⑪
ゴイル、そして豊子たちは地面に倒れ、血を流していた。
司は朦朧とする意識の中、アスファルトの山を登っていた。
似合わぬ椅子に座り、こちらを見続けていた。
彼女の顔が、恐怖で歪む。
「・・・?」
知らぬうちに、アスファルトに倒れ込んでいた。
足から、激しく血が流れ落ちていく。
次に左手が消し飛んでいた。
そして、腹に風穴があく。
「アメリカ軍さ」
彼は、静かにそう伝えてきた。
「たいしたものさ、まず最初に同盟を組もうと言って来たよ。戦う素振りを見せながら、真っ先にコンタクトしてきたのさ。さすがは、最強の国家だよ」
司の頭を掴み持ち上げた。
全身から血が、どんどん抜けていく。
ユリナは震えながら、椅子から降り跪いた。
そして、頭がめり込むほどに頭を下げた。
「お願いします。彼を、殺さないで」
頭が擦り切れるほどに押し付け、懇願した。
「なんでも言うことを聞きます。ですから彼は、殺さないで。わたくしにとって、命よりも大切な人なのです」
「無様だね。だけど、実に心を打たれるよ」
弾むような声に激しい怒りが湧き上がるが、どうしようもない。
指一本動かせない。
やはり・・・
何も考えず、突き進めばいいというものでは・・・
ない・・・・
妻を土下座させてしまった。
妻を泣かせてしまった。
妻を傷つけてしまった。
「だけど駄目だ。僕は彼の代わりになる。わかるだろ? もうこいつは必要ないんだ」
銃弾が、司の頭を貫いた。
死んだ。
死んだはずだ。
音も光もない。
暗闇の中で、何故か意識があった。
「幽霊か、何か、か?」
どういう訳か、ゆっくりと体中が熱くなっていく。
体の構造が、変わっていくのが分かる。
悲鳴のような泣き声が、ゆっくりと耳に届いてきた。
スイカのように割れたはずの頭を抱きかかえ、涙を流していた。
ゆっくりと、彼女の頭を撫でた。
確か、無くなったはずの左手で。
「さて、どういうことだ?」
彼は、ユリナを蹴飛ばし、力を放とうとした。
司はそれを避け、アスファルトの山を転げ落ちる。
そして、地面に転がっていた剣を拾う。
「人間は頭が弾けたら死ぬんだ。知ってるかい?」
司は、おもむろにステータス画面を開いた。
どれも見慣れた能力ばかりだったが一つだけ追加されていた。
『ナノマシンによる自動回復。肉体が消滅しない限り、どれほどの破損を受けても一ヵ月ほどで再生可能』
「先ほどとだいぶ違うね」
力を放つ彼に、司は剣を振るって切り裂いた。
「力が戻ったのかい?」
彼は宙に浮き、風のように突き進んできた。
「パワー比べしようか!」
差し出した手から、周囲が暗くなるほどの閃光を放つ炎を出してきた。
司は、慌ててそれを避ける。
地面が一瞬にしてマグマのように変わる。
「アラン! しっかりしろ! 彼女を遠くに!」
司の能力、味方を鼓舞し傷を癒す能力を発動させ目を覚まさせる。
「ゴイル! お前はユリナを守れ!」
ドワーフ製の優れた剣を、ぐるんと回す。
「奴は、僕一人で十分だ」




