⑫
彼は、静かに降り立った。
「幸運もここまでくると、不愉快だ。都合のいい設定ばかり詰め込んで、恥ずかしくないの?」
自分でもそう思う。
司は苦笑した。
「さすがの僕も、幸運までは操れないからね。どうしてもここで殺しておくべきだ!!」
全身を包む、光の鎧を身にまとった。
そして日本刀を掲げる。
「正真正銘! 本気だ!!」
光の閃光が襲い掛かってきた。
司は慌てることもなく身をかわし、剣を振るった。
「・・・え?」
彼の腕が、地面に転がっていた。
「うぐぐぐぐぐぅ!!!」
彼は苦痛の声を上げながら腕を拾うと、プラモデルの腕をくっつける様に腕をはめ込む。
「何をした!」
司は彼に向かって、ゆっくりと進んでいく。
「クソ! 消し飛べ!!」
炎の壁が司を襲う。
力の差は歴然、司は抗うことなく肉が焼けていく。
しかし消滅までには至らなかった。
そう、それで十分。
「くあ!?」
手首がないことに驚き、転がる自分の手を探し、拾って張り合付けた。
「いつの間に!」
体がナノマシン、そして元来の回復魔法を使うことで肉体は急速に回復していく。
司は駆け寄っていく。
「舐めるな!」
黄金の騎士は再生した手で日本刀を振るった。
司はすぐさま剣の刀身を掴み、腰を落とす。
彼の光のような振り、それを紙一重で避けた。
すかされた腕の先には剣があった。
彼の腕は、自分が振るった勢いで飛ばされてしまう。
右側に死角ができ、司はそのまま彼の首を切り落とした。
地面に腕と首が転がり、体は力なく大地に倒れた。
静まり返る渋谷。
守られていた豊子が近づこうとしたところ、司は手で制し首を振る。
首と死体が、光り輝きながら浮かびあがる。
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
叫びながら、体がくっつく。
「これが正義の光! 愛の奇跡だ!!!」
そう言って体を輝かせながら突撃してきた。
司と彼は、すれ違う。
今度は、無数に切りさかれた彼が地面に落ちていく。
「うおおおおおおおおおおおおお!!! この程度で!!」
やはり叫びながら復活した。
再び突撃しようとしたが、司が腰を落とし刀身を掴み身構える姿に踏みとどまる。
ならばと、魔法を放とうと腕を伸ばす。
しかし司は間髪入れず剣を振るい、彼の両腕は切り落とされた。
「正義は負けない! 悪がはびこることなどない!」
光輝き再び体がくっつき始めた。
司は、そう叫んでいる間に再び切り刻んだ。
そのようなことが、しばらく続いた。
切り刻む。
叫んで復活。
切り刻む。
「いい加減にしろ!!!」
体を爆発させ、司を突き放した。
「いい加減にしろ! 何なんだよお前は!!」
駄々っ子のように光の玉を出現させては投げつけてくる。
「正義の奇跡を起こしたんだぞ! 次はお前が負ける番だろ!! いい加減にしろ!」
司は無言のまま、光の玉を避けながら近づいていく。
彼は、無意識のうちに一歩後ろに下がった。
「何か言えよ!!」
衝撃波を、剣を振るい打ち消した。
段々慣れてきた。
強力な魔法が使えるが、それを戦闘で使えるよう特別な訓練はしていない。
威力を高めるために力をため、相手に向かって手を伸ばす。
そんな無駄の多い行動を取っていれば、避けるのも容易だ。
そうじゃない、手早く撃つ場合ならば、こちらも対応できる程度の威力だ。
「こっち来るな!」
再び魔法に頼ろうとしたところを、司は袈裟切りにする。
やはり輝きながら再生してしまう。
脳も心臓も、あらゆる箇所を切り刻んだが、まさしく不死身。
こちらが対応できたように、あちらも対応されては困る。
こちらは車、あちらは新幹線なのだ。
焦りを隠しながら、何度目かの腕を切り捨てた時だった。
その腕は、再び彼の元に戻ることはなかった。
「や、やぁ、緑川さん。調子どう?」
切り裂かれた腕を掴み、彼女はにやっとした。
「ええ、悪くないわ」
腕を掴み、すたこらさっさとと逃げ出した。
10人の仲間のうち、最後の一人。
オタクで異世界転生を誰よりも喜び、残酷な世界で精神を病んでこの世界に帰りたがっていた人だ。
昔のように眼鏡におさげ姿の女子高生は、腕を掴んだまま割れ目を飛び越えて行った。
「ま、待て! 腕を置いて行け!」
司はもう一本の腕も切り捨てた。
そして、その腕を掴んだ。
「クソ! 戻せよ!」
司は自分の頭を抱えた。
ああ、なるほど、こうすればいいのか。
蹴りを放ってきたので、軸足の足首を切り裂いた。
すると、どこに隠れていたのか、坂本が素早く足首を持っていく。
「おまえっ、待てよ!」
倒れ込む前に、太ももを切り裂くと、今度は四つ足の中田が飛びつき、素早く離脱していく。
「待て、ちょっと待ってくれ!」
次々と仲間たちが現れては、体を持っていく。
体を切り刻むと、リングたちが素早く肉片を持っていく。
「少し疑問があるんだ」
司は、首だけになった彼にはじめて声を掛けた。
「頭を左右に割った場合、右くんと左くんで意識が別れるのかな? そうなった場合、復活するとき右くんと左くんでケンカになったりしないのか?」
「お、おい、冗談だろ・・・」
「もちろん冗談だ」
首を左右だけではなく、更に上下、縦にも切りバラバラにしておいた。




