表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/70

第十八話 琢磨の心、折れる

 ぴちょん・・・・・・ぴちょん・・・・・・

 水滴が頬に当たり口の中に流れ込む感触に、琢磨は意識が徐々に覚醒した。


(・・・・・・どうやら生きてるようだな・・・・・・)


 あれからどれぐらいたったのだろうか・・・・・・? 疑問に思いながらも体を起こそうとすると激しい痛みに左腕を見るとやはりあるはずの腕はなかった。そして、その下には大量に血だまりができていた。普通に考えれば絶対に助からない出血量だ。そう思い、斬られた左腕の断面を見ると、肉が盛り上がり傷が塞がっていた。

 そのことを疑問を感じていると、また、水滴が落ちてきてちょうど左腕の断面に当たると痛みが軽減されて、体力も回復してるような気がした。


「・・・・・・まさか・・・・・・この水滴が?」


 琢磨は魔力欠乏症による貧血と眩暈めまいに耐えながら立ち上がると水滴が流れる方向に歩いて行った。

 そうやって奥に歩いて行くと、不思議なことに、岩の間から流れる液体を飲むと、魔力も回復するようで体の不調も徐々に治っていった。

 やがて、流れる液体の量が増え始めた頃、開けた場所に出ると大きな水源だった。


「こ、これは・・・・・・」


 そこには大きな池がありその周りを鍾乳石のような突起物が覆っている。しかも、その先端から液体が垂れており、それを受け止めている池の水面が青白く輝いている。その輝きは幻想的でここが異世界なのを忘れるぐらい美しかった。

 琢磨は池の水を右手ですくい、口の中に含むと、腕の痛さや体の倦怠感や頭痛が嘘のように治まっていき、頭の中がクリアになっていく。やはり、琢磨が生き延びたのは、この液体のおかげらしい。この液体は治癒の効果があるようだ。失った腕が再生するわけではないが、怪我や魔力はどんどん回復していく。

 琢磨は知らないがこの池は大昔に神が与えた聖水ということで【神聖水】と呼ばれる歴史上の最も古い文献に記載されてたもので今は誰も知らない池だったりする。

 神聖水は、大地に流れる魔力が何千、何万という長い歳月をかけて地表にしみわたり、その魔力が液体となって滴り落ちて、それが長い時間をかけて氷柱のように伸びていき結晶化する。そして、ごくまれにその周辺には魔力だまりの池ができることがある。

 この液体を飲んだものはどんな怪我や病気も治り、おまけに肉体強化も施され、個人差もあるが一気にレベルが二十も上がる人もいるらしい。しかも、死ぬ寸前の人もこの液体を一滴飲むだけでみるみる体が若返っていき全盛期の体に戻った者もいるという。そうしたことから奇跡の水と呼ばれ、神=天使様にこの世界の人たちは毎日感謝しお祈りをささげてるようだ。



 ようやく死の淵から生還したことを実感したのか、琢磨はその場でへたり込んだ。そして、助かったことを実感するとさっきの出来事が脳内を駆け巡って体験した死の恐怖がよみがえり体が震えた。すでに脱出しようという気力はない。琢磨は心を折られてしまったのだ。

 今まではミノタウロスと戦った気力で脳からドンパミンドーパミンが出て高揚感が上回っていたが、アラクネとドラゴンスネークに続いて三又の竜の目はダメだった。琢磨を餌としか見てない。しかも、腕をちぎられた上に目の前で焼かれたことで琢磨の心は砕け散ってしまった。


(ガゼル団長・・・・・・ガブリエル・・・・・・彩・・・・・・誰でもいい・・・・・・助けてくれ・・・・・・)


 ここは、ダンジョンの奥深くの未開地のエリア、琢磨の言葉は誰にも届かない・・・・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ