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虚飾の勇者は己を描く  作者: 愚者
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プロローグ

嘘をつく。これは大昔、それこそモーセの十戒の中に「隣人について偽証してはいけない」とあるほど古くから罪とされてきた行為だ。


姦淫、殺人、窃盗、、聞くと重罪のように聞こえるこれらと並ぶほどに、嘘をつくという行為は禁忌である。


しかし、不思議なことにこの行為を行ったことがない者はきっと、世界を探しても一人もいないだろう。先ほどの行為は行ったことがないという人間は多けれど、嘘をつかない者はいない。寧ろ、日常の中に音もなく溶け込むあたり、この行為は禁忌とは認識されてないと言っていい。


己を守るため、己を飾るため、相手に害を加えるため、己の利益のため。。。理由は色々あれど、彼の場合は己を飾るためであった。



ちやほやされたい。認められたい、愛されたい。それは彼が嘘をつく理由。嘘を紡ぐ理由。


彼、清水竜飛は今日も己を嘘で飾るのだ。自分というキャンバスに、色鮮やかな嘘を塗る。


赤、青、黄、緑、紫、色々重ねればやがてどす黒く、みっともない黒に近づくけれど、適度に重ねれば鮮やかなまま。


何もせずクラスの中心に居座り、何もしないくせに周囲を嘲笑う彼は、今日も自分の設定に酔っている。


しかし、残念ながらそんな彼の人生の終わりもまた、泡沫のように、そして嘘みたいにあっけない幕引きであったのだ。






「。。。あれ。。ここは?」


竜飛は気が付くと知らない場所にいた。知らない場所というのもなんだか陳腐な表現だが、自分は何もない、見通すことができない漆黒の空間に直立していたのだ。


耳が痛いほどの無音、何者の気配も感じず、目を開いているはずなのに視界に割り込んでくる黒。


先ほどまで自分がいたであろう空間と、今自分がいるであろう場所の雰囲気と乖離に戸惑っていた。


暗闇の前には見慣れた通学路が、孤独の前には彼女が、耳を貫く静寂の前にはいつも通りの日常の音があったはずなのに。


「君は死んだんだよ」

「?!」

突如後ろから声がかけられた。知らない女の声だ


その口調は気安く、そして、自分にとって無視できない内容なのに女の口調は淡々と、そしてどうでもいいような感じだった。


「はあ?お前なに言ってんだ。。。よ?」


冗談を言う失礼な女の方を見ようと体を動かそうとした。しかし、体が、


「残念ながら、体が動かせないだろう?そういうことだよ竜飛君。」


この女の言う通り体が動かないのだ。首や指といった部分的な部分も、まるで動かない。動くというか機能しているのは現状では耳と口と目と鼻と理解を拒む脳だけだった。


「不便だろうからこちらから君の視界に入るとしよう。初めまして竜飛君。私は所謂神様さ。」


竜飛の約120度の視界は自分の彼女など霞んでしまう美貌と、肉体を持つ絶世の美女ともいえる女を捉えた。


雪のように白く、絹を超えて宝石のように艶やかな銀髪に、後ろの背景と異なり、蠱惑的な輝きを灯す黒真珠のような瞳。


ああ確かにこれほどの女、いや女性は神様位しかいないと竜飛は思った。

「。。。おーい?大丈夫かい?」

「!?ああ大丈夫だ、いや、大丈夫です。」


何もない空間に、体も動かせず、自分は死んだといわれる。そんな状況を忘れるほどに、目の前の女性に目を奪われたいた自分を竜飛は恥じた。


「さて、君の質問ににも答えてあげたいけど、残念ながら時間がない。だから簡潔に情報を伝えるよ。」





第一に自分は死んだらしい。


「死因は何ですか?」

「知りたいかい?私的には別に死んだという事実の方が大事だと思うんだけどね。落雷で死んだかもしれないし、急に刺されたかもしれないし、乗り物に轢かれたかもしれないけど、

結局は等しい死だ。だろう?」


淡々と中々に理解したくない内容を言う神様に竜飛は苦笑した。


第二に自分には人生のチャンスが与えられるらしい。


「俗に言う、異世界転生ってやつだよ。君ほどの年なら、魅力的に聞こえるんじゃないかな?」

異世界転生。クラスには好きな奴もいて、そいつらと本屋に行ったときそいつらは漫画やラノベを買っていた。確かに魅力あることかもしれないが、自分には無縁の物だと考えていた。


「さあ竜飛君。君は転生したいかい?それともここで終わりにしたいかい?」

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