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116/119


 ゴイル、そして豊子たちは地面に倒れ、血を流していた。

 司は朦朧とする意識の中、アスファルトの山を登っていた。


 似合わぬ椅子に座り、こちらを見続けていた。


 彼女の顔が、恐怖で歪む。


「・・・?」


 知らぬうちに、アスファルトに倒れ込んでいた。

 足から、激しく血が流れ落ちていく。


 次に左手が消し飛んでいた。

 そして、腹に風穴があく。


「アメリカ軍さ」


 彼は、静かにそう伝えてきた。


「たいしたものさ、まず最初に同盟を組もうと言って来たよ。戦う素振りを見せながら、真っ先にコンタクトしてきたのさ。さすがは、最強の国家だよ」


 司の頭を掴み持ち上げた。

 全身から血が、どんどん抜けていく。


 ユリナは震えながら、椅子から降り跪いた。

 そして、頭がめり込むほどに頭を下げた。


「お願いします。彼を、殺さないで」


 頭が擦り切れるほどに押し付け、懇願した。


「なんでも言うことを聞きます。ですから彼は、殺さないで。わたくしにとって、命よりも大切な人なのです」


「無様だね。だけど、実に心を打たれるよ」


 弾むような声に激しい怒りが湧き上がるが、どうしようもない。

 指一本動かせない。


 やはり・・・

何も考えず、突き進めばいいというものでは・・・

ない・・・・


 妻を土下座させてしまった。

 妻を泣かせてしまった。

 妻を傷つけてしまった。


「だけど駄目だ。僕は彼の代わりになる。わかるだろ? もうこいつは必要ないんだ」


 銃弾が、司の頭を貫いた。


 死んだ。

 死んだはずだ。

 音も光もない。

 暗闇の中で、何故か意識があった。


「幽霊か、何か、か?」


 どういう訳か、ゆっくりと体中が熱くなっていく。

 体の構造が、変わっていくのが分かる。


 悲鳴のような泣き声が、ゆっくりと耳に届いてきた。

 スイカのように割れたはずの頭を抱きかかえ、涙を流していた。


 ゆっくりと、彼女の頭を撫でた。

 確か、無くなったはずの左手で。


「さて、どういうことだ?」


 彼は、ユリナを蹴飛ばし、力を放とうとした。

 司はそれを避け、アスファルトの山を転げ落ちる。

 そして、地面に転がっていた剣を拾う。


「人間は頭が弾けたら死ぬんだ。知ってるかい?」


 司は、おもむろにステータス画面を開いた。


 どれも見慣れた能力ばかりだったが一つだけ追加されていた。

『ナノマシンによる自動回復。肉体が消滅しない限り、どれほどの破損を受けても一ヵ月ほどで再生可能』


「先ほどとだいぶ違うね」


 力を放つ彼に、司は剣を振るって切り裂いた。


「力が戻ったのかい?」


 彼は宙に浮き、風のように突き進んできた。


「パワー比べしようか!」


 差し出した手から、周囲が暗くなるほどの閃光を放つ炎を出してきた。

 司は、慌ててそれを避ける。


 地面が一瞬にしてマグマのように変わる。


「アラン! しっかりしろ! 彼女を遠くに!」


司の能力、味方を鼓舞し傷を癒す能力を発動させ目を覚まさせる。

「ゴイル! お前はユリナを守れ!」


 ドワーフ製の優れた剣を、ぐるんと回す。

「奴は、僕一人で十分だ」




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