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外伝蛇足


「森往司くん、君の日本国籍を削除させてもらいます」


 警察署の立派な部屋に案内され、迎えてくれたのは東大智だった。

 そして彼はらしくもなく、要点から切り込まれた。


 かもしれない、考えてほしい、どう思うかなどという事ではない。

 削除させてもらいます、だ。


 さすがにどうしたものかと考え込んでしまう。


「司くん、日本国は外交官として受け入れる準備があります。何か困ったことがあれば何でもおっしゃってください。日本は、できる限りの協力をさせていただきます」


 司は笑みを浮かべながら、情報が出し終わるまで発言は控えた。

 今のところ、どうやら何かの国の外交官になってしまったらしい。

 その何かの国は、お給金は出るのか?


 東は、リラックスしながらソファーに寄りかかった。

「私が、パイプ役として選ばれました。大出世ですよ」

 まるで友人に話しかけるかのように気軽な感じで話しかけてきた。


「こんな面白い役を、何故かみんな怖がって引き受けないんですよ。理解に苦しむな、確かに一つ間違えれば大惨事になりかねない。だけど、そんなことにはならないでしょ?」

「は、はぁ」

 よくわからないのだ、あいまいな笑みを浮かべるしかない。


 そんなことを思っていると、扉が開かれた。

 ぞろぞろと入ってくる彼らを見て、司は思わず声を上げて笑ってしまった。


 東さんも、我慢の限界というように口を押え笑っている。


「えっと、あなたたちの国の一員として迎え入れてくれる、ということですか?」

 みんなあつまってくると、小さな手を差し出して手の甲に触れてきた。


 冷たく、表情もわからないが、好意的に思ってくれているようだ。


 宇宙人のグレイ。

6人がソファーに座っている司を取り囲んだ。


「ファーストコンタクト、ああ、光栄だ」

 東は恍惚とした表情でその様子を眺めていた。


 司とグレイと並び事務的な話を続けた。

 これは日本だけではなく、アメリカも関わっているらしい。さすがは、世界最強の国家だと感心してしまう。


 とはいえ、慣れた仕事だ。

 ユリナが死んで引退したが、基本的に内政屋だ。こうした事務仕事は望むところでもあった。


 それから、グレイたちと今後のことについてもゆっくりと話をした。

そこで、悠木勉についての話題にも触れる。


 悠木勉は異世界転生した人物だ。

 彼は、交通事故にあい命を落とした。だがその魂は異世界へと飛ばされ、神と名乗るほどの力を得ることができた。


 地球側からすれば、事故死で少年が1人死んだだけのこと。

 だが、異世界転生したことに気が付いた者たちがいた。


 そう、それがグレイたちだ。

 異次元移動を感知したグレイたちは、探査のために魂を追った。

 グレイたちは帰れないまでも、連絡は取り合うことができたらしい。

 だからこそ、情報は得たのでお前たちは別にそこで死んでもいいぞということになったらしく、あの世界のグレイたちは帰るために、あれやこれやとやっていたのだそうだ。

 だからこそ、司たちに対し深い感謝の念があるのだそうだ。


 そして現在、バラバラに切り分けられた悠木勉は、彼ら宇宙人たちが管理している。

 彼は研究され、宇宙戦争で人造人間のマザーとなるらしい。

 何かのはずみで復活し、今度はギャラクシーヒーローとして活躍するのかもしれないと、司は微笑んだ。


 結局その日は警察署に泊まり、夜を明かすことになった。

 ユリナに連絡し帰れないことを伝えると、明日直接こちらに来るよう計画は変更された。

「やれやれ、こっちに来ても仕事が無くならないな」

 さっそく最愛のパートナーは友人たちに連絡をするとメールの返事が返ってきた。スマホを手にして2日、すっかり手足のように使っている


 そんな風に、夜の警察署の休憩所で缶コーヒーを飲んでいると、ガタイのいい男たちが司に向かってやってきた。


「いやぁ、どうも」

 見覚えのある40代の自衛隊の隊長が、少し気まずそうに声を掛けた。


「あ、これはどうも。手足を砕いた方ですよね」

「先日はどうも」

「すごいですね、1年から半年は動けないと思ったんですが」

「いやぁ、宇宙人の超技術、らしいですわ。怪我人がそんなに長くいてもらっては困るそうでねぇ」


 集まった男たちは真剣な表情を浮かべると、びしっと敬礼をした。

 思わず司も、マリグ帝国の敬礼をしてしまう。


「どうか、訓練をつけていただけませんでしょうか!」

「訓練?」

「自分たちは人が殺せませんので!」

 ああ、そりゃそうだ。


「こちらこそ、是非訓練に参加させてください。僕としても、事情を知っている方と訓練できるのは安心できます」

「いやぁ、お手柔らかに頼みますよ」

 彼らといくつか話をして、その日は過ぎて行った。


 次の日、昼頃に警察署から出てくると、大勢の仲間たちが外で待っていた。

「お勤め、ご苦労さん!」

「お勤め言うな」


 坂本の腹に軽く殴りつける。

 坂本や中田、10人の仲間たちがそろっている。

 豊子とアラン達もいる。


 ジョルジュとフィーアたちは危機を脱すると、まだ元の世界へと帰っていった。

 あの世界で二人は姿を消し、どこかで命を落としたのかと心配していたのだが、きっとまた別の冒険を続けていのだ。

 きっと、名を残す英雄となったに違いない。


 魔王グランドール、そしてロラも勉が消えるとともに、崩れて消えてしまった。

 最後に別れの挨拶すらできなかった。

 しかし、それまでに魔王たちを全滅させていた。

ちなみにどちらが多く倒せるかの勝負は、グランドールが一体多く倒して勝利していた。


「うぐぐぐぅ、どうなってんのこの国!!」

 トトトポヤの今日の恰好は、制服小学生、背にはリュックを背負って大きな帽子をかぶっていた。

「どうしたの?」

「物が盗み放題なんだけどぉ!? カバンも! データも! なんでこんなにザルなの!?」

 リングと言えば、盗み。

 不法侵入、略奪、秘密の暴露、リングが通った後は草木一本残らないと有名な話だ。


「困るな、君たちが犯罪を犯すとこちらに問題が起きるんだ。できれば犯罪は犯さない方向でお願いできないかな」

 するとトトトポヤは腹立せながら地団駄を踏んだ。

「あたしたちにも矜持ってのがあんの!! こんなの盗んだって意味ないじゃん! アメリカとイギリスに行ってくる。そこで全部盗んでくる!」

「やめろ!」


 トトトポヤを抱き上げ首を絞めていると、妻がよってきた。

「みてください、わたくしですよね、これ!」

 彼女はおかしそうにスマホを見せてきた。

 そこには、悪役令嬢ユリナがいかつい顔で笑みを浮かべているイラストが表示されていた。


「なんとも、ふふ、おもしろいわね!」

 笑いながら豊子、緑川の元に戻っていく。


「さて、それじゃ買いに行こうか」

 最初はずっと年下だったはずだが、今ではすっかり年上になっているアラン・スノーが声をかかる。


 異世界学園リュミエール! 3回目のようこそ!

 コロナのせいで発売日が年末になってしまっていた。そして、それを今からみんなで買いに行くのだ。


「ツカサ! この後は遊園地というところに行ってみたいわ!」

 ユリナは隣に立つと弾む声で言って来た。

 スマホの地図を見せながら、指でスライドさせていく。

「近くにある海上保安資料館がとても興味深いわ。それに温泉というのも入ってみたい」

「うん。それと、学校にも通えるようになったよ」

「本当に? 学校の制服が着れるのね! ふふ、これから楽しみだわ!」


 15歳の老夫婦は友人たちに囲まれ、明日何をして遊ぶか尽きることなく話し続けた。




うう、今年中に何とか終われた、よかったぁ。

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