよね。懐かしいな……。
「んで、この記事をこのボコボコ鉄板に流し込んでー……」
「ほう。成程……」
そして……
「よし、これにソースをかけて完成!」
たこ焼きは無事に完成した!
「これがたこ焼き……シンセが好きな食べ物か……」
神様はまじまじとたこ焼きを観察した。
そしておもむろに一つ爪楊枝で突き刺し、口へと運んだ。
「神様! 熱々だよまだ!」
だが、みなもの心配は不要だった。
神様はそのままたこ焼きを頬張り、ゴクンと飲み込んだ。
神様は全然猫舌ではない様だ……。
「ふむ……中々うまいじゃないか! 流石シンセが好きなだけはある!」
「えへへ……」
みなもは美味しいという感想を聞けて笑みがこぼれたが、神様はその顔を見て頬を両手で抑えてきた。
「お前が喜ぶな。何だか不快だ。僕はこのたこ焼きと言う物に対して美味しいと言ったんだ。お前には言っていない」
「ふぁい……」
「それに、今見た通り作れば僕にだって同じ味が再現できる。さぁそこを退け」
そういって神様は私をひょいっと退けて調理場へと入り、作り始めた。
しかし……
「神様! 乾燥した魚は出汁を取るだけで生地には混ぜないよ!」
「うるさい! 手が滑ったんだ!」
「神様……水の分量が多すぎるよ……生地がべしゃべしゃになっちゃう……」
「これから小麦粉を足すんだよ!」
など……様々なトラブルが発生しつつも……
「出来たぞ!!」
「おおー! 見た目は完璧だよ!!」
「ふん。僕にかかればこんなものだ」
「そ、そうだね……」
そういってみなもは調理場の方をちらっと見た。
ぐっちゃぐちゃに小麦粉や水が散乱し、調理器具が散らばった調理場を……。
「ほら、食ってみろ」
そういって神様は爪楊枝で一つたこ焼きを突き刺し、私の口の前へ持ってきた。
「あーん」
私は突然だったせいか、反射的にそのまま口を開けて神様のたこ焼きを食べた。
「あっつい!! てかあっまい!! え! もしかして塩と砂糖を間違えるって言う王道ミスを……!」
「やはりか。匂いがなんか違うと思ったんだ」
「というより、こんなに甘いなんて……仮に正解の塩を入れてても量が多すぎるよ! ほんの少しで良いのにっ!」
(でも……シアは好きそうな味ね……)
「……もう一度作るぞ」
「えー!」
そんなこんなでたこ焼き講座は夜遅くまで続いたそうな……
・・・
・・
・
――数日後
「シンセ―! これ、僕が作ったんだ!」
午後のおやつ時間頃に、神様が突然家に現れた。
「アラキファ!? 突然だね……これ! たこ焼きじゃないか!」
「シンセの為に頑張って作ったんだ! ねぇ食べて見てよ!」
「もちろんです! 頂きます!」
そういってシンセは神様の作ったたこ焼きを美味しそうに食べた。
「美味しいよアラキファ!」
「本当! よかった! まだまだあるから食べてね!」
そう言ってアラキファはゲートを開き、部屋いっぱいになるほどのたこ焼きを持ってきた。
「おお……いっぱいだね……」
「シンセの為に作りすぎちゃったんだ。全部食べてね!」
その姿をみなもはじーっと見ていた。
(完全に二人の世界に入っちゃってるな……)
「もちろん! とりあえず飲み物を用意しないと……」
そういってシンセは飲み物を取りに行った。
その時、神様はみなもを指差した。
「特別にお前も食っていいぞ。沢山あるからな」
「え……?」
神様の顔がすこーしだけ赤くなっているようにも見えたが何も言わずに分かったと答えた。
「さて、時間がない。僕はもう帰る。シンセに宜しく言っててくれ」
「あ、もう行っちゃうの?」
みなもがそう言うも、神様はそそくさとゲートを開き帰ってしまった。
・・・
「ふー遊んできましたぞー! って何ですかこれは!?」
ガウレスとシアが帰って来るや否やたこ焼きの山に仰天していた。
「お帰り二人とも。今日から当分ご飯はこのたこ焼きだよ……」
・・・
・・
・