表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

題名のない恐怖は…

作者: 神名代洸

それはずっと前からあった。

でも誰もそれを口にしない。

噂があったからだ。

口にするものは取り憑かれると。

僕も信じてた一人。

父も母もその手のは信じていないが、信仰は持っていた。

毎日欠かさず夜になるとお経を唱える。

日課だ。

僕はもう正直うんざりしていた。

こんなことして何になる?

そんなことよりももっとやるべきことがあるはずだ。

例えば…どうして秘密の言葉を喋ると取り憑かれるとか?僕には全くわからない。だけど小さい頃から両親に固く言われ続けていた為、心の奥底では信じてるのかもしれない。

だけど、目に見えないものを信じて何になるという考えの持ち主だ。変わり者と言われたらそうかもしれない。

それでも両親のためと思い言わずに来たのだ。今までよく耐えたよ。

もう言いたくってたまらない。


でもさ、そういう時って必ず誰かから邪魔が入る。

今日はばあちゃんだった。

迷信を信じてるんだ。なんでだよ?

よく分かんないや。

でも今日は絶対に言うつもりでいた。


【※◯▽▶︎×…………。】

???

なんて言ったんだっけ?


【※◯▽▶︎×…………。】

自分でも何言ってるのかわからない。呂律が回らない?いや、言葉になってないのだ。それがこの謎の言葉の正体。

分かったところでさぁどうなるよ?



僕はただジッとその場の椅子に座って辺りを伺っていた。



ヌルッ…。

何かが肩にかかった。

初めは気づかなかったよ。

匂いに気づくまではさ。

なんて言ったらいいんだろう?

鉄の錆びた匂い。

芳しい匂いじゃなくて臭い。

臭い方を見たらそれは現れた。


それは生首だった。

空中に浮かんでいるのだ。

マジかよ。

正直マジ焦ってる。

だって…だって…ほんとにお化けが出るなんて思ってもみなかったから。

ニヤリと不気味に笑うその顔は獲物を得た獣のように口から涎を垂らしていた。


怖い。

怖すぎる。

何で言われたこと守れなかったんだ?

そんな…だって…本当に出るなんて誰も教えちゃくれなかったじゃないか。だからみんな秘密にしてたのか。口に出していうと現れるって誰かから聞いたのか?

僕は椅子から転げ落ち、逃げるようにその場から走り出したが生首が追いかけてくる。

気持ちは焦るが足がもつれる。

逃げきれないと諦めかけた時、もしものためにと下見していた住宅内の神社に走り込んだ。

すると何故か生首は入ってこない。まるで結界でも貼ってあるかのように空中でこっちに向かって体当たりしてる。でも入って来れないのをみてようやくほっとした。でもこのままここにいるわけにはいかないよね。もうすぐ夜だし。


人っ子一人いない…。

皆帰ってしまったのか?

住職は?

僕はあかりを探した。

するとすぐ近くが明るかったことに気がつく。

「良かった…これで……?」

建物内には誰もいなかった。

巫女さんも。

皆帰ってしまったのか?灯をつけたまま。

仕方がないので僕は建物内のお守りが置いてある場所を探した。一つだけあった。

それは「家内安全」

なんだよ…こんなのしかないのかよ。

もっとこう弓矢みたいなのないのか?

売り場の下の引き出しを探すとそれはあった。何本か手にしてポケットにも差し込んでお金をその場に置いて自宅への近道を探す。

携帯の地図アプリで検索をかけるとヒットした。

丁度反対側からの方が距離的に近い。

音を立てないように注意しながら神社の中の林を抜ける。

ここからなら走って5分と言ったところか。

大した距離ではないが、安心はできなかった。

自宅に帰れば御守りはある。

代々仏壇に祀ってきたものだ。

お化けの様子を伺いタイミングをはかる。そして走り出した。っとその目の前に突然さっきまで反対側にいたはずのお化けが。

「ま、マジかよ!?でも行くしかないよな。」

破魔矢を持つ手が震えるが、歯をぐっと噛んで構えた。

襲ってきたらこの矢で反撃するつもりだった。

だがなかなか動かない。

こちらの様子を伺ってる?

まさか、な。

心臓がバクバクいって興奮してるのがわかる。

鎮まれ…僕の心臓。

汗が額からつたい降りると同時に猛ダッシュをかけた。

お化けはついてこない。

たったったったっ。

走りきって後ろを振り返る前にそのまま後ろ手でドアを閉めた。


肩で息をしている。

まだ手が震えてる。

もう大丈夫?大丈夫…だよ、ね?

玄関口から外を見ようとしたら……見ちゃったんだ。

多分目玉を。

「ウワッ!!」てなって後ろにひっくり返った。

その音で2階にいた家族が僕がいる事に気づき階段を降りてくる。

【来るな〜!来るな〜!】と念じながら破魔矢をぎゅっと握りしめた。

しばらく経った頃、足元の違和感に気づいた僕は床を見るとただべったりとなっているのに驚いて叫びながらひっくり返った。

もう〜なんでもこいという気持ちでいたが,流石に参っていた。


だって…見たんだ。足元が真っ赤になっているのを。

それは多分あのお化けの血に違いない。

徐々に染み込んでくるというか浸透しているからそれを破魔矢で囲うように何本も突き刺して新紙で周りを囲み広がらないようにした。その間ドアをどんどんと何かが体当たりでもしているような音がした。

絶対生首に違いないと思った。

ここを破られたら破魔矢で額を突き刺してトドメを刺そうと思った。にしても生首の正体がわからない。全く知らない顔だった。


そこに両親がやってきて、僕の姿を見ると異常事態とすぐに飲み込んで神棚に祭るお守りを父が持ってきた。

そして念じる。

しばらくはドンドンと音がしていたが、やがて静かになった。

両親も何が何だかわかってないようだ。でも助かったぁ〜。



そしてことの顛末を初めから話して聞かせるとばあちゃんがやってきてこう言った。

「あんた、拾ってきたんだよ。迷ってた霊をさ。あの辺りはよく出るんだよ。だから神社は結界が貼ってある。そこはあんたの判断が良かった。だが、そこから出ちまったから追いかけてきたんだよ。成仏させてもらえるかもってさ。実際そうだったじゃないか。でも2度と近づくんじゃないよ。今度はうまく行かないかもしれないからさ。」

「う、うん、分かったよ。そうする。」


かくして僕はあの辺りを歩くことは無くなったのだが,今だに気になる。

大丈夫かなって。

でももう関係ないや。

近づかないよ。

こわい目には2度と会いたくないからね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ