8.不運の始まり(1)
昨日は、ドタバタだった。振り返ってみても、冷や汗だった。正直、自分の力量というよりも、助けようと思った彼らの力量が凄かったということ。助けるつもりが助けられたというオチ。
一緒だったルキに怪我がなかったのは良かった。切り傷一つでもつけていたら、亀爺に殺されるところだった。
そして、今日は、再びタチワナ達と出会う予定だ。昨日、一緒に行った飲み屋で待合せ。12の刻前には店の前に着いた。ちょっとだけ、店の中に入るのに躊躇する。昨日は楽しいひとときを過ごしたものの、自分の評判を再確認して、よそよそしい態度になっているんじゃないか。
そんな時、肩をポンッ、と叩かれた。
後ろを振り返ると、サウロウがニヤッと笑っている。
「何、ぼんやりしてるんだ。時間だから、中に入ろう」
そう言って、中へ入っていく。少し、ホッとしながら、後をついて中へ入る。
基本、飲み屋なので、お客はいない。右奥のテーブルに、リンネが座っていた。その脇に、サウロウが座り、手招きする。
「さぁ、さぁ、ここに座ってくれ」
リンネもチラリとこちらを見て、会釈をしてくれる。でも、眼が冷たいよな。
軽い食事をしながら、昨日の出来事について、もう一度、話をする。
「昨日の出来事だが、この辺りに、カミヒョウトが現れるなんて珍しい。そもそも、昨日の出現の仕方はおかしい。カミヒョウトに、あんな能力がある訳がない。何か他の力が働いていると考えるのが自然だ」
「正直、ヒヤリとした。シオが出てきてくれて、潮目が変わったから、何とか撃退できたが。あんな風に、前触れもなくカミヒョウトが現れてしまうと、戦略自体を練り直す必要がある。この街の近くは安全だと思っていたが、その前提も考え直さなくてはならない」
そう、サウロウは力説する。
「で、だ。俺たちのチームは、結束力もあるし、そんじょそこらのチームより、遥かに強い。それは自信がある。みんなバランスよく、自分の立ち位置が分かっている。何より、ここにいるリンネは一騎当千。わかるだろう?」
リンネは軽く手を横に振り、違う違うという仕草をする。でも、俺は軽くうなずく。
「だが、昨日のような出来事を見てしまうと、今のチームごとに対応する時期ではなくなったと感じたんだ。もっと大きな塊となって、対応していくべきなんじゃないかと」
冷静な男だという評判のサウロウにしては、随分、踏み込んだ言いぶりだ。こういった一面がある男は信用できると思うが。
「まず、その一歩として、君と一緒に行動したいと思う。君の評判は十分知っている。そのユニークなスキル故の出来事の2,3は聞いている。何より、昨日、俺たちも経験した。すぐに答えを出してくれとは言わない。最初は、気の向いた時に付いてきてくれるだけでもいい。きっと、君は俺たちのチームに必要だと思うんだ」
ちょっと、よく理解できなかった。俺の評判も知っている。当然、スキルも知っている。別に自分たちのレベルを上げたいから一緒になりたいという訳ではないらしい。では、なぜ、俺を必要としているのか。
よっぽど、豆鉄砲を食らったような顔をしていたのか、黙って聞いていたリンネが後を継いで話した。
「最初に聞いたときは、私もビックリした。今のチームで、とても良く纏まっていたから。でも、サウロウの判断は間違いないはず。そこは信用している。」
「私たちのチームで、あなたがどういう役回りをするのか想像できない。でも、あなたという″ひと″は信用できると感じている。一緒に来てほしい。ただ、邪魔はしないで」
二人は真剣らしい。嫌だ、と断る雰囲気でもない。
でも、じゃあ、よろしくと言うほど、自分のスキルを知らない訳ではない。
「俺のことを、キチンと考えたうえで誘ってくれているのは判った。でも、その申し出を受けるかどうかは、もう少し時間が欲しい」
サウロウが右手を出してきたので、こちらも右手を出す。ガッシリと手を握り合う。
「じゃあ、しっかり考えてくれ。俺は真剣だ」
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思いがけない申し出に、あたふたしたものの、食事をとりながら、サウロウの考えていることを聞いた。彼は、個々の戦いのことだけを考えているのではなく、その先まで考えているようだ。その一員として、俺のことを誘ってくれている。
嬉しくない訳がない。ただ、一緒にいることが彼らのためになるのか、自信がない。自分の「悪運」スキルが、彼らの足を引っ張ることになりはしないか。
サウロウの話を聞きながら軽い食事をとり終え、俺を見送るために、店の外に出る。サウロウとリンネは武器はテーブルに置いてくる。
人がいっぱい出ているなと思ったら、ちょうど、大街主の一行が、列をなして通りを進んでいるところだった。
ここでは、いくつかの街が集まって、大街をなす。さらに大街が集まって、国をなしている。国を治めている国王がおり、それを補佐する大街主がいる。また、街ごとには街守主がいて、細々したことを含めて管理している。
その大街主が、このセイダンの街にやってきていた。あまり自分の街から出ることはないと聞いていたが、珍しい。三十名程度の列だろうか。戦闘にも耐えれそうな軽装備ではあるものの、戦いのために訪れたわけでもなさそうだ。みな馬に乗り、機動性を確保している。
5~6名の先遣がいて、その後に、大街主がゆったりと馬に乗っているのを見る。がっしりとした体格をしており、文民系というよりは武闘系のような印象を受ける。背中に大きな鉈を背負っており、力に自信があるようだ。
そういえば、大街主の息子ズリュードが、問題児という評判を聞いたことがある。取り巻きが良くないのか、無茶をするらしい。それでも大街主にとっては、可愛い息子なので甘々に接するので、ますます図に乗っている。
って、これ、ダメな典型じゃないか。
その大街主が、このセイダンの街にやってきていた。あまり自分の街から出ることはないと聞いていたが、珍しい。三十名程度の列だろうか。戦闘にも耐えれそうな軽装備ではあるものの、戦いのために訪れたわけでもなさそうだ。みな馬に乗り、機動性を確保している。
5~6名の先遣がいて、その後に、大街主がゆったりと馬に乗っているのを見る。がっしりとした体格をしており、文民系というよりは武闘系のような印象を受ける。背中に大きな鉈を背負っており、力に自信があるようだ。
そういえば、大街主の息子ズリュードが、問題児という評判を聞いたことがある。取り巻きが良くないのか、無茶をするらしい。それでも大街主にとっては、可愛い息子なので甘々に接するので、ますます図に乗っている。
って、これ、ダメな典型じゃないか。