早紀との会話
幼馴染の死を目の前でみてしまった琴音の心は壊れてしまったのだろうか?世の中には信じられないことが起こっているのも事実です。それを他人が見つけられるはずがないのです。そう思っていた・・・
小さな違和感を感じた日から日記をつけ始めた。
気になったことや些細なことでも思ったことやその日に起こったことを書き留めた。
1か月書いて気付いたのだが、時々、意識が飛んで記憶がなくなる。
私は思い出そうと記憶をたどるが、やっぱり思い出せない。
悩んだ挙句にそばにいるであろう早紀に問いかけた。
”早紀・・・いる?”
頭の中で聞いてみた。
早紀からの返事はなかった。
早紀がそばにいるのは気のせいだったのか。
”そうだよね、きっと、私の身代わりになった早紀に罪悪感を感じて聞こえるはずのない声が聞こえてただけなんだ”
そう自分の中で結論付けた。
毎日の日記は続けた。
後で読み返すと子育ての反省にもなるし、雄馬や拓馬の成長もわかる。
そして1週間後の日記に奇妙な書き込みを発見する。
”ずっとそばにいるよ。琴音が思ってることは多分、合ってるよ”
何これ・・・私は書いた記憶がない・・・
私は浩人に日記を見せて相談した。
「ん~、琴音が幼馴染の死に大分まいってるのは見ていてわかる。自分を責めすぎて精神的におかしくなっているのかもしれないね。一回、病院で見てもらうのもいいかもしれないね。今度、有休とって子どもたちを見てるから精神科にいっておいで」
浩人が私をわかってくれていることが嬉しかった。
数日後、浩人にうながされて、精神科を受診する。
今までの自分が思うことをすべて話した。
医師からは、だいたいの話は把握したが、一回の受診では何とも言えないということで、カウンセリングを受けることになった。
浩人の休みに合わせて土曜日に予約をした。
そして精神安定剤と睡眠導入剤を処方してもらって帰宅した。
浩人に状況を報告して、医師に相談したことで少し落ち着いたかもしれないということも話した。
その日の夜から処方された薬を飲む。
すぐに眠りに落ちた。
子供たちは浩人が寝かせてくれたようだった。
浩人に感謝しなきゃ、これで落ち着いてくれればいいのだけど。
薬には眠気を伴うようで雄馬と拓馬のお昼寝に合わせて私も少し寝るようになった。
お昼寝には早紀が出てくる。
”琴音、やっとお話が出来るようになったね。私ね、今は琴音の体に入り込んでるんだよ。だってまだ、やりのこしたことたくさんあるんだから・・・いい・・・よね?”
なんか変な夢みたなぁ?
昼寝から起きてすぐは、夢のことをはっきり覚えていたが、家事をしているうちに忘れていった。
しかし、毎日のように早紀と夢の中で話すうちに夢と現実が混乱していった。
日記にも身に覚えのない事柄が記されている。
私はすっきりしないまま、カウンセリングを受ける日が来た。
日記を持って受診し、違和感を話した。
カウンセリングでは、3つのテストを受けた。
結果・・・
「人格障害があるかもしれないので、カウンセリングはしばらく続けましょう」
と言われた。
「人格障害って何ですか?」
私の問いにカウンセラーの先生は答えてくれる。
「親しい友人の死によって受け入れたくない自分が逃げ場を探してもう一人に自分を作っている。いわゆる、二重人格者になっているのかもしれない。寝ている時だけ、その人格が現れて・・・亡くなった早紀という名前を語って正当化しているのかもしれないね」
あくまでも今の段階での仮設だからはっきりしたことは言えないとのこと。
家に帰り、薬を飲んだ私は疲れたこともあって、すぐに眠った。
”琴音・・・私はいるよ。ここにいるよ。ずっと琴音のそばにいるよ”
”早紀・・・なの?本当に早紀なの?それとも私がおかしいの?”
”質問ばかりだね。確かに混乱するよね。でもね、私は琴音の中で生き続けているのよ。少し前までは、琴音が寝ている時だけ、琴音の意識に入っていたけれど、薬のおかげなのか今はずっと琴音の中に居られるの。でもね、琴音を困らせるつもりはないの”
”この前言っていたやり残したことって何?”
”今は言えない・・・すべてが解決したらきっと成仏できる・・・かも・・・”
ここで私は起きた。
何?今のやり取り・・・夢の中でのやり取りだったけど、本当に早紀と話しているみたいだった。
この日以来、日記の行数が増えた。
死んだはずの早紀の魂が生きている幼馴染の琴音の中に入り、夢の中で会話する、話の流れでは早紀が琴音の体を使ってやり残したことをしようとしている。そんなことが可能なのか?早紀が琴音の体をのっとるなんてないですよね?




