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13話 翌朝

――翌朝


「ふああ……シア、起きる時間だよ~」

「ん……お姉ちゃんおはよう」


 寝ぼけ眼を擦り、着替えや洗顔など朝のルーティーンを終わらす。

 今でもたまにスマホを弄ってしまうが、電源はとっくに切れており使用できない。

 そもそも電波ももちろん通っていないが……。


「ガウレスさんももう起きてるのかな?」


 そんな事を呟きながらいつも食事をする部屋へと移動し始める。

 ここである違和感を感じる……。


「なんか……全体的に綺麗になってる気が……てか良い匂いがするよ!」


 廊下や飾っている燭台、壁や床などが昨日き比べて輝きを増している気がする。

 そして、食事の部屋からは良い匂いが漂っている!


「あ、二人とも起きたか! おはよう! 朝食が出来ているぞ!」


 ガウレスはエプロン姿で私達に食事を用意してくれていた!


「おはようガウレス! 凄い豪華な食事だね! もしかして家の掃除もしてくれたの?」

「ああ、勝手にすまないな……気になってしまうとトコトンやってしまうんじゃ……」

「いやいや! 凄く有難いよ! こんな大きな家なのに……大変だったでしょ!」

「がっはっは! 全然じゃ! 魔王城はこの10倍は広かったしな! 毎日結構時間掛かってたぞ」

「うわあ……」


 毎日ここより10倍広い所を掃除……考えただけで気が遠くなっちゃうよ……。


「ガウレス! これ美味しい! おかわり!」


 そんな会話をしていると、シアは既に着席し朝食を食べていた。


「シア様いい食いっぷりですな! 追加をすぐお持ちしますぞ! さ! みなもちゃんも食べてくれ!」

「あ、うん! 頂きます!」


 昨日の今日でシアもすっかりガウレスには慣れたようだ。


「そう言えば、二人でここで暮らしているのか?」


 ガウレスも着座し、紅茶で一服中だ。


「いや、お父さんが居るんだけど、今は留守にしてるよ!」

「ほうそうだったか! 名は何というのだ?」

「お父さんの? シンセだよ!」


 そう言うと、ガウレスは驚いた表情を見せた。


「シンセって……勇者シンセ様か!!」

「え!? えっと、そう!」

「ってことは君は勇者殿がいつも言っていた娘さんか! もっと小さな子供だとばかり思っておったが……」

「ええ、多分その娘は私です! お父さん……若いからね(姿が)」

「ほー驚いたよ本当に! 吾輩は洗脳されて魔王に仕えていたと言っただろう? その時に教えてくれれば良かったのに!」 

「あはは……すっかり忘れてたよ」


 お父さん……この世界では有名人だから、本当ならあの時に言っちゃうのが普通なんだろうけど……

 私にとっては有名人って言うよりやっぱりお父さんだし言うって発想にならなかったな……姿はレン様だけども……。


「ガウレスさん、その時はどんな生活だったの?」

「洗脳されていた時か? 細かい所は覚えておらんが……」


 そういってガウレスさんは昔話を始めてくれた。


 洗脳中はとにかくこき使われていたそうだ。

 持ち前の体力でその仕事量は何とかこなしていたそうだが……。

 その時のガウレスは自身が魔王の側近だと信じて疑わなかったそうだ。


 勇者が来て、応戦しそうになったが、負けて拘束された。

 その時に洗脳を解いてくれたそうだ。


 その瞬間、自分には大事な妻と子供が居る事を思い出し、すぐに国へと帰った。

 だが……母国は既に滅び、跡形も無く消え去っていた。

 それから自分を責め、荒れた日々を過ごしていたが、お父さんがセントラルで仕事をしないか? と言ってきたそうだ。

 ここに子供も大人も喜ぶ、食べ物の屋台が並ぶ通りを作りたい! 疲弊した国にはこう言った娯楽が必要だ! と物凄い勢いで熱弁され、渋々引き受けた。


 最初は渋々だったガウレスも、屋台の料理を食べて喜ぶ人々の姿を見て少し心が救われたと言う。

 かれこれ5年間ずっとこの仕事をしているそうだ。


・・・


「ただいまー」

「あ、お父さん!」


 ガウレスと話している途中でお父さんが帰ってきた。

 ガウレスの姿はすぐにお父さんの目に入り……


「ガウレスじゃないか! 久しぶりだね!」

「勇者殿……お久しぶりで御座います……」


 ガウレスは跪き挨拶をしたが、お父さんはすぐに辞めさせた。


「よしてくれよ。もうそんな関係じゃないだろう? 屋台の仕事はどう?」

「おかげ様で順調です。新商品の開発もやっているので勇者殿にも是非食べて頂きたい!」

「すごいね! でも、私が教えた焼きそばはやめないでくれよ? たまに無性に食べたくなるんだ」

「ええ! 教えてもらった味は繋いでおりますよ!」


 焼きそば……お父さんが教えたんだね。味が懐かしかったのは、昔家で食べた焼きそばに似ていたからなのかな……。


「勇者殿!」


 ガウレスは再び跪いた。


「ガウレス、だから跪くのは……」

「いえ! これだけはこのまま言わせて下され!」


 ガウレスはお父さんの目を真っ直ぐに見た。

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